一昨日(22日)のことです。ある野菜好きな方から(ここでは○○様とします)のメールが届きました。このような内容でした。


>以前、大手のメーカーではエチレンとか、ガスを使っているとうかがいました。


> すべてのモヤシがマメの力といっても差し支えない表現かどうか、いかがでしょうか?


 私はもやしの定義として、HP上


『原料の豆だけを養分として、自らの成長力で育つ野菜』


と断言してますので、これは非常にお応えしがいのあるご質問と判断して、普段以上に気合を入れて次のように返信しました。


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 エチレンに関しては、私のHP や、ブログ でも書いてある通り今やもやし栽培には欠かせない物質になっています。大手メーカーだけでなく私のところでも、少量ですが栽培室の空気に混ぜています。もやしの形を整えるのに必要な処理ということです。
エチレンはもともとは植物が自ら持っているガス状の植物ホルモンであります。

 エチレンの影響を受けると、(私の経験したところでは)もやしの場合だと伸びる成長が抑えられ、茎が太くなりさらにその状態で水をたくさん与えると根が短くなります。成長を促すというより、植物の組織を変化させる作用があります。もやし屋はそのエチレンの生理作用を人為的に利用しています。

 ただしです。エチレンは植物の成長に影響しますが、植物の栄養になることはありませんので、

「もやしは豆の力で育つ野菜といって大丈夫です。」

形さえ拘らなければエチレンがなくてももやしは作れるからです。

 エチレンはオーキシン、サイトカイニン、ジベレリンといった植物ホルモンの一つでしかありません。植物の生理機能に変化を促しますが、エチレンそのものが栄養ではないのです。

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 エチレンのことは、多くのもやし屋さんは一般の人に話しません。-中略ー


ただもし○○様が今後もやしの話をするときには、今まであまり表にでることなかった

「エチレンともやしのかかわり」

を伝えてもよいのではないかと思います。食の正しい情報とはそういうものだと思うからです。


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 するとややあって○○様からご返事をいただきました。素晴らしい内容でしたので一部紹介しつつ私の意見も挟んでみます。


>(エチレンについて)ある程度恩恵を受けていながら、見て見ぬふりよりも正しい知識を学ぶことの方が重要と私は思うのですが…。


・・・・同感です。「知る」ということは必ずしもその人の都合の良い情報だけではありません。しかしその新たな事実を許容することが「知る」ということだと思うのです。伝える側も、自分の作るものの方向性に自信を持っているのなら、拒絶反応を恐れずに伝えるべきだと思います。そこで初めて作る側、売る側、使用する(食べる)側の信頼が築けるはずです。



>知らないからこそコワイと思うのでしょうから。


・・・・「知らない=遠い=未知なものに対する恐れや不信」という図式が、国内の食の情勢に蔓延っている感があります。現状打破の為にまずどちらかが近づくことが必定といえますが、何か利権に絡んだ大きな力がその動きを阻害している気がします。


>安全を人に任せるのが当たり前といった風潮なのでむずかしいかもしれませんね。


・・・・○○様がおっしゃるには、欧州などは国民が大変食に対して感心が高く、農薬の扱いでも、人々はよく知っていて納得の上で購入しているそうです。食は自らの命の糧となるものですから、本来ならば例えば携帯電話の扱いに長けるよりも、そのエネルギー、知識欲を食にあてるべきだと思います。


 私も食が軽んじられていることに危機感を抱いてました。岩村暢子さんの著書 にあるように食の基本を作る家庭での食の乱れが非常に顕著になっています。すべては食に対して気持ちが離れている結果だと思うのです。


 エチレンという一つのホルモン物質を通しての今回のやりとりは、作り手として有意義なものでした。そういった一つ一つの疑問を通じて作り手と、食べる人が近づくきっかけになること、たとえ人によってはご理解されなくとも私は望んでいます。

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