百器徒然袋―雨 (講談社ノベルス)/京極 夏彦
¥1,313
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勝手に採点 ☆☆☆☆


ご存じ迷探偵・榎木津と古書店主にして憑き物落しの京極堂
を中心とした「薔薇十字探偵社」。


今度の事件は名家に奉公し、乱暴された姪の復讐を図る主人
公が、いつの間にかその仲間入りをして、別の事件にも首を
突っ込んでいく中編集。


ひとつの物語がそれほど長くなく、ほど良い長さで、かつ、
京極堂の薀蓄もそれほどではないので、初心者にもお奨め。


勧善懲悪的なストーリーで榎木津の傍若無人な活躍も胸が
すくので分かりやすくスッキリ。


いつもの超厚小説ではなく、ぜひともこのシリーズ化を
お願いしたいところ。

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「狂骨の夢」

テーマ:


著者: 京極 夏彦
タイトル: 文庫版 狂骨の夢

勝手に採点 ☆☆

人気シリーズ第3弾!

かつて死んだはずの夫が訪ねてくる・・・。
殺しても殺してもなおもやってくる夫。

そこに元精神科医と不良牧師がからみ事件が複雑に・・・。
釣堀屋伊佐間、文士関口、刑事木場、探偵榎木津が難問に挑む。

そして京極道は憑き物を落とせるのか!?

二人の朱美という謎があまりに平凡すぎて驚くに値しない。
自分の記憶を失ってしまう設定も都合が良すぎる感。

元精神科医と牧師も物語に不可欠な人物であるようには思えない。

そして何より決定的な違和感は、南朝の子孫云々という蘊蓄と面妖で
怪しげな宗教の存在。

いつもなら事件の数々が複雑でもそれぞれに意味があり、京極堂に
よって解き明かされる驚きがあるのだが、今回はその驚きに欠け、
蘊蓄もこじつけ気味。

ひとつひとつの謎解きが単独で終わってしまって繋がっていかない。

この内容でこの長さはちょっとツライ。

それでも救いは、レギュラー陣の掛け合い。毎度ながら関口には
親近感を覚え思わず応援したくなる。

それでも続編を読みたくなるのがこのシリーズの魅力。
ちょうど本編の主人公たちが骨に魅せられるように・・・。

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著者: 京極 夏彦
タイトル: 豆腐小僧双六道中ふりだし

勝手に採点 ☆☆

江戸時代の妖怪「豆腐小僧」が様々な妖怪たちとの出会いを経て成長
していく自分探しの旅を描く異色作

まず驚かされるのが本の形。スクエアに近く分厚いため、ちっとした
箱のようなユニークさ。

そして、それに負ていないのが主人公の「豆腐小僧」
キャラや容姿が脳天気で微笑ましく憎めない。

すぐに忘れる鳥頭のくせに以外と鋭いところもある。
よこしまな考えがない天真爛漫、無垢な性格に敵はいない。

著者の妖怪に関する造詣の深さには改めて驚嘆させられるが、
いつものような重苦しさとは無縁のおふざけ半分の語り口、
人間くさい妖怪たちに肩肘を張らずに気楽に楽しめる。

語り手は現代、舞台を幕末に据え、時にツッコミやジョークを
交えながら、軽妙なタッチでミョーに明るい展開。

宇宙人やエステなど説明に使う喩えが今風で面食らう場面も多々
あるが、ユーモアたっぷりでそこはご愛敬。

これまでの京極先品にはないコミカルな作風に驚かされる。

ただし、前半部分の新鮮さとを通り越してしまうと、後半に訪れる
狐軍団vs狸軍団の争いあたりから、ページをめくるペースが鈍って
しまう。

挿し絵や画像がないので、妖怪の容姿や密談の様子が掴めず、
登場人物の多さから誰が話してるのか理解できなくなる。

それと妖怪が語る出自などの蘊蓄のオンパレードにバテ気味に。
終盤はまだこんなにページが残ってるの?と思いたくなる。

唯一納得できた蘊蓄が「幽霊から個性をなくしたものが妖怪」とのこと。
確かにお岩さんには強烈な個性・名前があり、河童や一つ目小僧には
太郎とか固有の名前がない相対的概念。

しかし、それだけ知るにはちっと長すぎる分量である。
マンガにした方が絶対おもしろい。

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著者: 京極 夏彦
タイトル: 百鬼夜行 陰

勝手に採点 ☆☆☆

ご存じ「京極堂」シリーズのサイドストーリー集。
本編では触れられなかった加害者や被害者など関係者の背景に
スポットを当てた幻影的な世界。

妖怪になぞられた彼らの特異な性癖、嗜好に違和感を覚えつつ、
不快と背徳の臭い漂う文体に次第に引き込まれて行く。

最初はリアリティーの欠如と説明・表現が難解であるため、取っつき
にくい感があったが、読み進めるうちにそのリズムが掴め、人物たち
に入り込めるとようやく馴染んでくる。

頭で理解しようとせず、感覚・センス・雰囲気に任せた方が疲れず、
楽しめるような気がする。この点が普通のミステリーとは違う。

シリーズを読破されている方なら、「ああ、あの人のことね」とピンと
来るはず。それぞれの編でポイントになっていた人たちが多いので、
説明は不用だろう。

逆の言い方をすれば、読んでいないと魅力は半減してしまうに違
いない。京極作品は、すべて木の枝葉の如く巧妙に繋がっている
ケースが多いので、最初から順に読了した後の服用がお薦め。

とは言っても、まず妖怪紹介があり、次にその妖怪に絡めた本編に突入
するあたりは、「巷説百物語」と同様で、テンポのいい怪談話としても
楽しめるかも知れない。

最も印象深い話しは「川赤子」。
これはシリーズ中最も親しみを感じる作家関口を主人公としたもので、
通常語られていない、妻とのやり取りがさりげなく描かれている。

特に怖い話しではないが、関口の妻への愛情が伺え、ちょっとほのぼ
のとした気持ちにさせる。

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「魍魎の匣」

テーマ:


著者: 京極 夏彦
タイトル: 魍魎の匣―文庫版

勝手に採点 ☆☆☆

人気の京極堂シリーズ第二弾!
魍魎に魅入られた空間恐怖症の犯人が引き起こす惨劇。
匣を祀る奇怪な宗教団体、連続少女バラバラ殺人事件、
天才科学者美馬坂幸四郎の正体とは?

鍵を握る元女優に淡い恋心を抱く刑事木場。ご存じ探偵
榎木津、作家関口も大活躍。
京極堂は難敵相手に憑物を落とせるのか!?

最近のものは、キャラクターの性格が定着し、研ぎ澄まさ
れ、単独行動が多くなってきてるだけに、主人公達が結末
以外でも結構絡んでいるので掛け合いが楽しめる。

設定としては若干「絡新婦の理」に似たところもあって、
それほど新鮮味は感じなかった。

また、研究所や研究内容が非現実的過ぎてあまり馴染め
ないこと、患者が消えるトリックが陳腐なこと、美馬坂と
陽子の関係が短絡的すぎということで満足度はいま一歩。

ただ、隙間を埋めずにいられない衝動はかなり奇抜。
箱にしまって大事に取っておきたいということはあるけど。

場面場面で織り込まれるこの妄想に取りつかれた人間の独白
がこの物語を一層幻想的に仕上げていて効果的。

それと宗教はそれが布教のため組織化されることで、本来の
宗旨を失って、法人化、営利化していくものだなと感じざる
を得ない。

「犯罪は、社会的条件と環境条件と、そして通り物みたいな
狂おしい瞬間の心の振幅で成立するんだよ。」

という京極堂の言葉が含蓄深い。

「絡新婦の理」

テーマ:


著者: 京極 夏彦
タイトル: 文庫版 絡新婦の理

勝手に採点 ☆☆☆☆

人気の京極堂シリーズ第5弾!
房総のとある女子校を舞台に繰り広げられる連続殺人劇。

悪魔・魔女崇拝に溺れる女子中学生、女性連続目潰し殺人鬼、名門
富豪・織作家に秘められた禁断の過去、それらが複雑に絡み合い、
八方に張り巡らされた蜘蛛の巣に捕らわれていく・・・・。

この悲劇は悪魔の呪いか?謎の解明に京極堂が立ち上がる!

このシリーズを読むにあたって最も失敗した点は、順番どおり
進めなかった点。

物語が微妙に重なるし、登場人物も洗練されていくので、ぜひ
シリーズ順に読むべき!

内容的にはシリーズ中、最もエロティック&ショッキング!
また、次作「塗仏の宴」に比べると入りやすい気がします。

最もこの読みにくさ、複雑怪奇な理屈がたまらないという方々
も多いでしょうが。

ちょっと混乱したのが構成。最後まで行ってから最初に戻って読み
返して、やっとああ、こういうことかと納得。

できれば間を空けて、もう一度読んだ方が良いかなと感じました。

なにせ文庫本としては超分厚くボリューム満点!
一度通読したぐらいではもったいない気が・・・・。

終盤の京極堂の活躍には胸のすく思いがしますが、関口にはもうちょ
っと出て欲しかったかな。まあ、次作で過酷な苦労をするから休養か。

それにしても毎回思うのは複雑なストーリー構成と独特な時代設定、
登場人物の役割・人間像の描き方が見事な点。

映画の封切りも期待大。