FLOWERS~ めぐみの夢恋語り~・ブログで小説やってます☆

ようこそ、いらっしゃいませ。
キレイなお花で一杯の庭園のように、たくさんの「素敵」な出来事を綴ったブログになっていれば嬉しいです。
小説がメイン(のつもり)ですが、そのほかにもお好みの記事があれば嬉しいです。どうぞごゆっくりご覧下さいませ。








☆お陰様で、「東めぐみ」は今年で筆歴21年を迎えました。アクセス数に関係なく、自分の書きたいもの、伝えたいことを自分の言葉で紡ぎ出してゆけば良い。そして、それを読んで「何か」を感じたり、良かったと思ってくれる人が一人でもいれば良い。それが私の夢であり、究極の目標です。

筆歴24年の大きな節目を迎えた今年、「一人でも多くの方に自分の作品を読んで頂きたい」という初心に戻り、これからも書き続けてゆこうと決意も新たにしています。





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第四話 砂漠の蒼玉姫【サファイア】

 ~何故、私はあなたを愛してしまったの?

 あなたは私から大切な家族を奪い、祖国を

 攻め滅ぼした憎い敵なのに~。

  

 砂漠の小国夏陽(かよう)の国王の一人娘であるフィメリアは

「砂漠に落ちたサファイア」と吟遊詩人からその美貌を讃えられ

 る可憐な姫だった。

 しかし、彼女の美貌を噂に聞いた元(モンゴル)帝国の皇帝が

 フィメリアを後宮に入れたいと夏陽国王に申し出て―。

 何度も拒絶されたモンゴル皇帝は激怒して、冊封国であった

 高麗の王に夏陽を滅ぼすようにと命ずる。

 夏陽国王夫妻と兄皇太子と幼い弟王子は自刃、炎の中で壮絶

 な最後を遂げ、フィメリアは一人、焼け落ちる城から落ち延びた。

 混乱を来し、逃げ惑う人々の中で彼女を助けてくれたのは、「王 讃」と名乗る凛々しい青年だった。

 

「それで、高麗や元に連れてこられた人は、どうなったの?」
スエンが溜息混じりに呟いた。
「姫さまは高麗の城深くに囚われておいでだったから、何もご存じないんですね」
そのひと言はフィメリアの夏陽の姫としての矜持を鋭く突いた。むろん、優しいスエンはその時、フィメリアを責めるつもりで口にしたのではなかった。が、夏陽の王族でありながら、フィメリアはこれまで民のことに殆ど想いを馳せたことはなかったのだ。
もっとも、それは周囲が務めてフィメリアの耳に夏陽人の惨状や動向を入れないように情報を遮断したことも原因ではあった。だが、それは言い訳にはならない。世羅の父は各国を旅する商人だから、世羅を通じて夏陽のその後を知ろうと思えばできない話ではなかった。
暗澹とするフィメリアの耳を、スエンの悲痛な声が打つ。
「異国に強制連行された夏陽人は殆どが奴婢に身分を落とされたといいます」
「そんな―」
フィメリアの唇が震えた。
かつて砂漠で栄えた王国、フィメリアではなく、その高い文化を誇った王国こそが〝砂漠の奇蹟、至宝〟と吟遊詩人たちに謳われた時期もあったのだ。
その華やかに栄えた国で穏やかに暮らしていた人々が奴隷として異国で辛い想いをしている―。フィメリアの胸に苦い後悔と自責の念が湧き上がった。
「スエン」
フィメリアは戦慄く声で呼んだ。
「はい、姫さま。スエンはここにおりますよ」
「あなたにだけは正直に打ち明けるわ。スエン、私はこれまで我が身のことしか頭になかった。奴隷に落とされて異国で強制労働させせられている民のことを考えようともしなかったの」
王族、王の娘として、民の安全とゆく末をいちばんに考えるべきだった。なのに、自分のことばかり考えて、ただ我が身の陥った境遇を嘆いてばかりしかできなかった。そんな自分がつくづく情けない。
殊にフィメリアは夏陽のただ一人生き残った最後の王族だ。その肩に背負ったものは計り知れなく重い。夏陽の民のすべてがこの身にかかっている。今、この瞬間も遠い地で辛い想いをしているであろう同朋をフィメリアは想った。
スエンは思い悩むフィメリアに真摯な眼を向けた。
「どうかご自分をお責めにならないで下さいまし。フィメリアさまがお元気でいらっしゃる限り、あたしたちには帰るべき場所があるんです。あなたさまは夏陽の王のご息女ですから、あなたがいるところがあたしたち夏陽人の帰る故郷です。いつか、一緒に夏陽に帰りませんか、姫さま。砂漠にまた昔に勝るとも劣らない王国を築くんです」
「そうね。きっといつか帰りましょう」
二人ともに、その日が来るのは難しいと判っていた。何の力も後ろ盾もない亡国の姫がたった一人で王国再興を果たすのは夢のような話だ。仮にフィメリアが力を持つ男の妻となれば、実現できないことはないだろう。
だが、元皇帝の想い者になってまで夏陽を再興することが父の願いだとは思えない。
フィメリアはそのままスエンに匿われた。三日が流れた。四日めの朝、近くまで買い物に出かけていたスエンが血相変えて戻ってきた。
「姫さま、落ち着いてお聞き下さいね」
スエンはよほど急いで戻ってきたようで、荒い息を吐いていた。
「何かあったの?」
駆け寄ったスエンに水瓶から水を汲んで渡すと、スエンはゴクゴクと喉を鳴らして飲み干した。
「高麗王の手の者が町のあちこちをうろついてますよ」
「―」
フィメリアは唇を噛みしめ、うなだれた。
ついにその瞬間が来たのだ。宮殿を逃れてから五日が経過している。考えてみれば、よく今まで見つからないでいたものだ。
「とにかく見つかっては元も子もありませんから、絶対に外には出ではなりませんよ」
スエンの話では、この家の近く、つまり町外れまで探索の手は及んでいるという。最初は都の中心を探したが、見つからないので捜査の網をひろげたということだろう。
煙が上がって眼をつけられたくないというので、夕飯時、火をたくこともできない。灯りも極力落として、目立たないようにした。
その日の夜は干しパンと干したナツメヤシ、燻製肉と冷めたスープが並んだ。どれも保存食ばかりで温かいものではないが、夏陽城きっての名料理人と呼ばれたスエンの作ったものだけに、冷めていても十分に美味しい。
フィメリアは微笑みながら、ここのところの日課となったようにスエンと色々な話をしながら夕食をありがたく食べた。二人の交わす話の殆どはフィメリアが子どもの頃、夏陽で暮らしていた時分の想い出ばかりだった。
スエンは良人を早くに亡くし、料理番をしながら女手一つで息子を育て上げた。夏陽と高麗の戦の際、息子は兵士として戦っていたが、指揮官の眼を盗んで脱走、都に残っていた妻子やスエンを連れて高麗を目指したという。敵国ではあるけれど、他に行く当てもなかった。
夏陽人は東洋系ではないので、どうしても高麗人とは容貌が違う。眼の色、髪の色、膚、どれを取っても異国人であることは丸分かりで、最初は随分と冷たい眼で見られた。が、どこの国でも下町で暮らす貧しい人々は皆、助け合って生きる。その日その日を暮らすのがやっとの庶民は互いに助け合って生きなければ生きてゆけないからだ。
最初こそ、迫害されたこともあったが、その中、スエン一家は次第に高麗の下町に溶け込んでいった。スエンの息子一家はこの近くに一軒家を借りて細々と暮らしているようだ。三人の孫を持つ祖母でもある彼女は、孫の成長ぶりなどについても相好を崩して語った。
たまたま一家が高麗語に通じていたことも幸いだったといえよう。商人だったスエンの良人は若い頃の一時期、数年間を高麗で暮らした経歴の持ち主であった。
スエンの作る料理は世界一だ。どこを探しても、これほどの料理を作る女はいないだろう。フィメリアは子どもの頃から、スエンの作る料理がいちばんだと信じていた。
なのに、何故だろう。今夜は不思議と食が進まない。胃の腑の辺りがざわざわとして軽いむかつきがあった。
スエンが気遣わしげに言う。
「やはり、お口に合いませんか? こんな寒い時期ですから、温かいものがお出しできたら良いのですが、火をたくと高麗の兵に目立ってしまいますんでねえ」
困ったように言うスエンに、フィメリアは笑った。
「大丈夫、とても美味しいわ。スエンの作るものは冷めてもご馳走なのね」
昨日までのフィメリアなら、スエンが愕くほどの食欲を発揮して、すべて平らげていただろう。冷めた料理が原因なのではない。
明らかに、フィメリアの身体の調子が狂っているのだ。
「うっ」
突如として烈しい嘔吐が来て、フィメリアは手のひらで口許を覆った。
「姫さま?」
スエンが狼狽し、フィメリアを助け起こした。
「大丈夫ですか?」
「ごめんなさい。折角のご馳走なのに」
「そんなことはどうでも良いんですよ。どうもずっとお具合が良くなさそうなので、心配していたんです」
スエンは事もなげに言うと、フィメリアの背を優しくさすった。それでも吐き気はなかなか治まらず、フィメリアはしばらく咳き込み続け、食べたものを少し戻してしまった。
申し訳なさがるフィメリアにスエンは笑って首を振り、手慣れた様子で吐いたものを片付けた。
「姫さま」
スエンが呼んでいる。
衣服も汚してしまったので、着替えた。宮殿から着てきた女官の制服はあまりにも目立ちすぎてしまうので、今はスエンの息子の嫁の服を借りている。スエンが持ってきた衣服に着替えていると、ふと問われた。
「吐き気がするようになったのは、いつからです?」
フィメリアは眼をまたたかせた。
「さあ? あ、でも、宮殿を出る少し前から、時々、こんなこともあったかしら。たいしたことはないから、気にしてなかったの。少し休めばすぐに直るし。今夜のように長く続いたのは初めてよ」
「またご無礼を申しますが、姫さまは高麗の王さまと褥を共にされたんですよね?」
その質問に、フィメリアは耳まで朱を散らした。
「スエン、それは」
フィメリアの初な反応に、スエンはすべてを察したらしい。曖昧に笑った。
「無理にお応えにならなくて良いですよ」
「姫さま、あたしが思うに、もしかしたら姫さまは―」
スエンが言いかけたのと、家の戸が乱暴に外から叩かれたのはまさに時を同じくしていた。
「おい。開けろ」
男の声がした刹那、スエンとフィメリアは顔を見合わせた。スエンが頷き、フィメリアは部屋の片隅に身を寄せる。
スエンはフィメリアが隠れたのを見届け、さっと戸を開けた。
「何か、ご用ですか?」
「今、夏陽の姫が王城から脱出して逃亡中でな。探索しても見つからないので、こうやって一軒一軒検めている。悪いが、中を検めさせてくれ」
役人らしい男が首を傾げた。

 

 

 


 

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