こんにちは。中央区築地の税理士松島澄江です。


Q.当社の代表取締役B は、80 歳と高齢であることもあって、後継者である長男の取締役C に代表権を委譲し、自身は経営の一線を退いて、代表権のない名誉職である会長に就任することを宣言しました。

会長となるとほとんど当社にも出社しませんから、実質的には退職と言えなくもない状況です。
このような場合、実質的に退職した、という事実をもって役員退職給与をB に支給することはできないでしょうか。




A.役員としての地位や職務の内容が激変したために、実質的に退職したと同様の事情があると認められる一定の場合には、実際に退職してはいないものの、役員退職給与を支給することができます。




<解説>

役員の地位や職務内容が変更(「分掌変更」といいます)したことにより、役員としての地位又は職務の内容が激変し、実質的に退職した場合と同様の事情があると認められる場合には、実際に会社を退職していなかったとしても、その「実質的に退職」したという事実を重視して、その分掌変更の際に役員退職給与の支給を認めるという取扱いが設けられています。


何をもって「実質的に退職」したのかを判断することは難しいですが、単に分掌変更しただけでは足りず、その分掌変更が地位や職務内容の「激変」と言えるかどうかが問題になります。


この点、概ね以下のようなケースについては、「実質的に退職」したとして、原則として分掌変更に伴う役員退職給与の支給が認められるとされています。


① 常勤役員が非常勤役員になったこと


常勤役員と非常勤役員では、役員としての地位や職務内容が大きく異なります。

このため、分掌変更に伴う役員退職給与が原則として認められるとされています。
ただし、非常勤役員であっても代表権を有している方や、実質的に経営上主要な地位にあると認められる方は、実態としては非常勤役員とは言えませんから、分掌変更に伴う役員退職給与の支給が認められないとされています。


② 取締役が監査役になったこと


取締役は経営、監査役は監査と同じ役員であってもその性格は全く異なることから、分掌変更に伴う役員退職給与が原則として認められるとされています。
ただし、監査役であっても実質的に経営上主要な地位にあると認められる方や、使用人兼務役員とならない役員の要件を満たす株主でもある監査役は、実態としては監査役とは言えませんから、分掌変更に伴う役員退職給与の支給が認められないとされています。


③ 役員給与が分掌変更に伴い概ね50%以上激減したこと


分掌変更に伴い、役員給与が概ね50%以上も激減とした役員は、職務内容が大きく異なると判断され、原則として分掌変更に伴う役員退職給与が認められるとされています。
ただし、役員給与が激減したとしても、依然として実質的に経営上主要な地位にあると認められる方は、分掌変更に伴う役員退職給与の支給が認められないとされています。


このように、実際は退職していないにしても、実質的に退職したと認められる役員の分掌変更については、役員退職給与の支給が認められることがあります。


しかし、この取扱いは例外的なものとされており、分掌変更に伴う役員退職給与に関しては、原則として未払計上ができず、現実に支給しなければ損金算入を認めない、とされています。







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