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日本を夢の持てる国へという思いで財務省を飛び出しました。国政にも挑戦、様々な政策論や地域再生の活動をしています。21世紀は日本の世紀。大震災を経ていよいよ世界の課題に答を出す新日本秩序の形成を。新しい国はじめに向けて発信をしたいと思います。


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 戦後の米国経済繁栄のパターンは、基軸通貨国の繁栄パターンでした。

 それは自ら国際収支の赤字を出して世界に米ドルを供給し、自国と世界経済との間に拡大均衡の好循環をもたらす道でした。

 しかし、貿易赤字を損失(ロス)とするトランプ大統領の発想は、米国が基軸通貨国の特権と責務の両者を放擲することにつながるものです。世界経済の縮小均衡への道です。

 自国経済への信認さえ維持すれば、基軸通貨国は国際収支の赤字を伴ってこそ高い成長を実現できます。国際的な開放経済は「双子の赤字」を拡大したレーガノミクスがそうだったように、本来、トランプノミクスが成功するためのマクロ的な条件であるはずです。

 

●基軸通貨とは何か

 では、基軸通貨特権とは何なのか。それは、貨幣というものの本質にある自己循環論法の究極に位置づけられる世界唯一の特権です。

 人間社会とは、いずれも他に存在根拠を持たず、あたかもトートロジーの如く自らにしか存在根拠のない、専ら自己循環論法によって成り立っている次の3つを使うことによって成り立っている社会です。

 一つは「言語」。「ウマ」と言葉を発しても、それはただの空気の振動ですが、その空気の振動で誰もが「馬」を認識すると皆が思うから、「馬」という言葉が成り立っています。

 もう一つは「法」。誰もが守ると皆が思うから自分も守る。

 そしてもう一つが「貨幣」です。特に紙幣はただの紙切れに過ぎませんが、それでも、「皆が受け取ると皆が思うと思うから自分も受け取る」。これが貨幣の本質です。

 金本位制の頃は金と交換されるということが一応、貨幣の根拠でしたし、今は政府が、この紙きれは貨幣だと法定することで貨幣になっているということはありますが、それでも、こうした自己循環論法的な根拠がなければ貨幣として機能しません。

 そもそも国家には、政府や君主だけが持つ貨幣発行特権(シニョリッジ)があります。

 かつて欧州では、モーツァルトの「フィガロの結婚」にも出てくる領主様だけの特権ととして、領内の民が結婚する際に新婦の初夜の相手を領主様がするという特権があったそうです。貨幣発行権とは、こうした特権に擬せられるような、支配者のみが持つ高権です。

 政府は法定政府紙幣を刷ろうと思えばいくらでも刷れます。江戸時代には藩札が各藩では流通していました。しかし、その価値は国家や君主の信用の度合いが制約します。

 これに対し基軸通貨は、ほぼ無限の信用力があるといえる、自己循環論法の究極です。

 ケインズの言う「美人投票」とは、誰が最も美人なのかを投票で決めるのではなく、美人として最も票を集めた美人に投票した人が勝つというゲームですが、それと似ています。

[図1]

 

 第二次大戦後、米国が世界システムの運営者の地位についたことが米ドルを基軸通貨として確立させました。そして、ニクソンショック後は金の裏付けも不要になり、米国は国際収支の赤字を通じて、極論すれば、いくらでも世界に流動性として米ドルを供給できるようになりました。

 ただ、いくらばらまかれても通貨価値が維持されるためには、どれだけ米ドルが供給されても、米ドルに対する需要は尽きないよう、世界に供給されたドルにとって魅力的な投資先、運用先が必要です。

 それが米国経済への信認であり、自由で使い勝手が良くて開放的な金融資本市場の存在です。

 

●円の国際化が直面した限界

 わが日本国も、かつて円の国際化を進めていましたが、私が大蔵省でこれを担当していた1990年代にとった措置は、まさに円の運用先としての日本の金融市場の魅力向上でした。

 具体的には、非居住者が保有する国債利子には源泉所得税を非課税にして外国人が投資しやすくしたり、FB(今は財務省証券と呼ばれます)の発行を、それまでの日銀引き受けから、全額市中公募方式にして金融市場の層を厚くするといった措置でした。

 しかし、それで実際に円の国際化が顕著に進展したかといえば、そうとはいえません。

 通貨の国際化とは、その通貨が、その国以外の第三国間の取引で広く使われるようになることです(例えば、中国とシンガポールとの間の取引で円がつかわれるなど)。

 基軸通貨は、そうした国際通貨の中から一つだけ、前記の自己循環論法が成り立つまでに国際化した通貨が占めることになる地位です。

 そこまでいかなくても、日本経済の地位に比して円の国際化は不十分であり、それはかつての大蔵省の責任だと批判されることがあります。

 ただ、現実には、日本がアジア経済圏の盟主的な地位を占める国であるとか、円が国際的な戦略物資の決済通貨であるとか、何らかの実体経済面の条件が整っていなければ、円の国際化には限界があることを当時、痛感しました。

 かつて米国が、日本が唱えたAMF(アジア通貨基金)構想を潰したなどと言われましたが、それが本質ではありません。もちろん、中国にAIIBを作られるぐらいなら、あのときAMFを認めておいたほうがよほど米国にとって良かったようには思います。

 では、SDR構成通貨入りを果たした中国人民元はどうでしょうか。SDRに入ったことそれ自体にあまり実体的な意味はありません。むしろ、中国が人民元の国際化への強い意思を持ちながら、実体経済面で「一帯一路」構想を推進していることに注目すべきです。

 

●人民元の国際化と中国の野望

 リーマンショックの頃、私は個人の立場で、中国に行って通貨金融の政策関係者たちと意見交換をしたことがありましたが、そのときに彼らが言っていたのは米ドル基軸通貨体制への疑問でした。

 米国債を売却したいが、どう思うかと問われた私は思わず、そんなことをしてドル暴落で世界経済が混乱したら、世界経済に依存して発展してきた中国経済にもマイナスではないかと言い返さざるを得ませんでした。その直後、人民銀行が米国債売却方針を撤回したとの記事を読んでホッとしたことを覚えています。

 それはさておき、中央銀行のバランスシートでみれば、一国の通貨(ベースマネー)の裏付けとなるのは中央銀行の資産です。円の場合は日銀保有国債といえますが、人民元は人民銀行が持つドル準備が裏づけという形になっています。

 人民元を米ドルに依存しない通貨にしたいという願望が、もともと中国にはあるのでしょう。

 その後、中国は「東アジア共同体」や「アジア共通通貨」を掲げる鳩山民主党政権を大歓迎していましたが、私の脳裏によぎったのは、「その共同体の盟主とは中国であり、共通通貨とは人民元だ」という中国側の潜在的な思いでした。

 日本は将来、人民元を使う国になると言うのか…。

 北京のホテルでインターネットを使おうとしたら、使用料金が¥18.00と表記されていたので一瞬、ずいぶん安いなと思いましたが、これは18円(Yen)ではなく、18元(Yuan)。

 実は、「円」も「元」も、もとはといえば「圓」で、これを簡略化したものだそうです。さらにもとをただせば、紀元前1500~1000年頃の商(殷)の時代に貨幣として使われていた「あこや貝」の「貝」が「圓」の起源だそうです(図2参照)。

 どうも、漢字文明圏で捉えれば、貨幣は中国由来という意味で、そこにはアジア共通性があるということになってしまいます。

 ちなみに、「人民元」という呼称は日本独自のもので、中国では日本円のことを「日元」と言うそうです。

[図2]

 

 2017年の今年、1917年にウィルソン大統領の米国が第一次大戦に参戦して以来、百年続いたパクス・アメリカーナは終焉すると言われています。「米国第一主義」、「米国を代表するのが私の仕事であり、世界を代表することではない」(米議会演説)と明言するトランプ大統領のもとで…。

 かたや中国は、今世紀当初に言われた「世界の工場」から、今や、「世界の市場」そして「世界の銀行」へと進み、1949年の中華人民共和国の建国から百年を経る2049年には、米国を凌駕する「世界最高水準の国」となって「アジアの盟主」となることを目指しているようです。

 それに向けて、失った領土を全て取り戻す、2049年の19年前の2030年までに、尖閣、南シナ海、台湾などを含めて、やることをやる。南シナ海を中国にとってのアジアの地中海とする。「地中海」とは、その地域の支配のために絶対に支配しなければならない地域のことを意味します。

 経済面では「一帯一路」を進めるべく、「6大経済回廊」の開発構想を推進し、これを支える国際協力の枠組みとして、上海条約機構やAIIBなどの金融機関を位置づける。

 こうした中国の野望は、中国人の専門家からうかがったものですが、それをまとめたのが[図3]です。

 

日本はいずれ、米ドルか人民元かの究極の選択を迫られるのでしょうか。

 

●価値観外交と「規範の先導者としての日本」

 こうした中国の長期戦略を前に、米国がトランプ大統領のもとで、自由、民主主義、基本的人権などの人類普遍の価値を世界に唱道するウィルソニアン的米国ではなくなるとすれば、米国に代わって国際秩序を唱道する国はどこになるのか。

 特にアジアにおいてその役割を果たす国はどこかと問われれば、それは日本の役割だということになってくるでしょう。

 かつて第一次安倍政権の日本は「価値観外交」を唱えました。それは「普遍的価値(自由主義、民主主義、基本的人権、法の支配、市場経済)に基づく外交」です。

 そして「自由と繁栄の弧」が唱えられ、それは中国包囲網だとも言われました。

 しかし、「戦後レジームからの決別」すら言わなくなった第二次安倍政権は違います。安倍外交は価値観外交を捨て、勢力均衡と現実主義が基本となりました。

 ただ、それは価値観外交の部分は米国が代行するとの期待が前提にあります。

 確かにオバマは価値観を提唱しました。しかし、現実的なパワー行使を伴いませんでした。トランプは価値観外交を捨て、パワーを取り戻すとしており、今のところ中国には厳しい態度で臨んでいます。

 しかし、相対的な米国パワーが低下していく中で、米外交が自国第一の現実主義になるのは、日本の外交基盤を不安定にします。もし、長期的に発展する中国との実利的関係を米国が重視するようになれば、日本の頭越しで、米中国交回復のニクソンショックのときような事態が起こる懸念もあるとの声もあります。

 いずれにしても、日本は自ら、トランプを説得しながら価値観外交もせざるを得なくなるでしょう。より大きな視野で世界における立ち位置を定めていかねばなりません。

 その際、今般の日米首脳会談でも確認された安倍総理との個人的な信頼関係は、世界全体にとっても貴重な財産になります。早速、国際社会の中では、そのような日本に期待する声も出ているようです。日本の外交力は倍増することになります。

 ここで問われるのは、これまで米国との協調のもとでこそ日本が発揮してきたルール形成やアジェンダ設定での指導力を、日本が自ら主体的に行使できるかどうかでしょう。

 それは日本が、世界の経済システムを先導し、「なるほど、日本だ」と見られる国になり、世界かくあるべしとの「規範の先導者としての日本」になることを意味します。

 ただ、上記の「普遍的価値」はいずれも、もともとは欧米が生み出したものです。

 私が大事だと思うのは、そうした価値だけでなく、この際、そこに日本らしい何かを加えた新しい価値を普遍化する営みだと思います。

 この点については機会を改めて論じてみます。

 

松田まなぶのビデオレター、第56回は「基軸通貨と価値観外交」。

チャンネル桜2月21日放映。

 

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