新野 剛志
FLY

勝手に採点 ☆☆


目の前で彼女の佳奈を刺し殺された高校生・向井広幸。

逃亡する犯人・戸浦を捜し求めて果てしない復讐劇が始まる。


戸浦の娘やノンフィクション作家志望の若者の協力を得ながら

彼は目的を成し遂げられるのか!?


途中主人公が入れ替わってしまったり、時代設定が飛び飛び

になるなど文章構成に難あり。


おかげで感情移入ができず、せっかくの優れたアイデアが台無

しに。アイデアが文章に活かしきれていない典型例。


佳奈が殺害を依頼しそれを引き受ける動機も不可解。

あまりに現実性から乖離している感。


後半、若者が事件の真相に近づいていくあたり、緊迫感・臨場感

とも迫力は十分。


ただ、向井と戸浦の娘との心理描写や二人のやりとりが全く中途

半端になってしまっているところが難点。


あくまで向井をメインに追いつ追われつの心理戦・執拗な追跡劇

に徹した方が理解・共感しやすいはず。

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藤田 晋
渋谷ではたらく社長の告白

勝手に採点 ☆☆☆


ご存知サイバーエージョント社長の藤田氏がこれまでの半生を

振り返って書き残した異色ドキュメンタリー。


同じIT業界に身を置くものとしてぜひ手に取りたかった一冊。


日頃から彼のブログを読んでいるせいか、特別目新しい出来事、

エピソードは少なかったが、それでも上場後の株価低迷に苦しむ

経営者の姿が生々しく告白されて痛々しい。


たしかに現在は業績・株価も堅調で一見何の問題も抱えていない

ようだが、彼の結婚生活同様、いつ破綻に行き着いても不思議で

ないほど、この業界は競争が激しい。


そんな環境下で若手経営者として脚光を浴び続けるプレッシャーは

いかばかりか。他人の身ながら少し仕事はセーブした方がいいのでは?

と要らぬ心配をしてしまうほど。


好環境と自らの手腕によって若くして億万長者に上り詰めた彼。

これからどんなサクセスストーリーを積み重ねるのか見つめたい。

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伊坂 幸太郎
チルドレン

勝手に採点 ☆☆☆☆


閉店間際の銀行に滑り込んだら、すぐさま銀行強盗が登場し、

人質となってしまった大学生の鴨居と陣内。そして盲目の青年

永瀬も愛犬ベスとともに拘束されてしまう。


緊迫した篭城劇で永瀬が推理した犯人の正体とは!?


この事件で知り合った若者たちのふれあいを描く連作短編集。


いきなり銀行強盗の人質とは面食らったが、その後はいたって

爽やかな物語に仕上がっている。


特に家裁調査官になったその後の陣内や武藤の奮闘振りは微

笑ましくもなかなか感動的。


伊坂作品の特徴は舞台が仙台であることと、登場人物がとても

個性的であることだが、本作品もその手法を踏襲している。


ミステリーというよりは、青春群像的な要素が強く、肩肘張らずに

素直に共感でき楽しめる。

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内田 幹樹
査察機長

勝手に採点 ☆☆☆☆


ジャンボジェットの新米機長・村井が北米路線で操縦技術などの

チェック(査察)を受けることに。チェックの結果如何では、副操縦

士への降格や再教育プログラムの受講など厳しい現実が。


担当になった氏原は、村井の同期を機長への昇格試験で落とす

など、操縦士たちから恐れられているこわもてチェッカー。


到着地は悪天候の吹雪。最悪のコンディションのなか、村井は無

事合格点を得られるのか!?


さすがに何百人もの人命を預るパイロットは、飛行中はもちろん、

日ごろから強度のプレッシャーに晒されている。


そんな実態をリアルに描き出したヒューマンドラマ。


最新ジェット機は離陸と着陸のみが手動で、あとはすべてオートパイ

ロットに任せた自動操縦である。


だからこそ機長は、乗客を第一に考えた状況判断、操縦を心がけね

ばならないという氏原の言葉が重い。


彼のたったひとつの質問。

「最高齢と最低齢の乗客の年齢は?」


いったいこの質問に答えられるパイロットは何人いるだろうか。


人命よりも経済性、効率性が優先され、事故の頻発する航空各社。


そして技術に奢らず、自己の節制に努め、ひたむき訓練や試験を

受け続けるパイロットたち。


この偉大な先輩が書き残した教訓、アドバイスを誠実に実践して欲しい。

金城 一紀
SPEED

勝手に採点 ☆☆☆☆


お嬢様女子高に通う主人公・佳奈子が女子大生の家庭教師の

自殺をキッカケに大学内部で進行するスキャンダルに巻き込

まれる。


そこに登場するゾンビーズのメンバーたち。

彼らとともに彼女の死の真相と事件の黒幕に立ち向かう!


はじめは女子高生が主人公!?とテンションが下がったが、

これがバカにできない展開・おもしろさ。


同じ気持ちのいい高校生たちとの交流を通じて、少しずつ

成長していく過程がなんとも清々しい。


いまどきの大学生でそんなフィクサーまがいの奴がいるとは

思えないものの、まるっきり荒唐無稽な話でもない気がする

という設定のうまさ。


このさじ加減が難しいなか、フィクションとリアルが絶妙の

バランス。それと題名にもなっている小気味いいスピード感も○


肩肘張らずに素直に楽しめる気楽さがおすすめ。

白岩 玄
野ブタ。をプロデュース

勝手に採点 ☆☆☆


そこそこイケメンでカワイイ彼女もいて、秀才でクラスの人気者の

高校生・修二。でもそんな恵まれた境遇を作り上げるため、居心地

の良い生活を作り上げるため彼は「修二」役を演じているのであった。


そんなとき、クラスにダサくて不潔でデブの編入生・信太がやって

くる。ひょんなことから修二はこの信太を「野ブタ」として親しみやす

いクラスの人気者にするべくプロデュースを開始するが・・・。


人は誰でも本音を語らずに生きていけない。

人は誰でも人と深く付き合わないで生きていけない。


これらを真っ向から否定し、人との交流を避け、他人に本心をもらさ

ないように苦心するある若者の話。


メールや携帯電話が普及して、コミュニケーションツールには満たさ

れていても、それは所詮道具。


何をしたいのか、何をするのかがとても大事。


最近の中高生はこうした表面的で刹那的な関係に満足しているの

だろうか。


きっと大部分は違うのであろうが、それでもちょっと寂しい気がする。


修二は結局新しい生活の場を探す。

いつもいつもそうやって逃げ続ける気だろうか。


人を信じて時に裏切られたり、人に恋して時に失恋したり。

本気であるからこそ悔しくも悲しくもある。


子を持つ親としては、子供たちにそういった貴重な経験をたくさん

積んで欲しいと心から願わずにいられない。

「日暮らし」

テーマ:
宮部 みゆき
日暮らし 上

勝手に採点 ☆☆☆


「ぼんくら」で活躍した下町同心・井筒平四郎と甥の弓之助の活躍

を描く長編時代小説。


富商・湊屋総右衛門の血を引く植木職人の佐吉が音信普通だった

母の葵を殺害したかどで番屋に引っ張られる。


真犯人を突き止めるべく、岡っ引きの政五郎やおでここと三太郎と

ともに、その謎に挑むが・・・。


「ぼんくら」の続編なのでまずはこちらを読むのがお勧め。


佐吉や久兵衛、お徳の活き活きとした鉄瓶長屋での暮らしぶりに触

れた上で本編に進むと各々のキャラクターがくっきりと浮かび上がる。


個性的で憎めない登場人物たちに好印象を持つこと請け合い。


ストーリー的には、そこはかとない情緒や深みに欠け、単なる殺人

事件の追跡劇に終わっているところが惜しい。


幻術一座を使った巧みな演出も「巷説百物語」シリーズに酷似して

おり二番煎じの感。


葵が殺害される理由やその犯人の殺害動機にも必然性が見つけら

れず、唐突な印象がぬぐいきれない。


このシリーズに人が死ぬような血なまぐさいシーンは似合わない。