象の背中/秋元 康
¥1,575
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勝手に採点 ☆☆☆☆


秋元康が書き下ろした話題作。


不動産会社で部長を勤め、仕事と愛人のために家庭を顧
みない主人公が、ある日突然末期ガンを宣告され、人生
の終わりを意識する。


延命処置を断り、残された時間を自分のやりたいことに
費やす決意を固め、自分探しが始まる・・・。


あまりに自分勝手な生き様は共感出来ない。


また、幼馴染や昔の恋人にはすぐに逢え、愛人の存在も
うやむやになるなど、全体的に安易にうまく収まるとこ
ろも違和感が残る。現実はこれほど甘くない。


短い生涯とはいえ、ここまで好き勝手やれれば本望だろう。


秋元氏はやはり多彩な才能に恵まれている。


本作も安易な結末に陥る穴はあるものの、ドラマ化や映画
化など話題にはこと欠かず、原作者としての名声も欲しい
まま。


ただ惜しむらくは、器用貧乏的な印象が拭えないこと。


こんな懸念を吹き飛ばすためにも、次回作は渾身の感動作
を期待したい。

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夜明けの街で/東野 圭吾
¥1,680
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勝手に採点 ☆☆☆☆


中年に差し掛かるサラリーマン渡部が陥る社内不倫。


派遣社員・仲西秋葉との危険な恋愛に、彼はやがて妻と幼い
娘を捨てる覚悟を決めていく・・・。


しかし、秋葉の過去には隠された秘密が・・・。


渡辺淳一ばりのドロドロ不倫小説かと思いきや、そこは
さすが東野。不倫はあくまで刺身のつま。


それでも前半部分は、恋愛小説さながらのリアリティで、
仕事と生活に追われていた渡部が急速に恋愛に目覚めて
いく過程をスピーディーに描く。


男性社員と打ち解ける秋葉に嫉妬する場面や、劇的なスキー
場での再会など男心をくすぐるつくり。


一方、ネタのキモとなる過去の事件だが、ここはどうも不
自然さが鼻をつく。自殺を他殺と見誤る捜査もいかがなものか。


また、強い意思を心に秘めた行動とは言え、あまりに身勝手な
行動ゆえ、心情的に秋葉に同情できるところが少ないことも
納得感が乏しくなっている要因。


東野作品は、「ホントにそんなことまでするのか!?」という
疑問が生まれない作品ほど秀逸。


そういう意味で残念ながら完成度に難点が残る。


とはいってもそれは東野作品のなかの位置付け。
娯楽作品としては十二分に楽しめるデキ。

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鬼平犯科帳〈5〉 (文春文庫)/池波 正太郎
¥540
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勝手に採点 ☆☆☆☆


このシリーズでは、宿敵・網切の甚五郎を追い詰め成敗する
平蔵の活躍が主。


自身も何度も暗殺されかけ、身内にまで危害を及ぼそうとし、
さらには部下の佐々木を失わせしめた悪党に対する平蔵の
報復はまさに鬼の名に相応しい。


手足を切って嬲り殺しにするという壮絶なやり口は、いつも
の温厚の彼とは全くの別人。


また、誤認逮捕という失態を演じた部下と監督責任を感じた
自身に対する対応は厳しい。自らその尻拭いを行い、堂々と
過ちを認める姿は上司の鏡。


そんな彼にはこの回でも盗人や剣客仲間といった味方・助っ人
が集まる。


こうして構築された人間関係に助け助けられ、平蔵の活躍は
続いていく・・・。

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使命と魂のリミット/東野 圭吾
¥1,680
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勝手に採点 ☆☆☆☆☆


心臓の動脈瘤で死去した父親の影響で心臓外科医
を目指す研修医氷室夕紀。


彼女の指導医は父親のオペの執刀医だった西園教授。
しかも彼は近々彼女の新しい父親となることが決まった。


父親の死の原因に疑問を抱く彼女は、彼の真意を探
ろうと思い悩むが・・・。


一方で彼らが勤務する帝都大学病院には、医療ミスを
原因に病院を破壊するという脅迫状が発見され、警察
も乗り出し事態は緊迫の度を増していく。


さすがは「東野圭吾」と唸らせるできばえ。


コンスタントにこのレベルの作品を作れるのは彼しか
いないだろう。人気、実力ともさすが。


トリックに頼らないヒューマニズム溢れる人間ドラマ
は読み手を強く引き付け、読後の満足感も申し分ない。


今回はストーリーとしてはドンデン返しのない、到って
規定路線を走り続けたものであるが、ラスト数ページの
教授の告白は涙なくしては読めない。


いつもながらではあるが、犯人の犯行動機がイマイチ希薄
である感は否めないものの、終盤での心変わりもあって
よりリアリティーが増す結果となっている。


東野氏の描く心のなかに強い意思を持ってひたむきに生きる
人たち。彼らが主人公である限り彼の作品は輝きを失わないはず。

一瞬の風になれ(全3巻セット)/佐藤 多佳子
¥4,515
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勝手に採点 ☆☆☆☆☆


陸上100M競技に高校生活を賭ける元サッカー部の主人公
と天性のランナーの資質を持つ親友。


彼らの活躍と友情、そして恋を所属する陸上部を舞台
に描くスポ根系爽快青春ドラマ。


入学からの三年間をおおよそ時系列に描写しいるため、
少々飽きてくるものの、試合を重ねるごとに彼らの成長
の痕がうかがえて感動もひとしお。


プロのサッカー選手となった兄に対するコンプレックス
から好きだったサッカーを辞め、新たな挑戦を始める主人公。


並外れた身体能力と熱心な努力を武器に、短距離ランナー
としての才能を開花していく。


運動部に所属していたものなら誰でも理解できる先輩や後輩
、顧問の先生との関係、ハッピーエンドの分かりやすい展開
に好感が持てる。


三部作となっていて読む前は長さも気になるが、読み始めれば
あっという間にラストまでいけること請け合い。


ドラマ化や映画化もされるようなのでそちらも期待したい

「家日和」

テーマ:
家日和/奥田 英朗
¥1,470
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勝手に採点 ☆☆☆☆


主婦や作家、サラリーマンなど、彼らにとっての
マイホームで巻き起こるちょっとした日常を切り
取った短編集。


こういった軽妙でユーモアセンス溢れた文章では
この人の右に出るものはないなという印象。


同世代が主人公とあって、一部を自分に重ねて
読むことが出来るので感情移入もたやすい。


別居中に自分の理想の部屋を作り上げる夫の

行動などは、やってみたい!と思わせる典型。


ネットオークションに嵌って、売っちゃいけない

ものまでに手を出してしまう主婦の心情もつい

自分に重なって理解できる。


作家が主人公の一編は、奥田氏がモチーフに

なっているのだろう。お金持ちも彼らなりの悩み

があるということ。


奥さんに気を使って、書きたいネタをボツにする

という悔しいこともあるらしい。

鬼平犯科帳〈4〉 (文春文庫)/池波 正太郎
¥540
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勝手に採点 ☆☆☆☆


このシリーズでは、平蔵の単独潜行の話が主。


昔馴染みのおもんが新たに彼の密偵となり、その窮地を
単身で救う「血闘」や辻斬りに手を染めた高位の旗本を
闇に葬り去る「夜鷹殺し」。


いずれも密偵を使った単独捜査で悪人を追い詰める。


そのため、返って自らが窮地に追い込まれ、間一髪の
ところで部下達に命を救われる場面も。


豪傑で容赦のない厳しさと、部下や弱者に見せる慈愛の
コントラストが鮮やかで、誰もがその人柄に心惹かれる。


すぐにまた新しいシリーズを読みたくさせる魅力的で
秀逸な作品があることに喜びを覚える。

「被害者は誰?」

テーマ:
被害者は誰? (講談社文庫)/貫井 徳郎
¥650
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勝手に採点 ☆☆


貫井氏にしては珍しい短編集。


警視庁捜査一課の桂島刑事が、学生時代の先輩である
ミステリー作家・吉祥院慶彦に依頼する難事件の数々。


明快な推理と横暴極まりない態度で事件を解決に導く
痛快ミステリー。


設定が東野氏の湯川助教授や法月氏の倫太郎ものと
変わるところがなく全く新鮮味に欠ける。


そもそも捜査情報を第三者に公然と漏らしてしまう
のはいかがなものか。


さらにいただけないのは、情緒や感情に迫ってくる
「心」がない作品であるということ。


単に謎ときとトリックに重点を置いたパズルゲーム。

この手の作品は時間つぶしにさえ使いたくない。

玻璃の天/北村 薫
¥1,250
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勝手に採点 ☆☆☆


時代は昭和初期。士族上がりながら祖父は軍隊、父は財界
で成功し名門華族となった花村家の長女・英子。


彼女と彼女に仕える美貌の運転手・別宮を主人公に彼らの
周辺で起こる事件に立ち向かう。


今までにない時代設定、シチュエーションである意味新鮮。

箱入りのお嬢様ながら、別宮の強力な助力と文学的知識、
推理力、行動力でかなりの活躍を見せる英子。


その鋭さはさながら女版の探偵・榎木津といったところか。


当時の上流階級の暮らしぶり中心に描かれているため、親
しみは持てないものの、昭和ロマンに浸りたい方にはお勧め。


短編とはいわず、長編でよりドラマティックな展開を望みたい。

6時間後に君は死ぬ/高野 和明
¥1,680
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勝手に採点 ☆☆☆


対象者における将来のあり得ない事態をイメージで見る
事が出来る大学院生・山葉圭一。


心理学を専攻する彼が予言する未来を人々は逃れること
が出来るのか。


どうも設定が出来すぎていて素直に入りきれない。


特に「3時間後に君は死ぬ」では、あまりにうまく行き過
ぎて未来まで変えることが出来る。


彼のイメージの見え方がコロコロ変わるので、彼の能力
自体が小説のなかで都合よく利用されている感じ。


それでも、冒頭のストーリーである「6時間後に君は死ぬ」
は、ミステリーとしてのポイントが押さえられており
なかなかの出来栄えだが。


やはり氏には短編ではなく長編で力を生かして欲しいもの。