「探偵倶楽部」

テーマ:
探偵倶楽部
\514
株式会社 ビーケーワン

勝手に採点 ☆☆☆


美形の男女が調査員で、お金持ちのトラブルを解決する

謎の会員制探偵組織「探偵倶楽部」。


秘密厳守で仕事はきっちりこなすとという評判の良さで

会員からの評価も高い。


そんな彼らがクライアントから依頼された調査や謎解き。

彼らの素性は全く分からず、淡々と事件を解決する。


密室殺人の謎や連続殺人の犯行動機などにスポットが

当てられ、数学的なパズルを解くイメージ。


初期の東野作品に多くみられるパターン。


後の優れた作品のネタにも使われるトリックや仕掛けも。


ただ、やはり気になるのは、トリックに集中しすぎて、人間

の情念がすっぽり抜けている点。


犯行動機が後付けで説得力に欠けるのは、感情はそんな

に簡単に割り切れないところ。


前にも書いたが、このあたりを主眼にもってきて、トリックで

味付けした作品がここもとの彼の作風であり、読み応え十分

なもの。


本書を読むことで、最近の東野作品の良さが改めて実感で

きる。

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悪忍
\1,800
株式会社 ビーケーワン

勝手に採点 ☆☆☆


伊賀と甲賀の両方の勢力から命を狙われ続けるも、卓越した

運動能力と軍師並みの知力で、追っ手を血祭りにあげる忍者

山本段蔵。


そんな彼の活躍を描く時代小説。


悪いヤツらからの盗みや恐喝を生業とし、その評判により追っ

手をひきつけ、待ち伏せる。


奪った金で酒池肉林に耽り、敵の同業者までも、自らの罠に

引き込み活用する策士。


そんな超悪忍者、アンチヒーローの活躍は、小気味良いテンポ

で進むため心地いいほど。


それも、そんな彼の真の目的は、愛する人を奪われた復讐に

あるのだから泣かせるところ。


しかし、いただけないのがラストにかかる展開。

それが、双子のトリックと服部弟の存在。


こんな筋書きをラストに聞かされたところで納得できるはずもない。


推理小説で言えば立派な禁じ手。


それでも、その後の展開を読みたくなる出来栄えの良さは否

定できない事実。

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吉村 克己
ヤフー・ジャパンはなぜトップを走り続けるのか

勝手に採点 ☆☆☆☆


インターネット業界のガリバーとして君臨し、わずか10年あまりで

屈指の大企業に成長したヤフー。


本書ではその背景説明と現役・OB社員とのインタビューを通じて

その強さの秘訣を探る。


なんと言っても読みどころは現役社員のコメント。


ソフトバンクパブリッシングが出版元だけに、ヤフーの宣伝になっ

ている感は否めないが、内容自体はきちんと取材されれたりして、

ただのヨイショにはなっていないところは好感が持てる。


社員の本音というところでは、ショッピングの松本氏やモバイルの

川辺氏のやんちゃさが光る。


また、元作曲家の水野氏や元編集者の宮坂氏など、以前の職種

をいかして活躍されている方も多そう。


彼らが異口同音に発言するのは社長・井上氏の優秀さ。


それも経営者として能力が優れているだけでなく、人間的に包容力

があって厳しい中にも、おおらかさも伺える。


ソフトバンクの孫氏やヤフー創業者のヤン氏といったカリスマを支

える経営者としては、彼のような実務能力と調整能力が不可欠なの

だろう。


最近ちょっと気になるのはサービスのスピード感の衰え。


彼らは常にユーザーに向いた経営姿勢を口にしているが、ブログや

SNSで遅れをとったのは事実。


セキュリィティや障害除去のため、サービスを提供するのに時間が

係ってしまう面はしょうがないが、それでも我慢には限界がある。


You Tubeのような動画投稿サービスやあ、っと驚かせて、楽しいサー

ビスを提供して欲しい。

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博士の愛した数式
\438
株式会社 ビーケーワン

勝手に採点 ☆☆☆☆


小学生の息子を抱えた若い家政婦が、派遣された先で世話

をすることになったひとりの老人。


彼は数学の研究者であったが、交通事故が原因で頭部を強

打し、それ以来、記憶が80分しか持たない体となってしまった。


次々と家政婦が辞めていくなか、この若い家政婦は彼の持っ

ている繊細な優しさ、思いやりに心を打たれ、献身的な世話を

続け、息子もまたなついていく。


登場人物が博士、家政婦、ルート(家政婦の息子)、未亡人と

ごく限られいるものの、内容は濃い。


博士と家政婦との、数や数式を通じた心のふれあいと博士と

ルートの野球を通じた信頼関係が本書の主題。


筆者がタイガースファンということで、タイガースネタが多いの

が気にかかるが、それを補ってなお彼らの強固な信頼関係や

細やかな気使いに心を奪われる。


特に博士が数式を通じて訴えかける愛情の深さは多くの共感

を呼ぶはず。


個人的には、終盤もうひとひねり欲しいところだが、穏やかな

終焉こそが、この物語にはふさわしいのかもしれない。

城山 三郎
男子の本懐

勝手に採点 ☆☆☆☆


昭和初期の政治家、浜口雄幸と井上準之助にスポット

をあて、激動の半生と政治への真摯な取り組みを明か

した名著。


現代の政治家が持ち得ない「気概」が噴出すような二人

の生き様は清清しい感動を呼ぶ。


この時代の政治家はまさに命がけ。


浜口首相が東京駅で凶弾に倒れ、井上蔵相もその翌年

暗殺される。ちなみに当時の逓信大臣は、小泉首相の

祖父である小泉又次郎。


そして、彼らの念願だった金輸出解禁後、政権の座に就

き、輸出再禁止措置により不況対策を断行した犬養首相、

高橋蔵相のコンビも二・二六事件によってこの世を去る。


決してテロリズムが横行していた時代が良い訳はないが、

そんな状況下だからこそ、政治思想・信念に忠実に、

そして命を掛けた政治家たちが存在したとも言える。


小泉首相が国民から指示され続けた大きな要因は、自分

の政治信念を忠実に貫き通す真摯な姿勢が評価されたか

らではないか。


その意味では、戦前の短い間に散っていった政治家たちと

印象がだぶる。


奇しくも昨日安倍自民党新総裁が誕生した。


平和な時代だから、命を掛けろとは言わないが、自らの政治

生命を掛けて日本の舵取りをお願いしたい。


きっとそれが彼にとって「男子の本懐」となるはず。

Joel Coen, Ethan Coen, 村雨 麻規, ジョエル コーエン, イーサン コーエン
レディ・キラーズ

勝手に採点 ☆☆


トム・ハンクス主演映画のノベライズもの。

コーエン兄弟の強烈なブラックコメディが鮮烈。


カジノの地下金庫に眠る現金を強奪するため、5人の男たち

が結集。黒人の老女宅の地下室からトンネルを掘り進める。


教授と呼ばれる男を中心に絶妙な役割分担で金庫破りに

成功するが・・・。


ノベライズの難しさを実感する一冊。


百聞は一見にしかずで、映像で見せるのと言葉で説明する

のでは、伝わり方、感覚が全く別物になってしまう。


コーエン兄弟の独特な映像、カット、スピード感が全く無視

され、単にストーリーを淡々と追っかけた書きっぷり。


きっと老女と教授とのやりとりは、ウィットやユーモアが溢れ

ているのだろうが、全然伝わってこない。


唯一、巻頭にある映画のショット集だけが雰囲気を伝えてく

れる。


それにしてもこんな結末は勘弁して欲しい。

これではまさに「Lady killers were dead」

「慟哭」

テーマ:
貫井 徳郎
慟哭

勝手に採点 ☆☆☆☆


首都圏で頻発する連続幼女殺害事件。


警視庁捜査一課長を勤める佐伯は、キャリア出身だ異例の人事

で捜査指揮を取ることに。捜査員たちの必死さをあざ笑うかのよう

に繰り返される惨劇。


長引く捜査と佐伯自身のスキャンダルも重なり、警察内部でも不

協和音が。黒魔術を信仰するカルト宗教団体が不気味に絡まり

あいながら事件は驚愕の最後を迎える。


時系列に組み立てられたと思わせる文章構成、犯人の性は松本。

これを鵜呑みにするとまんまと騙される。


横山作品にも通じる警察小説の匂いがあるものの、読み進めるの

が億劫になるほど暗く重い展開。


それでも読者を引き込む筆力はたいしたもの。


ただ残念なのは、キャリア警察官僚が連続殺人犯というあまりに

ありえない設定、あいまいな犯行動機と騙しうちの文章構成。


彼の娘が殺された時期、捜査を指揮していた時期、犯行を重ね

ていた時期の先後関係が非常に分かりにくい。


そして「死んだ娘の再生のために人の子を殺める」という子を持

つ親なら必ず違和感を覚える動機はいただけない。

山川 健一
歓喜の歌

勝手に採点 むっ


クレジット会社に勤務する高村は、債権の取立ての最中、

カードローンに苦しむ女性沙希と知り合う。


男性として屈辱的な障害を抱える高村は彼女と出会い、

愛することで心の重荷が取り払われていくような感覚を

味わうが、突然彼女は失踪してしまう。


沙希が姿を消した理由とは。彼女の本性とは!?


出世街道を走るものの、肝心の持ち物が極度に小さい

という特殊な障害を抱えるイケメンサラリーマンと美人だ

が心が病んで手がつけられない沙希との転落人生。


設定が極端ぎて感情移入ができない。


その上、カード会社の内幕の描写は、高杉良ばりの経済

小説を狙うわけでもなく、障害の原因を追究するわけでも

なく、精神病の原因を深く追求するわけでもない。


すべてが中途半端。


かつ沙希のどう見ても支離滅裂な言動も全く理解できないし、

女債権者や元旦那の行動も理解不能


高村も一債権者に対して、なんでそこまで肩入れするのだろう。

そして何を意図して書かれた作品か全く理解に苦しむ。


大企業の実態やうつ病、出会い系、裏社会、環境問題そしてお

色気大など、流行りのテーマを適度に盛り込んだご都合主義の

作品は読むに値しない。

東野 圭吾
私が彼を殺した

勝手に採点 ☆☆


人気男性作家が結婚式当日に毒殺される。


容疑者として、彼のマネージャー、担当だった女性編集者、花嫁の

兄が浮かび上がるが、彼らのいずれもが殺意と犯行におよぶチャン

スがあり、自ら「私が彼を殺した」と考えた。


犯行に使われた鼻炎用カプセル、直前に自殺した恋人、花嫁と兄

の危険な関係が複雑に絡み合い、真犯人を深い霧で包み込む!


「犯人はあなたです」という刑事のセリフで終わってしまうラストが

許せない。一体誰が犯人だったの!?が正直な感想。


結局誰が犯人だったのか、暗示はされているものの誰かは直接

言及がなく、唐突に終わりを迎える。


まあ、推理小説の王道として、


・被害者は誰からも恨みを買うような高慢ちき

・登場人物全員が怪しい

・勝手に推理を進める刑事コロンボみたいな奴がいる

・そして真犯人は意外な人


とポイントは押さえている。しかし、犯行の動機が全く不明だし、

わざわざ全員集めて発表会をする理由も分からない。


とはいえ、禁断の愛や人間性の闇の部分にスポットライトを当てる

など、「白夜行」や「幻夜」といった読み応えある秀作の原点が垣間

見れる。


初期作品の多くにみられる殺しの謎解きに力点を置いたミステリー

から人間と人間の複雑な関係、気持ち、愛憎といったヒューマンドラ

マにし始め、氏の作風は大きく進歩し、より多くの読者を引き付けた。


それにしてもひとつ気になることがある。

結婚式場で毒殺された花婿って一体何人いるのだろうか。

藤沢 周平
凶刃―用心棒日月抄

勝手に採点 ☆☆☆


シリーズ第4作。


前作から16年後の設定で、主人公青野又八郎も40代中盤。


用心棒稼業も懐かしく感じられるほど、藩の要職につき生活

は安定し、子供の成長を喜ぶ普通の父親となっていた。


そんな折、江戸へ半年ほどの役目を言い渡され、出発を控え

ていたころ、重臣から藩の秘密組織「嗅足」に関するある命令

を江戸にいる「嗅足」の女頭領佐知に伝えるよう打ち明けられる。


するとその重臣が何者かによって暗殺され・・・。


藩の秘密とやらが、藩主の側室の出生に関するもので、かなり

込み入った話であるため、ストンと腹に落ちてこない。


前シリーズと異なり、推理小説仕立て、謎解きに力点が置かれ、

又八郎と敵との暗闘や町人の暮らしぶり、用心棒の雇い主に

まつわる秘話などは触れられないか、かなり端折られている。


藩命を受けた又八郎が佐知と共に秘密を守るストーリーと、用

心棒稼業で生計を立てるエピソードが絶妙に絡まりあって奥深

い物語に仕上がっていただけに残念。


又八郎や佐知、そして細谷なども年を取ってしまい、目まぐるし

い活躍を見せられなくなってしまったということか。

それでも、二人のひとときの逢瀬や貧乏暮らしが続く細谷の生活

ぶり、新しい助っ人など登場人物は魅力満点。


ぜひ続編を期待したいところだが、ここで絶筆になっているのが

惜しいところ。