宮部 みゆき
長い長い殺人

勝手に採点 ☆☆☆


保険金殺人の疑惑により世間の注目を浴びる男女。

しかし、彼らにはれっきとしたアリバイが。


事件にかかわる刑事や探偵、被害者などをそれぞれ

の財布から見た視点で描かれるユニーク作。


後の「模倣犯」に通じるところが多い事件設定。

世間の注目を浴びたいという過剰な自己顕示欲から

引き起こされる暴走。


翻ってみると、今のホリエモン報道の過熱といい、マス

コミの異常なまでの報道姿勢が世間に与える影響は

物凄い。


これを意識し、利用しようする輩が出没するのも必然か。


ただ文体として、財布を擬人化した手法を使ったところは

事件のリアル感に水を差す雰囲気が否めずいただけない。


場面設定も次々と変わってしまうため、被害者や加害者の

心理描写が中途半端で物足りず、じっくり読み込みたい人

には不向き。


ただ、それをきちっとやろうとすると「模倣犯」になる気が・・・。


鋭く賢い少年やベテラン刑事、有能な探偵、頭はいいが引き

こもりの犯人、目立ちたがり屋のフィクサーなど、後々宮部

作品で活躍する魅力的な人物が続々登場。


本編で不満に残った点が後の作品で見事に処理・解決され、

多くの人に支持される結果につながったともいえる、まさに

彼女の原点ともいえる作品。

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高村 薫
リヴェエラを撃て〈下〉

勝手に採点 ☆☆☆☆


東京で身元不明の若い外国人の男女が殺害された。

元IRAのテロリストだったジャックモーガンと恋人のリーアン。


なぜ彼らは異国の地日本にやって来たのか。

彼が追っていた白髪の東洋人「リヴィエラ」の正体とは?


英国警視庁、MI5、MI6、CIA、中国公安当局、警察庁らが入り

乱れて繰り広げられるスパイミステリーの決定版。


先日、上海の日本人外交官のニュースがあったが、諜報活動

の実態はシビアで生々しい。


国益という名の下に買収、恐喝、殺人、拷問などが日常的に

展開される世界。


本編でも壮絶ともいえる「リヴィエラ」をめぐる戦いが緻密な文章

構成と英国、日本を舞台にしたスケールの大きい背景で描かれ

ている。


下火になったとはいえ、IRAのテロ活動は記憶に生々しく、彼らの

過酷な生活ぶりが明らかになるにつれ、その苦悩・悲哀が伝わる。


ジャックモーガンという一人の若者の命をつなぎ止めるため、何人

もの尊い命を犠牲にした死のリレーはどこか物悲しい。


最後に守られた彼の息子だけが唯一の希望か。


戦争放棄、基本的人権の尊重など平和的思想も大切だが、国を

守るための隠れた努力、決して公にできない活動を蔑ろにしては

国の繁栄と未来はない。

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