司馬 遼太郎
坂の上の雲〈6〉

勝手に採点 ☆☆☆☆


21世紀に残したい名作ナンバーワン。

自身にとっても読書好きのきっかけとなった忘れがたい作品。


日露戦争の陸戦と海戦の立役者である秋山好古・真之兄弟

の活躍と真之の親友で俳聖・正岡子規とのふれあいを描く大

河ロマン。


読み返しも数回を重ねてくると、初読のときの感動・衝撃は薄れ

ていくものだが、その薄れ具合が少なく、毎度新しい感じ方が出

来るのは名作たる所以。


今回改めて印象深かったのは、真之の生き様。

最初のころは好古の超人的な強さに惹かれていたのだが。


なるべくして連合艦隊の参謀に選任され、日本海海戦の作戦を

任された逸材であったが、戦後は別人のようにその輝きを失う。


自分の頭脳の限りを尽くして戦争による効率的殺戮方法を考え、

それがあまりにうまくいった結果、日本に奇跡的な勝利を呼び込

んだものの、戦争の悲劇に打ちのめされる。


そういった人間の弱さを露呈するあたりが、機械的・超人的では

ないヒューマニズムを感じさせ、彼を身近に親しみ深く共感させる。


今回初めて知った事実にがもうひとつ。

なんと連合艦隊の旗艦として東郷平八郎、真之らが乗艦した三笠

が横須賀に展示保存されている。

http://www.kinenkan-mikasa.or.jp/


小説によると終戦後すぐに火薬庫が誘爆して沈没したはずだが。

さすがに近代日本を救ったシンボルとして心を動かされた人が多

いということか。

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天童 荒太
永遠の仔〈5〉言葉

勝手に採点 ☆☆☆☆


精神的に問題を抱えた児童福祉施設で出会った

優希、梁平、笙一郎。


美しい少女である優希に恋した二人が、彼女を苦

しめる原因を排除するため企てた恐ろしい計画・・・。


そして17年後。彼らは再会し、新たな悲劇が始まる。


あまりに重苦しいテーマ、設定のため読むのが重荷

になるほど。


児童虐待もここまで揃うと気がめいる。


ストーリー的には、落ち着くところに落ち着いた感が

あるが、優希の最後の行動はちょっと疑問。


施設でまり子の面倒を見ながら、彼の遺骨を守るべき

なのでは。そういう意味であまりに冷たい仕打ち。


あまりに登場人物が死んでしまうので、もう少し救いや

希望のある話題を組み込まないと改めて読み返したい

という気持ちは沸き起こらない。

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「砂漠」

テーマ:
伊坂 幸太郎
砂漠

勝手に採点 ☆☆☆ かお


大学に入り知り合った仲間たち。


男女5人の彼らが学生生活のなかで繰り広げる奇抜な事件

の数々を描く青春小説。


西嶋の言動、奇行や超能力事件、プレジデントマン事件、連続

強盗事件などひきつけられ、魅力的なのだが、いかんせん、

設定のマンネリ化がすべてを台無しにしている感。


仙台、学生、通り魔事件、ある種の悲劇性、鳥瞰的志向の主人

公など使い古されたモチーフに辟易。


彼の持つ独特の作風、筆感に魅力を覚えずにいられないだけに残念。


得意なものを手放し、挑戦的な気持ち、実験的な試みを期待したい。

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