風疹免疫と妊娠高血圧症候群の関係 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

全く関連がないように思えて実は関連があることから思わぬ発見が生まれることがあります。本論文は、風疹免疫と妊娠高血圧症候群の関係を示しており、大変興味深いものです。

 

Am J Reprod Immunol 2017; 78: e12677(中国)

要約:年間7000件の分娩を取り扱っている香港の病院で、1998〜2013年妊娠24週以降で出産した95,024名を対象に、風疹免疫がない9,870名(10.4%)と風疹免疫がある85,154名(89.6%)の2群間の妊娠高血圧症候群の頻度を後方視的に検討しました。なお、風疹抗体IgGが10 IU/mL未満の場合に風疹免疫がなく、10 IU/mL以上の場合に風疹免疫があるものと定義しました。多変量解析により、妊娠高血圧症候群のリスクは、風疹免疫がない場合(1.27倍)、初めての妊娠の場合(2.27倍)、高齢の場合(2.29倍)、BMIが高い場合(2.01倍)、腎機能低下の場合(6.38倍)に有意に高くなりました。風疹免疫がない場合では特に、赤ちゃんが男児の場合と多産婦の場合に妊娠高血圧症候群のリスクが増加していました。

 

解説:妊娠高血圧症候群は原因不明の疾患ですが、胎盤形成の際の不備や免疫応答の異常により生じるのではないかと考えられています。例えば、クラミジア肺炎の抗体陽性者で妊娠高血圧症候群のリスクが3倍に増加するという報告、妊娠高血圧症候群は風疹抗体がない場合に3.5%、風疹抗体がある場合に2.4%であったという症例対照研究があります。香港では風疹免疫がない方が8.4%おられる現状から、本論文の研究が行われ、風疹免疫がない場合に妊娠高血圧症候群のリスクが増加することを示しています。なお、その理由は明らかにされていません。