大阪の「阪」は常用漢字外
平成20年1月28日、文化審議会国語部会は、大阪の「阪」、熊本の「熊」、鹿児島の「鹿」、山梨の「梨」、奈良の「奈」、栃木の「栃」、愛媛の「媛」などを新たに「常用漢字」に加える案を了承しました。
そうです。これらの漢字はこれまで常用漢字に含まれていなかったのです。
当用漢字と常用漢字
この「常用漢字」というのは、昭和56年に決められた漢字使用の目安で、現在1945字が定められています。これは、昭和21年に定められた「当用漢字」への批判が高まる中で決められたものです。
「当用漢字」が、使用できる漢字の数を1850字のみに制限するという漢字使用の上限を定めたのに対して、「常用漢字」の方は、あくまで使用の目安とされ、その性格を「使用の制限ではない」、とした点で、実に画期的な前進でした。
しかし、この「常用漢字」。いかに使用の目安であるとは言っても、これまで県名に使われている漢字も入っていなかったというのはやはり問題です。
しかも人名用に使える漢字ということになると、未だに制限が付けられています。その数、僅かに284字。
折角いろんな漢字があるのだから、もっと自由に使わせてほしいと考えるのは、果たして私だけでしょうか。
子供の視点、大人の視点
もちろん、これに対しては「漢字が多すぎると憶えるのが大変だ」という批判もあるでしょう。私も小中学校のときは、「漢字なんかなくて、ひらがなだけならどんなに国語の勉強がラクだろう」と考えていました。
しかし、今はまったくそうは思いません。勉強が嫌いなのは子供の特権(自分だけ?)ですが、大人には別の視点があるのです。大体、ひらがなだけの単行本、ひらがなだけの新聞なんて、考えただけでぞっとするではありませんか。
『平成新選百人一首』の著者の一人である桂重俊先生(東北大学名誉教授)は、次のように述べられています。
「昔は新聞雑誌にルビがふってあり、学校で文字を習わなくても、読書さえしていれば文字を覚えたものです」
国語審議会が、昭和21年にルビを廃止し、当用漢字を制定、最終的には漢字を廃止し、表音文字だけの国語(全て平仮名かローマ字だけにする)を目指すコースを選択したことは、既に書きました。私は、このルビをこそ大いに活用して、漢字を使うべきだと思っています。
明成社の国語問題への立場
国語問題、それも漢字の使用制限の話ばかりが、長くなってしまい、既にご存知の方には退屈な話になってしましたが、明成社の書籍づくりの基本的な立場について、知っていただきたくて敢えて書かせていただきました。
仮名の問題、略字の問題は、また別に機会があれば書きたいと思っています。
明成社の国語問題に対する基本的な立場は、正漢字、正仮名を用いた伝統的な表記を理想とするものです。
しかし、現実的には、正漢字、正仮名で記述された本は、取りつきにくく売りにくいという事情があり、また戦後生まれの著者の方や我々編集者自身が自在にこれを使いこなすことができないなどの問題もあります。ですから、明成社の書籍には、全編新漢字、新仮名で書かれたものがあり、正漢字、正仮名を用いたものもあり、両方がまざったものもあるのです。
『平成新選百人一首』は、もちろん正漢字、正仮名の伝統的な表記で書かれた明成社の理想的な出版の一つであります。
(浮羽博幸)
追記
『平成新選百人一首』に収まり切れなかったが、どうしても捨てがたい秀歌を、小堀桂一郎先生が解説付きで『和歌に見る日本の心』という大著にまとめておられます。
和歌を中心に展開される日本精神史は正に壮大です。併せてお読みください。
『和歌に見る日本の心』
http://www.meiseisha.com/katarogu/wakani/wakanisyousai.htm