夢枕 獏
陰陽師 瀧夜叉姫 (下)

勝手に採点 ☆☆☆☆


久々のご存知陰陽師シリーズ。


安部晴明と友人源博雅が、都の平和を脅かす強敵に

立ち向かう!


今回立ちはだかる難敵はあの平将門。

首だけでも生きていた逸話もある妖怪的な存在。


彼が興世王の陰謀によって、世にも恐ろしい鬼へと変貌

を遂げ、死後20年後に蘇る・・・。


いわゆる「キモおもしろい」ストーリー展開。


嬰児を殺害して食べてしまう「児干」や将門が妻や子供の

亡骸を食する場面などかなり気持ち悪い描写も。


しかし、晴明の推理と呪によって、興世王の企みが暴かれ

最後は非業の死を遂げる。


ネタ的にはあまり新鮮味はないものの、水戸黄門的悪が滅

びる展開で安心して楽しめる。


欲を言えば、晴明の派手な活躍を期待したいところだが、

今回はかなり脇に徹した感。


それにしても将門の生命力、復讐心は怖い。

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「眠りの森」

テーマ:
東野 圭吾
眠りの森

勝手に採点 ☆☆


名門バレエ団で起った殺人事件。

夜間に忍び込んだ泥棒を女性団員が正当防衛で殺害。


賊の背後関係を捜査するうち刑事加賀は意外な接点に着目する。

そんななか、公演中に主任演出家がされ・・・。


あまりに理屈っぽく現実感の欠けた設定にがっかり。

いわゆる安っぽいミステリーの仕上り。


第一の殺害時点で、なんでとっさにそこまで思いつくの?、

交通事故で聴力を失うって?、公衆の面前で毒物を注射するなんて

可能?と突っ込みどころ満載。


演出家を殺害する動機も説得力なし。

ニコチンで殺せても、ホントにそこまでするかな~。


加賀とプリマ美緒との恋愛模様もかなり中途半端。

特にラストはありきたり。

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奥田 英朗
イン・ザ・プール

勝手に採点 ☆☆☆☆


人を深刻にさせない天性のキャラクターを持つ精神科

医伊良部。


またまたヘンテコな症状で苦しむ患者たちを救うべく

奇天烈な対処療法を実行する。


自己中心的性格・マザコンの中年デブで絶対良い所が

ないはずの人物ながら、その天真爛漫さで知らずに知

らずのうちに人を引き付け、症状を改善させる。


天賦の才能とはまさにこのこと。


今回の患者たちは、プール依存症の編集者、ケータイ

依存症の学生、あそこが立ちっぱなしの会社員、強迫

観念症のコンパニオン、ライターと多種多様な取り合わせ。


彼の診療は至ってシンプル。栄養注射を打って、その後は

患者と一緒に生活に溶け込んでいくこと。


伊良部のあまりの馬鹿さ加減に、自分がしっかりしなきゃと

思い、症状が和らぐと同時に、そんな伊良部に癒されしまう。


ほんとにこんな先生がいたら大変だが、一度は訪ねてみた

いもの。

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乙一
小生物語

勝手に採点 ☆☆☆


愛知県から東京へ上京し神奈川へ転居するあたりの

日常を、自由気ままな文体で描いた本人のWEB日記。


いまではブログやSNSの登場で全く珍しくなくなった

日記を早い時期から記していた乙一。


作家として自立して行くも、時折見せるごくごく一般人

的視点が頻出して微笑ましい。


特に上京したとき寝泊りするのがマンガ喫茶だったり、

各社の編集者に連れられていく食事の豪華さに気後れ

したり、サイン会で狼狽ぶりなど。


また、日記といいながらも、小説の小ネタのような話が

ちょくちょく出てくるあたりも飽きさせない。


ぜひ、このweb日記再開して欲しいものである。

古田や真鍋を超える存在になるかも!?

重松 清
その日のまえに

勝手に採点 ☆☆☆☆☆!


大切な人との永遠の別れをテーマにした連作短編集。


不治の病に冒された本人の絶望、想いと、母、息子、妻、友

人との死別によって残された者の悲しみ。


それでも前向きに生きようとするひたむきさ、健気な姿を正面

からきちんと描いた印象。


特に家庭をお持ちのお父さん方にはおすすめ。

久しぶりに電車の中で涙が止まらなくなった。


特に題名にもなっている「その日のまえに」、「その日」

「その日のあとに」の三部作は、その前の短編とも連動して

いてよりいっそう深い感動が味わえる。


奥さんには悪いが、自分に置き換えたとき、こんな冷静に、

そして静かな生活を妻と過ごせるだろうか・・・。


現実に起ったらあまりに厳しいシチュエーションに気が動転

してどうにかなってしまうに違いない。


文中でもそれを知った直後とそれから気持ちが落ち着いて

くる過程、それでもしばしば訪れる悲しみを丹念に描く。


我々旦那諸氏よりも、もっとつらいのは子供たち。

息子たちの悲しみ、健気さがいやと言うほど伝わってくる。


今ある生活、家庭の大切さを改めて実感できるとともに、

思わず、がん保険に入っておかなきゃと痛感。

新堂 冬樹
背広の下の衝動

勝手に採点 ☆☆☆


中年サラリーマンなら誰もが抱える不平不満が増幅し

ついにそれが爆発するエピソードを描いた短編集。


そこまで行ってしまう行動は理解できないものの、彼ら

の心情は痛いほど分かる。


特に上司に理不尽に叱責され、妻からは不平不満、娘からは

人間扱いされない男は、典型的日本型会社人間。


彼は不幸な結末を迎えるが、煩悩からは開放されるだろう。


一方、娘の家庭教師と妻の間に、一方的な嫉妬を抱える旦那

の心境は全く同感できない。


結末もこじつけに近く、作り物のイメージが払拭できないので、

ひねりを効かせて欲しかった。


強烈なコンプレックスを抱える主人公たちが繰り広げるホーム

ドラマには心休まる暇がない。

奥田 英朗
空中ブランコ

勝手に採点 ☆☆☆☆☆!


中年のデブで実家の病院で精神科医を勤める伊良部。

変人の彼の下に集まる患者たちも、かなり変わった病

状で苦しんでいる。


空中ブランコに乗れなくなった空中ブランコのリ、1塁へ

の送球が出来なくなったプロ野球選手、小説が書けなく

なった女流作家、破壊衝動に駆られる精神科医など。


そんな彼らにぶっといビタミン注射を打ち、自分が存分

に楽しみながらも患者を開放に導く過程をユーモアた

っぷりに描く。


題名にもなっている「空中ブランコ」は、テレビドラマで

確か阿部ちゃんが変な精神科医を熱演。


ここで描かれる先生は、阿部ちゃんとはかなり隔たりの

ある不細工&デブだが、なぜか好感が持てる。


抱腹絶倒とまではいかないものの、相当ヘンテコな医者

の登場に拍手喝さい。


彼の物事に熱中する姿に感化され、気づかされ、立ち直る

きっかけを掴む患者たち。


強迫観念にとらわれる彼らを救う手立ては、ありのまま、

あるがままに生きる自然さ。


ストレスの多い現在社会で、そうやって生きることが一番

難しいが、それを体現する彼に共感を覚えるのだろう。

「魔王」

テーマ:
伊坂 幸太郎
魔王

勝手に採点 ☆☆


物事を深く、突き詰めて考える癖のある兄と気ままな生活を楽しむ

弟、そして弟の彼女の物語。


そんな兄に宿った不思議な力。宮沢賢治を愛好する新興政治家の

出現に危機感を覚え、その力を最大限活用すべく行動にでるが・・・。


正直がっかり。まず設定に新鮮味が感じられない。

両親のいない兄弟や仙台という設定からもう離れるべき。


ストーリー自体にも意外性や独創性に欠け、ストンと腹に落ちない

もやもや感が残る。


兄の意思が弟に引き継がれるわけだが、それもかなり中途半端に

終わりを迎える。え、これで終わりなの?という感じ。


政治家の描写、背景も説得力が足らず、彼をそこまで危険視する

意図がイマイチ伝わってこない。


独裁者=ファシズム=悪みたいな図式は、いまさらだし、平和

憲法改正論議というテーマも氏の小説の題材としては不向き。


政治的背景や信条と離れ、よりファンタジックな色彩の強い、深い

余韻を楽しませてくれる作品を望みたい。