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先日、社会心理学者の岡本浩一さんの著書で、興味深い話に触れました。

ノーベル賞を受賞された益川敏英博士による

「ノーベル財団の受賞者のもてなし方には、日本の茶道のもてなしに共通する特徴があるのではないか」という話です。



ノーベル賞受賞者は、家族や同僚を同行者として伴う枠が各自10余名あり、受賞行事は、式のほかに、晩餐やオペラなど1週間ほど続くそうです。


そして、それぞれの時刻は、余裕をもって設定されていて、ときには半日ほど空くこともある。


ところが、その合間の時間に同行者の人たちなどが受賞者を囲む会やミーティングをしようとするのを、ノーベル財団が厳しい調子で阻止するそう。


報道陣などについても同じで、行事の合間や移動の時間の受賞者への取材などを、かなり排除する仕組みになっているのだというのです。


その中で、益川博士は、一見ただ空いているだけのように見える時間も、ゲストにとって必要な「間」として積極的に企図されている時間だとお感じになったという話で、ノーベル財団のその「もてなしの心」が日本の古いもてなしの型である茶事の伝統に似ていると感じられたということです。


益川博士いわく

「目に入るところに、時計がほとんどなかったのですよ。あれは、かなり強い意図で時計を排除しているみたいだったな。」と。




茶道の正式なもてなしである茶事で、客は、あらかじめ亭主から招待の手紙を受け取り、返事をしたため、その日までの時間を待ちます。


茶事の当日がやってきても、すぐに茶室に入って茶の点前が始まるわけではなく、待合や露地、腰掛や蹲などの景色や空間を味わう時間があります。


席入りした後も、中立と言って、一旦茶室を出て腰掛で、次の席入りを待つ空き時間があり、亭主は、その空き時間に、客の心が安らぐような工夫を考えます。


空白の時間さえも充実した空白にしてもらおうというもてなしです。


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月に一度、日本橋コレド室町でのビジネスマンのための夜の茶会では、

席入りの前に、時計や携帯電話などのデジタル機器を鞄の中にしまっていただいています。


現代のビジネスマンの方たちは、

オフィスにいても
外を歩いていても
自宅にいても
しかしたら眠る直前まで
目を覚ました瞬間から

交渉相手との約束
仕事の締切
電車の時刻など
いつも時間と通信手段に追われていると思います。


そうした生活の一部に、

時間そのものの感覚を手放して
いまここだけの自分をみつめる
充実した空白の時間が

心身を蘇らせるようなひと時となれば嬉しいです。


益川博士のエピソードを記す岡本浩一さんの著書を読み、私は、茶道教室の生徒さんや夜の茶会に参加していただく皆さんに、その空白の時間をどんなふうに過ごしていただこうかと思いを巡らせています。


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