(承前)


秋房日記-SN3F01880001.jpg

いたって普通のカツ丼に見えるでしょうし、全くそのとおりです。しかし、この「いたって普通」ということがいかに得がたいか、カツ丼好きで、当世カツ丼事情に歯がゆい思いをしている方なら理解していただけるはずです。つまり、何度か言及していますが、最近のラーメン店はラーメンに特化し、丼物から撤退する傾向にあるので、こういう大衆的カツ丼に出会う機会はかなり少なくなっています。


値段は690円。700円ではありません。洋の東西を問わず、よく使われる値下げの手法じゃないかと言われるかもしれませんが、この店の-10円に私は、そこはかとない温かみを感じてしまいます。そう思わせておいてくださいよ。


統計を取ったわけではありませんが、経験上、カツ丼は850円で出しているところが多いと思います。この「カツ丼 850円」を、私は全く評価しません。「850円だから、このくらい手間をかけて当然」と作り手は思い、「850円だから、このくらいうまくて当たり前」と客は思う。いわば「順接」のカツ丼。そこに感動はなく、予定調和があるのみです。


この店の「カツ丼 690円」はどうか。おそらくそのコストのかなりの部分を「肉の厚み」にかけています。1cmくらい。この作り手の選択を私は全面的に支持します。カツ丼の本質は、実は肉の「質」ではなく「厚み」にあると思うからです。厚みあっての満足感である。皆さんにも異論はないでしょう。


たしかに肉質は「カツ丼 850円」の方がよいでしょう。そうでなければ変です。だが、客が求めているのはそこではない。


この店の「カツ丼 690円」は言わば「逆接」のカツ丼です。そして、「逆接」こそが感動を生むのです。


場所は、

東京都東村山市秋津町5-13-7

です。

AD