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日本を夢の持てる国へという思いで財務省を飛び出しました。国政にも挑戦、様々な政策論や地域再生の活動をしています。21世紀は日本の世紀。大震災を経ていよいよ世界の課題に答を出す新日本秩序の形成を。新しい国はじめに向けて発信をしたいと思います。


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 1980年代の偉大なる大統領レーガンのレーガノミクスに擬せられることが多いのが、トランプ大統領のトランプノミクスです。

 ただ、財政と国際収支の「双子の赤字」を拡大したレーガノミクスが米国経済、ひいては世界経済の繁栄を導いたのは、それが国際的な開放経済を前提とする拡大均衡メカニズムを通じてであったことに留意すべきでしょう。

 レーガノミクスもトランプノミクス同様、大幅減税、財政拡大、規制緩和を3本柱とするものでしたが、当初は、それが国内需要の拡大と高金利・ドル高を通じて日本などからモノとカネを吸引する形で米国経済の成長を支えました。プラザ合意後の円高局面では、その役割が日本から新興アジア諸国へと広がります。米国が世界の偉大なる需要創出者の役割を果たすことで世界経済のその後の繁栄につながったわけです。

 トランプノミクスに対しては、米国経済をレーガノミクス以来の新たな繁栄の局面に導くという期待もあり、高金利やドル高になったりもしましたが、トランプ大統領の場合、上記のような国際経済のメカニズムに対する無理解が、トランプのミクスそのものの成功の上で最大の障害になるかもしれません。

 なぜなら、米国は世界唯一の基軸通貨国であり、米国経済には世界に米ドルを供給する独自の役割があるからです。

 

●貿易赤字=損失という誤解

 まず、トランプ大統領のこれまでの発言から、そこには「貿易赤字」に対する大きな誤解があることがうかがわれます。貿易赤字=ロス(損失)、という言い方をしています。

 トランプ大統領はTPP脱退、NAFTA再交渉の次は為替を言い出しました。

 二国間の貿易赤字の背景には、相手国が為替相場を不当に安くする政策をとっていることがあるとして、そういう国として「為替監視国」を指定し、報復措置をとるということです。下図のように、その基準として3つが挙げられていて、人民元安の中国は、うち1つが、日本は、うち2つがひっかかるとされます。
 日本の異次元緩和の金融政策は2%のインフレ目標達成をめざすものであることも、どの国の金融政策も為替を目的としていないことも、G7の間での国際的なコンセンサスです。

 どうも、トランプ大統領にはマクロ経済政策に対する理解不足がありそうなので、経済についてよくある誤解として「合成の誤謬」を挙げてみました。下図をご覧下さい。

 自らの利益のために行動するということを皆が行うと、経済全体が悪くなって、自らの利益がかえって損なわれる結果になる。それがマクロ経済のメカニズムです。

 一国全体でみた合成の誤謬は、自国の雇用を守るために輸入を抑制することを各国がやり出すと、結局、どの国もが自国の雇用を減らす、つまり、縮小均衡にあります。特に大国、なかでも基軸通貨国がそんなことをすると、それだけでその国も世界も縮小均衡です。
 そうした誤解に近いものとして、かつて日本にも「黒字有用論」がありました。

 1990年の湾岸戦争の直後の頃でしたか、日本の経常収支黒字が減少していた折に、大蔵省の国際金融局に勤めていた筆者が、黒字の減少を心配する上司たちを説得するのに苦労したことを記憶しています。

 経済活動は個々の企業や個人が行っているもので、輸出する企業もあれば輸入する企業もある。貿易黒字とは、そうした経済活動を一国全体で足し合わせると、結果として輸出額の合計が輸入額の合計を上回っていることを統計数字で示したものに過ぎず、「黒字」というよりも「超過」と言ったほうが良いかもしれません。

 これは決して「儲け」などではありません。もし「儲け」を考えるなら、輸出企業よりも輸入企業のほうが儲かっている場合もありえます。

 金本位制ではないのですから、どこかに国全体の貿易「黒字」がおカネや金の形でまとまって積み上がっているものではありません。確かに、黒字によって外貨準備が増えるということはありますが、米ドルの場合、その多くは米国債で運用されますから、おカネは米国に流れて米国の資金需要を満たすことに回り、それで裨益するのは米国経済です。

 一定以上の対外支払い準備が必要な開発途上国とは異なり、日本のような先進国の場合、外貨準備の多い少ないは経済的な意味がありません。

 マクロ経済で大事なのは、対外黒字や赤字ではなく、一国全体の所得水準です。

 国内需要が旺盛になり、経済成長率が上がると、結果として輸入が増えて貿易黒字が縮小するということが起こります。逆に、不況のもとでは貿易黒字が増えがちですが、どちらが国民経済にとってプラスなのかということになります。

 

●トランプの輸入抑制策

 貿易赤字を損失と捉えるのは、輸出を売上として、輸入を経費だとする見方でもありますが、これは一国のマクロ経済と一企業との経営とを混同しています。

 いくらトランプ氏が企業経営者だといっても、この点は区別してほしいものですが、もし、その区別を分かった上で政治的に言っているのだとすれば、世界のリーダー国が世界に誤ったメッセージを出しているという意味で、もっと罪深いかもしれません。

 こうした発想から中国などには高関税、などという発言も出てくるのですが、中国からの輸入が高くつくことになると困るのは米国の産業界や消費者です。それぐらい、経済では国際的な相互依存関係が進んでいます。

 米国製品は競争力が強いはずだから売れないはずがない→ゆえに売れないのは相手国が何か不公正なことをしているからだ→それを正すために高関税や輸入規制で相手国からの輸入に制裁を課す。そんな論理でかつて世界を振り回した米国のスーパー301条も、WTO違反として無効化されています。

 トランプが考えているとされる貿易赤字削減策で最もラディカルなのは、法人税です。巷間、言われているトランプの法人税改革は3つの柱から成っています。

 第一に減税。連邦法人税率を35%から15%へと引き下げるとしていますが、せいぜい20%程度までが精一杯ではないかとも言われています。実は、米国の法人税は主要国の中で最も高い水準になっています。

 国と地方を併せた実効法人税率で比較すると、米国40.75%、フランス33.33%、日本30%を切ったところ、独29.72%、中国25%、韓国24.20%、英国20%、シンガポール17%。

 第二に、国際課税改革。これだけ法人税率が高いと、米国の多国籍企業は海外であげた利益を現地国で納税しても、なお、米国内の法人税とは大きな開きがあります。現状では、利益を米国内に還流させると、その差額に課税されてしまうため、米国企業は税率の低い国に、全体で2兆ドルを超える利益を留保しています。

 そこで、米国に利益を還流させても、そうしない場合に比べて法人税負担が重くならないような改革をしようということになっています。これは米国に多額の資金を還流させて米国経済の活性化とドル高の要因にもなるでしょう。法人税逃れも防がれます。

 第三に、法人税への国境調整税制の導入。これが問題です。企業が海外に輸出した分については法人税を還付し、海外から輸入した分については法人税を課すというものです。

 これは、米国には連邦レベルでは、欧州のような付加価値税制(日本では消費税)がなく、他国と同様の国境調整をしないと不公平だという発想に基づくものです。つまり、消費税だと輸出のときに税金が還付され、輸入品には課税されていますが、それが輸出促進的であり、輸入抑制的だと映っているわけです。

 これは大きな誤解です。税金に対してさらに税金をかける二重課税をTax on Taxと言いますが、各国ともそれを回避するための調整を国境で行っているに過ぎません。

 付加価値税や消費税の場合、輸出品については、輸出する前の仕入れ段階ですでに税金がかかっているので、それを輸出時に還付して、税金がかかっていない状態にして、相手国で輸入したときにはその国の税率で課税する、それによって、相手国の消費者は、国内品も輸入品も同じ税率の負担をするという形で、内外無差別にしているものです。

 課税の公平を期すための単なる技術的な調整に過ぎません。

 米国が同じようなことを法人税でするならば、米国の企業が輸入したものを売ると、その仕入れた分を経費として差し引けなくなります。それで増える法人税負担を価格に転嫁すれば、米国の国産品にに比べて輸入品が一方的に不利になります。転嫁できないと、輸入企業の負担が増えてしまいます。結果として輸入を抑制することになりますが、これは内外無差別という国際的な原則への違反になるでしょう。

 他方で、輸出した売上については税を還付するとなると、これは米国の輸出企業に対する事実上の輸出補助金となり、WTO違反になるでしょう。

 輸出=売上、輸入=経費という間違った認識に基づく発想です。

 

●国際収支とは何なのか

 ここで貿易収支とか国際収支とは何なのかをみてみると、下図のように整理されます。
 トランプは国際収支のうち、モノの貿易収支ばかりを見ており、しかも、それを対中国、対日本などと二国間毎に分解して捉えています。そして最も貿易赤字の多い中国をけしからんと言っているわけです。

 そもそも二国間での貿易収支の黒字赤字は、それぞれの国の消費者や企業が買いたいモノを買った結果として出てくるもので、特に中国の場合、米国の中国からの輸入は米国から中国への輸出の4倍にものぼりますから、中国のモノを買いたいという米国の消費者や企業がけしからんと言っていることになってしまいます。

 貿易収支はモノですが、モノのほかにサービスがあり、貿易収支のほかにサービス収支もあります。米国はサービス産業に強い国で、サービス収支は全体として黒字です。

 貿易収支とサービス収支に所得収支を加えたものが経常収支です。

 所得収支とは、賃金や配当、利子所得などの受け払いで、これが黒字であれば海外からの「儲け」そのものです。国内では生産しなくても、海外に投資したり、海外で経済活動をして稼いでいけば、国の所得は増えます。

 経常収支が黒字ですと、それに見合う資本(おカネ)がネットで海外に流出します。ネットでというのは、流出額と流入額の差し引きでの金額です。かつては資本収支の黒字(おカネが海外から純流入)、資本収支の赤字(おカネが海外へ純流出)という言い方をしていました。

 日本のような経常収支黒字国は資本供給国、米国のような経常収支赤字国は資本流入国になります。日本が輸出などでドルというおカネを受け取っても、それをそのまま持っているのでは意味がありませんから、必ずドル建て資産に運用されます。入ってきた外貨は、必ず、その通貨で海外に運用されます。

 資本収支は、対外証券投資、対外直接投資、外貨準備などの純増額で捉えられます。外貨準備は主として米国債への運用という形で米国におカネが流れているものです。

 それでは、経常収支の赤字黒字は何で決まるかと言うと、それはほとんどが、一国のマクロ経済の状況で決まります。関税などの貿易障壁が全体の黒字赤字の数字に与える影響はほとんどないと言っていいでしょう。

 つまり、国内で消費や投資、あるいは財政支出などが拡大すると、モノやサービスなどへの国内需要が増え、それが国内の生産で賄われない部分が経常収支の赤字になります。

 80年代のレーガン政権のときに起こったのは、レーガノミクスで国内需要が増大し、そうした需要を賄うよう、日本などから米国へのモノやカネの供給が増えて、日本の黒字が拡大、米国の経常収支の赤字が拡大して、米国への資本流入が増えたわけです。

 当時、筆者は、これを「アリとキリギリス」という言葉で表現しました。

 日本人はアリのように働いて米国にモノを供給し、それで稼いだドルを米国に供給している一方、米国人は、それによって高い消費水準と活発な投資を実現し、得られた資金を世界中に再投資して儲けている。結果として豊かさを実現しているのは勤勉なアリではなく、キリギリスの米国である。童話とは逆に、悲しいアリの物語なのだ、と。

 米国は世界一の需要創出国となることで自国の豊かさばかりでなく、この需要に応えんと供給に応じる中国などの新興諸国の所得水準を上げ、これが米国産業にとっても市場の拡大につながり、こうした成長の国際間の好循環が繁栄をもたらしたわけです。

 米国は経常収支の赤字=海外から借金を積み重ねることで、2015年末の対外純資産残高の数字でみると、世界最大の累積債務国(純債務残高886兆円)、これに対して日本は逆に、世界ダントツ一位の対外純資産残高(339兆円)を誇る国であり続けています。

 しかし、米国は現在、先進国の中では最も経済パフォーマンスの良い国であり、日本は最も成長率の低い国です。経常収支が黒字であるかどうかは、その国の成長力や豊かさとは必ずしも関係ありません。

●基軸通貨国の特権と義務

 ただ、米国の累積赤字は極端な大きさです。米国の豊かさの裏返しともいえるものではありますが、こうした成長パターンをどこまでも追求できるのも、米国が基軸通貨国だからです。 
 
 

 流動性(おカネ)を世界に供給するのは、基軸通貨国の役割です。

 第二次大戦前後の頃まで、かつての偉大なる米国は黒字国=資金供給国として黒字を資金フローの形で世界に流動性を供給する役割を担っていました。

 大戦前に、世界経済の中心へと躍り出た米国が自らのポジションを十分に自覚せず、黒字をため込んで、すでにポンドに代わる国際通貨の地位を確立していたドルが流動性として世界に十分に供給されなかったことも、第二次大戦を導くことになる世界的な縮小均衡の原因だったという見方があります。

 大戦後は、米国は公的にも、マーシャルプランやガリオア・エロア基金といった援助を行い、世界に供給されたドルが戦後の西側資本主義諸国の経済発展を導き、これが米国の繁栄にもつながりました。

 しかし、欧州や日本の産業が競争力を強めるに連れて、米国一国が経常収支の黒字をため込む国ではなくなり、こうした構造には変化が生じました。

 世界にばら撒かれたドルが、これら国々に蓄積され、米国は金兌換への要求に応えられなくなり、ニクソンショックで金兌換が停止されました。

 それによってドルの供給は金準備という制約から解き放たれ、今度は、米国が経常収支の赤字を通じて世界にドルを無制限に供給できる構造へと移行していきました。今では、米ドルを自由に供給できる米国は、世界からの輸入大国としてドルを散布することで、世界の経済成長を支えるという形での基軸通貨国になったわけです。

 「トリフィンのジレンマ」という言葉があります。

 これは、資本収支の赤字(経常収支黒字国の局面)を通じてであれ、経常収支の赤字であれ、基軸通貨国として米ドルを世界に供給する役割を米国は果たさねばならないが、それは米ドルの世界への過剰供給を通じて米ドルの信認を低下させる、ドル暴落につながるというジレンマです。

 このジレンマを克服したのがレーガノミクスでした。財政と経常収支の「双子の赤字」でもドルは暴落しない。つまり、米国経済への信認が強ければ、世界に散布されたドルは米国へと投資される、ドルは過剰供給にはならず、むしろ、米国などへの投資に必要な通貨として需要されることになる。

 これが「強いドル」です。その裏づけとなるのが、力強く成長し、魅力的な投資機会に溢れ、世界の資金循環のセンターとして機能する米国経済への信認です。

 レーガノミクスは、そのような意味でも、米国の成長パターンのイノベーションでした。偉大なる米国経済とはすなわち、偉大なる世界の需要創出者であり、これはすなわち偉大なる基軸通貨国である。基軸通貨特権をフルに利用してこそ米国の繁栄がある。

 この根本にあるのが、基軸通貨の本質的な性格です。基軸通貨とは、世界の誰もが受け取るだろうと誰もが思う通貨だから自分も受け取る、という、一種の自己循環論法によって成り立っている通貨です。

 この自己循環論法の基本にある米国経済への信認を強化することで、世界最大の累積赤字を出す形での繁栄を実現できる。米国が経常収支赤字国であるのは、こうした基軸通貨特権を活用した成長パターンと裏腹です。

 トランプ大統領は、せっかくのこうした基軸通貨国が有する特権と国際的な義務を、米国の最高指導者として自覚せねばなりません。

 米国の場合、経常収支赤字を出すことは是であり、それを可能にするためにもトランプノミクスが偉大なる米国経済を築くという関係性への認識が必要です。貿易赤字=損失、という頭は抜本的に転換しなければなりません。

 

●規範の主導者としての日本

 人類普遍の価値とされる民主主義も自由市場経済も基本的人権も「法の支配」も、その規範となるルールや仕組みが必要です。米国の繁栄も、米ドル基軸通貨体制の仕組みや基軸通貨国としての役割あってこそのもので、それは一種の国際的な規範でもあります。

 安倍総理が訪米し、首脳会談でトランプ大統領との間で信頼関係を築いたことが評価されていますが、真の同盟関係とは、米国に追従する「従米」ではなく、相手国のために、また日米同盟は世界のための同盟関係なのだから世界経済のために、時に米国の指導者を諌める「諌米」であることも必要だと思います。

 よく、「米ドル基軸通貨体制による支配」などと言われますが、米国に基軸通貨国としての役割を諭し、米国とともに米ドル基軸通貨体制を支える日本であれば、それは決して対米従属ではないと思います。

 安倍総理がそういうこともトランプに言ってくれたのであればありがたいのですが…。

 もし、これから米国が「一国主義」に行くなら、世界のために、あるべき姿、規範を示していくのが日本の役割でしょう。その際、安倍総理が言うことなら耳を貸そう、ということになる。

 そんな関係がトランプとの間に構築されたのならば、今回の訪米は国際社会全体にとっても、真の大成功だったといえると思います。

 

松田まなぶのビデオレター、第55回は「トランプ大統領は、ドル基軸体制とマクロ経済の復習を」チャンネル桜、2月7日放映。
 
 
」チャンネル桜、2月7日放映。
 
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