閉鎖病棟/帚木 蓬生
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勝手に採点 ☆☆☆


ある精神病院で暮らす患者たちの日常。


病院内で発生する暴力行為や患者の自殺、患者間の連帯感や友情、

そして退院して自立の道を歩むもの。


そうした実態を患者たちの生い立ち、境遇を織り交ぜながら描いた

感動のドラマ。


とは言っても感動はない。


精神病院という設定上、全体的に暗いのはやむを得ないが、それでも

ストーリー展開が暗すぎ。読み進めるのが苦痛なほど。


4人を殺害し、死刑執行後奇跡的に組成した男や父親から性的暴行を

受けた女子中学生、覚せい剤中毒の元ヤクザなど、境遇が悲惨。


それ以外でも、幻聴や幻覚に悩まされ、家族に危害を加えるようになっ

て強制的に入院措置を講じられたものがほとんど。


当然の如く、精神分裂病と診断された彼らは家族からも敬遠され、見舞

いに訪れる親族もほとんどなく、入院期間も十年以上の長期に及び、こ

こで人生を終えるものも多い。


それでも精神科医の筆者がその実態を多少の脚色があるにせよ公に

した意味は大きいかもしれない。


ただ、小説としてはあだ名の登場人物が特定しずらく、年齢や容姿が

イメージできないところが残念。


また、ユーモアや軽さといった話題ものないことが共感しずらい。


ましてラストの殺人事件は過酷。せめて死刑だけは免れて欲しいところ。

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熱欲/堂場 瞬一
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勝手に採点 ☆☆


シリーズ第三弾。


刑事課を離れ生活安全課に所属する鳴沢了。

今回の捜査対象は、マルチ商法による巨額詐欺事件。


わずかな蓄えを費やし、ヤミ金にまで手を出し自殺する被害者も。

内部通報者を通じた地道な捜査の続ける鳴沢たち。


しかし、その背後に中国系マフィアの魔の手が迫る。


主人公の設定や事件の背景はかなりリアリティーに富んでいるもの、

今回のゲスト出演者である親友とその妹の存在、そしてチャイニーズ

マフィアの登場により台無しになっていく。


別にニューヨークでデカをしている元親友なんか出さなくても十分ストー

リーは展開できるし、特に最後のヒーロー張りの活躍はアリエナイザー。


また、いくらマフィアでも日本に来てまで警察官を拉致・殺害する輩は

いないだろう。まして幹部ならなおさら。


おかげで架空の投資話を利用した詐欺事件の摘発までの緊迫感が

削がれているし、首謀者たちの人物描写がなおざりなので、どうも

感情移入がしずらい。それもラストはなんとなく尻すぼみ。


悪は必ず滅びる的な要素と首謀者たちの悪さ加減をより前面に押し

出し、捜査陣の苦悩、軋轢、チームワークを掘り下げた人間ドラマに

して欲しかった。


主人公の鳴沢は大きな苦悩を抱えているようだが、本書の第一弾、

第二弾を読んでその謎に触れてみたいと思わせないところが残念

なところ。

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水の中のふたつの月/乃南 アサ
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勝手に採点 ☆☆


久しぶりに集まった幼馴染みのめぐ、ありんこ、理紗の三人。


それぞれ二十歳を過ぎて、独立した暮らしをしていたところへ、

めぐからそれぞれに連絡があった。


ほどなくめぐの様子がおかしい事に気づくふたり。

そして、彼女の彼氏を紹介された二人は・・・。


何の脈絡もなく、めぐの彼氏を殺害してしまう三人。

それも最初はめぐがターゲットだったのに・・・。


突然、三人がよりを戻してしまう展開に面食らう。


また、彼氏の殺害理由はまったくもって不明。

ありんこと理紗は、友人の彼氏と特に理由もなく肉体関係を

結んでしまう。


それぞれ嫉妬に狂うこともなく、淡々と物語りは進む。


小学生時代に起きた事件をなぞるような今回の犯行。


もったいぶった展開で、なぜめぐがおかしな言動をおこなうの

かもわからずじまい。

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神のふたつの貌/貫井 徳郎
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勝手に採点 ☆☆


教会を営み人格者の牧師を父に持つその息子のお話。


ある日、牧師が教会内にヤクザに追われた優男を匿ったことから、

平穏だった暮らしは思わぬ方向へ。


母とその男が乗った車がガードレールを突き破り谷底へ転落。

二人とも帰らぬ人に・・・。


それから成長した息子は、父と同様に牧師となる。

そして、自分の母と同様に妻を交通事故で失う。


まったく自分と同じ境遇におかれた息子。そんな彼が犯す罪とは!?


はっきりいって大いに期待はずれ。


牧師の仮面をかぶった殺人狂の変質者。


自分の理解者を時計台から突き落としたり、妊娠した恋人に殴る蹴

るの暴行を加えて流産させたり、熱心な信者に自殺を教唆したりと

やりたい放題。


それも然したる理由もないのだから、納得できるはずもない。

都合よく神とは?みたいな議論を入れられても全く理解できない。


そのうえ、主人公を軸にその父親と息子の三代に渡る、それこそ大河

ドラマなみのスケールをあざ笑うかのような矮小な設定。


息子も自分と全く同じような罪を犯してしまうため、父親と息子を混同

せずにいられない。


作品によって出来の良し悪しがはっきり分かれてしまう筆者が挑んだ

新境地は見事失敗。

活動写真の女/浅田 次郎
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勝手に採点 ☆☆☆


時代は70年代。


京大生となったばかりの主人公が、同じ大学の医学部に通う友人

の紹介で大好きな映画撮影所でアルバイトを始める。


その二人がエキストラとして時代劇に出演した際、まさに絶世の美女

というべき無名の女優に出会う。


あれこれ調べるうちにその女優は、すでに自殺してしまっており、彼ら

にしか存在の見えない亡霊であることが分かる。


そして、友人はその女優の亡霊と恋に落ち、二度と戻れない禁断の世

界線につき走っていくが・・・。


当時の時代背景や活気満ち溢れる撮影所、大学闘争最中の大学の

雰囲気のなどなかりリアルに描かれ引き込まれる。


ただ、幽霊との恋愛という非現実的な設定がリアリティを壊し、現実

なのか虚構なのか、非常にあいまいでどっちつかずの印象を与える。


「メトロに乗って」同様、都合よく虚構の世界を持ち出してしまっている

あたりが共感出来ない。


それよりも、主人公と同じ下宿に住む先輩との儚い恋模様の結末の

方がよっぽど気になる。

現在からの学生時代を回顧するスタイルをとっているため、主人公

の今がどうなったのか分からずじまい。


そうした過去の経験を踏まえて彼がその後どう生きたかを知りたい

ところ。

日本沈没 下 小学館文庫 こ 11-2/小松 左京
¥600
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勝手に採点 ☆☆☆


最近久しぶりに映画化もされた大ベストセラー。


日本大陸が急激に沈下し、海に沈むと予測した異端の科学者。

彼の考えをサポートする謎のフィクサーと、国家規模で対応を

検討する政治家たち。


未曾有の危機に瀕した日本国民は果たして生き残れるのか!?


日本の消滅となるとさすがにスケールが大きすぎて、イマイチ

焦点が定まらない。主人公がいるのだが、だからといって大

活躍する訳ではないし、全編に渡って登場する訳でもない。


確かに、科学的な視点も踏まえ、より具体的に危機管理、防災

対応を検証した画期的作品で、阪神大震災で現実に証明された

危惧も数多い。


しかしながら、娯楽作品としては少々難解。


特にマントルや大陸プレートなど沈没のメカニズムを何ページ

にも書き連ねるのはいかがなものか。


分かりやすく伝えようとする意図は理解できるものの、小説とし

てはそこまで詳細な説明は不必要。


登場人物や場面設定も多彩すぎで誰かに感情移入できない点

が残念。まるで一日の生活を書き連ねる小学生の絵日記のよう。


ところで、主人公を探し回ってた女性はどうしてそんなに彼に

こだわっていたのだろう。

クローズド・ノート/雫井 脩介
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勝手に採点 ☆☆☆☆☆!


大学でマンドリンクラブに所属する地味目の女子大生が主人公。


彼女はあるとき自分のマンションを見上げ、思い出に浸っているよ

うな若い男性に遭遇し心引かれる。すると彼はバイト先の文房具店

に客として表れ、それ以来二人は顔見知りになる。


思い通りに進展しない恋愛に彼女は、部屋に残されていた数冊の

ノートに記された若い女性教諭と小学生たちの心温まる交流に触

れる事で癒され、励まされ、感動を味わう。


掛け出しの画家だった彼の最初の個展で彼女が送ったお祝いの

メッセージとは!?


最初から展開がわかりつつも泣かされてしまった。


特に、亡くなった教師と小学生たちのやりとりは、いじめ問題や教師

の質の低下を忘れさせてくれるぐらい感動的。


こんな一生懸命な先生が増えれば、悲しい事件も減っていくに違い

ない。


単に女子大生の恋愛話で終わらずに、命の尊さ、大切な人を思う気持

ち、前向きに生きていくひたむきさがひしひしと伝わって、大きな感動を

味わえる。


先生の残した「心の力」。


目には見えないが確実に存在するこの力を強く、たくましく成長させる

ことこそ、今の教育現場には求められているのかもしれない。

夜市/恒川 光太郎
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勝手に採点 ☆☆☆


日本ホラー小説大賞受賞作。


ふと迷い込んだ異次元空間での魅惑的な市。

そこは不思議なものが手に入る幻想的な世界。


野球の才能と引き換えに人攫いへ弟を売ってしまった男が、

再び夜市へ舞い戻り、弟を取り戻すべく交渉するが・・・。


いわゆる「トワイライトゾーン」や「世にも奇妙な話の類」だが、

どうも違和感が残るのが、夜市の日常感。


お金は現世のものが使えるようだし、人間が参加することもできる。

言葉も日本語でOK。あまりに都合がいい感じ。


このあたりは、書き下ろしの作品も似た仕上がり。


それでも中盤から終盤にかけての展開はなかなかのもの。

市で出会った紳士が実は捜し求めていた弟だったとは。


そう考えると主人公ともいえる女子大生の役割は微妙。

いなくても良かったのでは!?