まほろ駅前多田便利軒/三浦 しをん
¥1,680
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勝手に採点 ☆☆☆☆


まほろ市で便利屋を営む多田とひょんなことから
居候する事になった高校時代のクラスメート行天。


気の合わないコンビのささやかな活躍と友情を描く。


アイデアと巧みな文章次第で面白い作品を作れる典型。


殺人事件やびっくりするような事件なしでここまで
楽しませる筆者の力量はかなりのもの。


主人公の二人もお互いバツイチで全くさえないものの、
便利屋という商売を通じて、人と出会い交流し幸せの
意味を見出していく。とてもささやかだが。


挿絵の二人はレディースコミックに登場するような
かなりの美形だが作中は全く印象が異なる。


年齢設定は分かりにくく微妙。20代後半か。


特に好感の持てる登場人物は娼婦のルルたち。

身体は売っても心までは売らない典型。


チワワもさぞかし幸せに過ごしていることだろう。

それにしてもタバコを吸うシーンが多い。


ドラマ化すれば真っ先にJTがスポンサーに名乗りを
あげるだろう。ただし、肺ガンにはご用心。

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たそがれ清兵衛/藤沢 周平
¥580
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勝手に採点 ☆☆☆☆


映画化もされたメジャー作品。


実直な性格で質素な生活を送る下級武士たち。


共通するのは武芸に秀で、ヒト癖ある性格や容姿。


彼らに下される過酷な藩命や降りかかる災難にひた
むきに対処する生き様を描く時代小説。


「用心棒日月抄」の主人公が、くるくる別人に変わり
短編にまとめられた感じ。


映画化されたとあって長編かと思いきや「たそがれ清兵衛」
を始めすべて短編。


病身の妻を助けるため、早々と下城し帰宅すると家事や
内職に勤しむため、昼行灯の清兵衛。


夕方から元気を取り戻す彼のあだ名が「たそがれ清兵衛」

しかし、その実彼は免許皆伝の腕を持つ剣の達人。


そんな彼が藩のお家騒動に巻き込まれ、刺客として抜擢される。
見事藩命をやり遂げ、褒美に妻を名医に見せ、湯治場へ連れて
やることができたというお話。


どうやら映画化された話は「祝い人(ほいと・物乞い)助八」
という話の方らしい。


そのほか、「うらなり」や「ごますり」、「だんまり」など
能あるタカは何とやらを地で行く主人公たち。


それにしても、経済的、地位的に恵まれない武士の生き様を描
かせたら右に出る物はないと思わせる筆者。


さほど多くない文量に凝縮された秀作たち。


彼らの哀愁漂うそこはかとない奥ゆかしさが暖かく胸に伝わる。

これからも、藤沢氏の作品を手に取るのがとても楽しみ。

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きつねのはなし/森見 登美彦
¥1,470
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勝手に採点 ☆☆☆


幻想的な雰囲気漂うファンタジックホラー集。

今が旬の森見作品初体験記念。


ジャンルは全く異なるものの、伊坂幸太郎に設定や文体が似て
いる気も。どこがどうと問われるとすっと出で来ないが。


主人公の学生が体験する不思議な憑き物にまつわる話が中心なの
だが、原因と結果は明確でないため読後のスカッと感は乏しい。


だからどうなのよ~、といった感想が出がち。


連作的な作りすべての物語が断片的に繋がっているのだが、
特に深い脈絡に欠ける。


特に最後の謎の水生生物の話は不可解&不発。


最後にオーッと盛り上がったかと思いきや突然?と終わる。

目くらまし的作風は感心しない。


言いたい事、描きたい事をきちんと読者に伝えて欲しい。

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佐々木 譲
警察庁から来た男

勝手に採点 ☆☆☆


北海道警察本部に対して警察庁から異例とも
言うべき特別監査が実施される。


監察の指揮を取るのは若きキャリア・藤川。


二件の不可解な事件から、道警内部に巣食う不正を
追求して行くがなかなか接点が見当たらない。


そこに前回も活躍した佐伯が現場で、津久井が藤川を
補佐する形で絡み、道警と暴力団との癒着を暴いていく。


前回同様あまりにスピーディーに問題が解決して様に
違和感を覚える。そこまで早く出来事が主人公に有利
なようにスムースに動いてしまうものか。


また、裏金や旅行、再就職の斡旋など、暴力団との癒着
があれば、当然の如く警務や内部通報により、上層部に
伝わるはずだが、その気配もなかったよう。


それが野球チームつながりで芋づる式に簡単に暴露する
あたりが薄っぺらい印象がぬぐえない。


事がこうも簡単に進むなら、なぜ今まで露見しなかった
のか甚だ疑問。


ただ、展開としては「踊る大捜査線」の如く、キャリア
VSノンキャリの葛藤や警察内部の権力闘争、銃撃戦など
テンポ良くボリュームも満載。


テレビ映画向けにはちょうど良い題材。

ナイチンゲールの沈黙/海堂 尊
¥1,680
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勝手に採点 ☆☆☆


チームバチスタの栄光に続く第二弾。

舞台は東城大学医学部付属病院。


眼球摘出手術を控える男子中学生の父親が何者かに殺害される。
遺体はバラバラに切り刻まれると言う凄惨なもの。


警察庁から地元署に出向中のキャリア加納が最新科学装置を
武器に捜査の指揮を取る。


そこへおなじみ田口医師と厚生労働省の白鳥のコンビが加わり
犯人究明に協力するが・・・。


とにかくキーパーソンが多すぎ。


田口、白鳥を始め、加納や伝説的歌手や看護婦浜田、被害者の
息子など、誰に感情移入しても次々と主体が変わってしまう。


特に今回から新たに登場した人物の描写がなおざりに。

しかも殺人事件は不必要。


看護婦と入院患者の交流や強制入院させられた歌手と病院関係
者とのやり取りは、微笑ましくもドラマティック。


このあたりを大きく膨らませた方がよりリアルで感動的な話に
仕上がるはず。安っぽいミステリーになってしまった分、この
あたりのトピックが台無しに。


また、犯行現場を再現する画像装置や犯人の心理状況を把握す
るために歌を活用するなど、突然非科学的描写も出てきて漫画
的な色彩も強い。


筆者は医師で題材も病院ものなのだから、得意分野から逸脱しない
ことを心がけてほしいもの。

苦難の乗り越え方/江原 啓之
¥1,260
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勝手に採点 ☆☆☆


今やお茶の間のアイドルとなった感のあるスピリチュアル
カウンセラーの江原啓之氏が説く前向きな生き方への処方箋。


「人と比べない」、「運命と宿命の違い」、「一日一日を
大切に生きる」など、簡易な文章で分かりやすいうえ、

言っていることはごもっともな内容。


その辺の評論家が説くよりよっぽど共感できる内容で
テレビで見ている暖かい人柄がそのまま伝わってくる。


しかし、どうも胡散臭いのは死んだらどうなるかを説く霊界
ネタや守護霊、前世の話。


生き方に迷った人や困難に直面した人が解決策を求める気持
ちも理解できるし、そんな話で解決の糸口を見つけられる
のなら良いのだろうが・・・。


信じれるところは吸収し、そうでないところは読み流しても
十分理解できる内容なのでそれで満足。

花まんま/朱川 湊人
¥1,650
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勝手に採点 ☆☆☆


大阪の下町を舞台にしたノスタルジックライト
ホラー中編集。


主人公が異なるものの、時代設定は70年頃で貧しくも
たくましく生きる庶民の子供たちが出会うせつなく
もの悲しげなオバケや不思議な出来事。


特に印象深かったのは、長屋に現れる子供幽霊。


在日朝鮮人の家庭で生まれ育って、幼くして死んでし
まった子供が、主人公である友達の家に遊びに来る。


生きているころは、貸してもらえなかったおもちゃで
楽しげに遊ぶ姿は哀れ。


それでも、屋根の上を跳ね回りながら飛んでいく姿は
ユーモラスで心を和ませる。


また、耳元でささやくだけで人を死に至らしめる「送りん婆」。
怖いながらも、その独特な精神、生き方は興味をそそられる。


弟子としてアシスタントを努めた少女はなぜ後を継がなかったのか。
彼女ならずもそんな不思議で強力な力は身を滅ぼす諸刃の刃になる
からだろう。


これらの独特の作風、アイデアに触れることができ、他の作品を
手に取ることが楽しみな作家に出会えた気分。

スパイ大作戦/室積 光
¥1,680
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スパイ大作戦

勝手に採点 ☆☆


時代は高度成長期。陸軍中野学校でスパイ教育を受けた主人公が
アメリカとソ連の間で活躍するドタバタ小説。


筆者は『都立水商!』『ドスコイ警備保障』以来、すっかり精彩を
欠いている。


登場人物のキャラも薄っぺらで全く中身がないし、ストーリーも
ハチャメチャ。まるでギャグ漫画の世界。


もう彼の小説を読むのは時間の無駄!?

うたう警官/佐々木 譲
¥1,890
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勝手に採点  ☆☆☆


北海道警の婦人警察官が何者かに殺害された。
犯行現場は道警が秘密アジトとして使っていた
マンションの一室。


すぐに交際相手の津久井巡査部長が指名手配され、
なんと射殺命令まで許可される。


そんな不自然な道警上層部の動きに疑問を持った
警部補・佐伯は密かに仲間を集め真犯人の捜査を始める。


題名は秀逸。


酔った警察官が演歌を歌うわけではない。

要は内部告発する警官という意味。


道警上層部が、警察の裏金の実態を内部告発する警察官を
殺人犯と断定し、議会で発言できないよう追い詰めていく。


ただし、どうしても納得できない無理な設定が三つ。


1.内部告発者を犯人に仕立て闇に葬り去ろうとすること
→その程度の状況証拠では公判を維持するのが無理


2.真犯人がキャリア警察官僚であること
→軽犯罪ならまだしも殺人を犯すキャリアがいるか!?


3.あまりに早く現場に侵入した窃盗犯が突き止められること
→いくらベテラン捜査官がいても半日は無理。


これら点はスピード感や臨場感を考慮しても、とても腹に落ちる
ものではない。


それでも、真犯人逮捕のために結成したチーム佐伯が、内部
通報者を抱えながら、上層部からの捜査妨害にもめげず、
悪戦苦闘の上解決していくあたりは水戸黄門の如くスカッとする。


せっかくあそこまで頑張りながら、あっさり真犯人を返してし
まうあたりも残念なところ。


よりリアルでスリリングな警察小説を期待したい。

駿河城御前試合/南條 範夫
¥920
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勝手に採点 ☆☆☆


江戸幕府第二代将軍・徳川秀忠の三男で駿府城主・忠長の命
を受けて開催された御前試合。


何とそれは剣士が命をかけた真剣勝負だった。十数番に及ぶ
血で血を洗う凄惨な状況に観客も耐えられず試合の終わりを
願うほど。


晩年、辻斬りや家臣の手打など御乱交が元で自害せしめられた
忠長だけは薄笑いを浮かべ見入っていたという。


何といっても一番気になるのは剣士たちが真剣試合を行う動機。

そのすべてが、美貌の女性に対する執着心が原因。


それもこじ付け気味の理由が多く、終盤に至るに従ってもうい
いやという気分に。


武士道に生きた彼らがそんな理由から命を欠けるとは説得力が
薄い。忠臣蔵のような忠義のための戦いはなかったのだろうか。


戦いの惨状は酸鼻を極める地獄絵。

十数番に及ぶ対局で、結局生き残ったのはほんの数名。


それでも手傷を負ったり、その後殺されたり、なかには観客の
関係者が自害したりと散々な結果。


命の無駄遣いは何も生まないということ。