松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。


テーマ:
男性には亜鉛が必要と考えられていました。本論文は、ヒトの精子形成過程における亜鉛の役割を調べた貴重なデータです。

Hum Reprod 2014; 29: 1134(イタリア)
要約:正常精液所見の方10名、精巣癌の方5名、閉塞性無精子症の方18名から、精子、精巣、精巣上体のサンプルを採取し、亜鉛および亜鉛輸送体を検討しました。精細管→精巣上体→射出精子と精子形成が進むにつれて細胞内の亜鉛濃度が増加しました。一方、先体反応が起こり精子の過運動状態になると、亜鉛濃度が減少しました。また、亜鉛輸送体の活性は精巣上体で最大になりました。

解説:動物では、亜鉛が低下すると精子形成(分化、増殖)が障害されます。また、多くの細胞で、亜鉛が酸化ストレスを軽減することも知られています。また、受精の過程で亜鉛が必要であることが報告されています。このように、亜鉛が精子形成に重要ではないかと考えられていましたが、ヒトでの研究は十分ではありませんでした。本論文は、精子形成過程における亜鉛の役割の詳細を明らかにしたものです。

亜鉛は、クロマチン(染色体)の安定(集積)に関与することが知られています。そのため、精子形成の初期(精母細胞)の段階では、亜鉛が低い状態で減数分裂が生じます。亜鉛濃度が高い精巣上体では、クロマチンが安定し、染色体を守ります。精液中の亜鉛濃度はさらに高く、血液中の100倍になります。精子の染色体が守られている状態と言えます。しかし、ひとたび女性の体内に入ると、亜鉛濃度が少ないため、染色体が不安定となり、先体反応が起こり、精子の過運動状態が生じます。亜鉛の濃度による精子の安定化と活性化の切り替えは、生殖にとって大変重要なポイントではないかと考えます。このように解釈すると、非常に合理的であり、かつ納得できます。

亜鉛は、精子以外にも、生体内の200種類以上の酵素を補助するものとして重要な金属です。亜鉛は、牛肉などの肉類(動物性蛋白)に多く含まれていますが、現代の食生活では肉類の摂取は不足気味かもしれません。

「男性には亜鉛」と言われてきました。本論文はそれについて、いくつかの重要な情報を提示しています。その必要量については、さらなる研究が必要です。
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