アルゼンチンとIMFの論争 | 肉団子閑居為不善

アルゼンチンとIMFの論争

la_causetteの小倉さんは、新自由主義の恐怖の実例として、アルゼンチンの例を出されてきた。またも南米の哀れな新自由主義の被害者があらわれたようだ。

だが、小倉さんの認識にも、若干の問題もないとは言えない。たとえば2000年2月にIMFがアルゼンチンに出した勧告がここにある。

新自由主義=ワシントンコンセンサスとするとIMF=新自由主義ということになるわけだけれども、これを見るとIMFは失業対策もしつこく求めている。軍の退役を減らして失業率を減らす辺りは、最近日本でも地方自治体がとりくんでいる失業者を公務員にするアイデアと同じだ。どうも新自由主義は失業を垂れ流して市民を困らせる、という小倉さんの世界観と現実の世界とはすこしずれがあるようだ。

アルゼンチンとIMFとのディベートのもようはJICAが2006年にまとめたこれに詳しい。

気になった点として、先のIMFの勧告にもあったが、アルゼンチンは脱税天国だったようだ。裁判所が命令しても払わないし、政府も本気になって取り立てない。ここにはなんらかの政治的腐敗が関与していた可能性がある。他にもこのレポートを読む限り、アルゼンチンの政府の腐敗の問題だけでなく、「新自由主義」とレッテル張られている人々が本当に要求していることをきちんと理屈で理解して実行していなかった。

ただ格好だけ民営化しても、民間業者が育ってきてこれと競争し最適化が行われないとダメだということだ。結局、皮相的な構造改革のメッキはついに剥げ、デフォルトという形で露呈した。なんか、どこかの国の行く末を見るようでちょっと怖かったりもする。

むしろ農産物や地下資源の国際価格上昇に助けられてデフォルト後の経済再建が進んでいるようにも見える辺り、アルゼンチンもまた、「新自由主義」の中にあって、その恩恵にあずかっているのはまちがいないようだ。