チーム・バチスタの栄光/海堂 尊
¥1,680
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勝手に採点 ☆☆☆☆

このミス第4回大賞受賞作。

東城大学医学部付属病院が舞台。

難易度の高い心臓手術「バチスタ」を奇跡的な成功率で成し遂げる
アメリカ帰りのカリスマ外科医・桐生助教授率いるチームバチスタ。

そんな彼らに突然襲いかかる悲劇。その謎を解明すべく、愚痴外来
と陰口を叩かれる不定愁訴外来を担当する万年講師田口が、高階
病院長の命により調査を始める。

調査が難航し、新たな悲劇が起きるに至って、厚生労働省から一人
の男が派遣され・・・。

ストーリー展開、人物描写、大学病院内部のリアリティとどれを取っ
てもかなりの高水準で、手放しで楽しめる。

特に、大学病院に籍を置きながら権力闘争に無関心の田口、ロジカル
モンスターと呼ばれる変人役人・白鳥、

やり手病院長高階、天才外科医桐生とどれをとっても超個性的で、
人物像が自然と浮かび上がってくるよう。

白鳥だけは現実離れ、浮世離れした設定だが、絶妙なスパイスと
なって物語り全体を引き締める。

名作「白い巨塔」にも通じる大学病院内の権力抗争や医療ミス、
医療用語といった難解で重いテーマを扱いながら、登場人物の
個性と平易な文章で読み手が頭を抱えることもなく、飽きさせない。

難をいえば、犯人と犯行動機に説得力が欠けるところだが、それ
でも納得できる程度には落ち着いている。

どうやらシリーズ二作目も出版されたようなので、田口と白鳥の
新たな活躍を期待したい。
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明日の記憶/荻原 浩
¥1,575
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勝手に採点 ☆☆☆☆


渡辺謙主演で映画化された話題作。


若年性アルツハイマーに侵されたサラリーマンの主人公。

もうすぐ孫が生まれ、会社でも営業部長として公私共に充実

した生活を崩壊させる悲劇。


自身の病魔を受け入れ、妻と共に生きていくまでの苦悩と悲

しみ、そして希望を描いた感動作。


自身の日記が、記憶のあいまいさが増すほどに、子供が書い

たようにひらがなばかりの稚拙な文章になって行く。


これって、どこかで読んだことのあるスタイルだが、どうも思い

だせない。もしかしてアルツハイマーかも・・・。


壮年期に人格が徐々に崩壊していく様は本当に恐ろしい。


老人であればボケとしてある程度理解されるだろうが、

第二の人生これからというときでは無念でならないだろう。


自分にも起きる確率がゼロでない。

この病気にかかってしまったらどうしよう・・・。


そんな気持ちばかりが先行してまう一冊。


物語自体は客観的で淡々とした描写とドラマティックな設定

が少ないことから、涙が流れる感じの悲しさは少ない。


それでもラストは印象的。

長年連れ添った自分の妻さえも誰なのか分からない・・・。

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「雪蛍」

テーマ:
雪蛍
¥914
株式会社 ビーケーワン

勝手に採点 ☆☆☆


静岡の薬物リハビリ施設に勤める佐久間。

元探偵の彼は、時折、人探しを依頼され引き受けていた。


今回は、資産家令嬢の女子高生の失踪事件を依頼される。


一見ただの家出に見えたが、裏には家族間の複雑な問題

が絡んでいた!彼は無事に彼女を探し出せるのか!


展開のスピードがかなり遅く、肝心なところにたどり着くころ

には、もう飽きちゃったという感じ。


設定自体が元探偵とありきたりである上に、ヤクザの妨害

や関係者の殺害、その犯人が家族内にいるなど、これは

という目新しさ、斬新さに欠ける。


また、手の付けられないリハビリ施設の問題児も、ごくあっ

さりと改心してしまうあたりは肩透かし。


そもそも、ハードボイルド=探偵

という設定は平和な日本では成り立ちにくい


浮気調査=探偵ならわかるが。


その点では警察官の方が拳銃を携帯しているし、捜査権を

持っているので、ハードボイルド刑事が成り立ちやすい。


新宿鮫のようなスピード、スリル、バイオイレンスをマイルド

にし過ぎた分、魅力も半減。


ぜひ新作「狼花」に期待したいところ。

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金融腐蝕列島 下
¥571
株式会社 ビーケーワン

勝手に採点 ☆☆☆☆


舞台はメガバンク協立銀行。一流私大卒ながらも、東大卒が幅を利

かせる行内にあって屈辱的な辞令を受け取る竹中。


それは総会屋対策を専門とする部門への異動だった・・・。

異例の人事異動に隠された銀行を揺るがすスキャンダルとは。


会社の論理に巻き込まれながらも自説を貫こうとする孤高な姿は

見ていて清清しく憧れる。


不正融資に手を貸し、良心の呵責に苛まれながらも、敢えて権力者

に立ち向かう勇気は見習いたいもの。


サラリーマンではなかなかこういった行動は難しい。


それと株主総会のリハーサル風景は、自身の経験と相まって懐かしい

印象。確かにこういった意地悪質問をさせた思い出もあるし、総会後の

お酒のうまいことといったら格別。


主題となっている銀行内部の権力闘争とは本当に凄まじい。


他人を蹴落とし落としいれ、自分の踏み台、盾として利用していく。


その勝者が会社を私物化し、権力にしがみつく様になっては見苦しい

し、なにより会社にとってもは最大の不利益。


権力は清らかな水の如くあり続け、溜まりになってはいけない。


近年の商法改正によって、経営に対する監視、ガバナンスの強化が

図られているが、体質は変わってきているのだろうか。


そういった意味では、ちょっと設定が古い感は否めないが、ぜひ続編

を手にとって見たいもの。

夢にも思わない
¥619
株式会社 ビーケーワン

勝手に採点 ☆☆


男子中学生を主人公に彼が巻き込まれた殺人事件を通じて、

友情や恋愛を深め、人間的に成長していく姿を描く推理小説。


中学生が主人公とあって、全く感情移入ができず、読み進め

るのに一苦労。


同じ少年からの視点で描いた「龍は眠る」のような緊迫感や

スピード感に欠け、少年探偵団的展開がリアル感にも乏しい。


親友の島崎との友情はなかなかうまく描かれ、もどかしい

感がうまく引き出されているものの、クドウさんとの恋愛に

ついては今ひとつ。


何でそこまでこだわるのかが理解出来ない。それも少年

特有の潔癖性的な性分か。そういう心情が分からないと

ころがおじさんのつらいところ。


それと決定的に違和感を感じるのが刑事たち。


たかが中学生に秘密であるはずの捜査情報を与え、まる

で小間使いとして使っている。ありえない。

地下鉄(メトロ)に乗って
¥552
株式会社 ビーケーワン

勝手に採点 ☆☆☆


映画公開も待たれる話題作。


実業界のカリスマを父に持ちながら、兄の自殺をきっかけに

若くして家を飛び出した真次。


今は下着販売の営業で、同じく家を出た母と妻子を養いながら、

同僚のみち子とは不倫関係に。


そんな時、家業を継いだ弟から、父がそう長くないことを知らされ、

父と和解して、会社経営に参加して欲しいと懇願される。


気まぐれで立ち寄った同窓会で悪酔した帰りに、地下鉄の出口で

真次が見たものは・・・。


超シリアス版「バック・トゥ・ザ・フューチャー」


デロリアンの変わりはなんと地下鉄。


過去にタイムとリップして、いろいろ画策しても、死んだ兄が生

き返ることもなければ、自分が裕福になることもなく、ひどいのは

愛人さえ消滅してしまう。


こういった悲劇性、暗さが目だって素直に共感できないところが

惜しいところ。


また、タイムとリップのタイミングや場所、時間がまちまちで、一定

の規則性がないので、それがストーリー展開を不安定にさせている。


椿山課長の七日間 」同様、ハリウッド映画を下敷きに、悲哀に満ち

たサラリーマンを主人公に据えているが、どちらもラストの暗さが物

語全体を損なっているところに難アリ。