☆刺激周期の勧め | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

私は、基本的に刺激周期をお勧めしています。その根拠を明確に示した論文が発表されましたので、ご紹介いたします。

Hum Reprod 2016; 31: 370(ベルギー)
要約:2009~2013年初回の採卵を実施した1099名(18~42歳)の方について、採卵数別の累積出産率(1回の採卵あたり)を検討しました。なお、アンタゴニスト法+FSH150~225単位連日+HCG10000単位で刺激を行い、新鮮胚移植+凍結融解胚移植(単一胚移植)としました。結果は下表の通り。

採卵数     1~3個   4~9個   10~15個   16個以上
        2.3個    6.6個    12.1個    22個
OHSS      0      0     0.6%     4.1%
受精率     60.6%   63.4%    60.5%    56.9%
新鮮胚出産率  16.9%   29.7%    33.4%    32.1%
累積出産率   21.7%   39.7%    50.5%    61.5%

なお、累積出産率に影響を与える因子は、採卵数と受精率のみでした。

解説:これまでに発表された論文は、採卵数別の新鮮胚移植の成績を示したものしかありませんでした。それによると、12個程度採卵した時が最も出産率が高いことが知られています。しかし、患者さんにとって有益な情報は、1回の採卵あたりの出産率(新鮮胚と凍結胚の移植を含めた累積出産率)です。つまり、1回採卵したら何%くらいの方が赤ちゃんを授かるのかということです。本論文は、採卵数が多ければ多いほど累積出産率が高くなることを示しています。したがって、少なくとも初回は刺激周期がお勧めになります。

助成金も初回のみ30万円に増額されましたので、ぜひ刺激周期でトライして欲しいと思います。本論文のデータから、初回刺激周期で16個以上採卵できれば、61.5%の方が赤ちゃんを授かります