女子プロレス列伝~先人たちの技~
テーマ:女子プロレス列伝今でこそ男子のプロレスと同じリングで興行し、ファイト・スタイルも共通なものが多くなった女子プロレスだが、その昔は男子と女子のプロレスには同じプロレスという名においてもちがうところがたくさんあった。
リングコスチュームやルックスなどの女性ならではの華を引き立てていたのはもちろん、歌のコーナーなんかがあったのもちがう部分の代表的なところだが・・・そういうのじゃなくてさ、プロレス自体に何かちがいがあったよね。そんなちがい・・・ボクらがプロレス全盛期にどちらも見て、パッとわかりやすく気づくところっていうと、やっぱり技のちがいは大きかったんじゃないかな?
そう、当時の女子プロレスには女子しかやらない、女子プロ独特の技がたくさんあったんだよね。
一番、ボクが感じたのはボディスラムかな?女子プロのボディスラムは必ず投げる方が相手の首に自分の腕をブレーンバスターのように回してから持ち上げていた。これは見覚えがある人、多いと思うなぁ。そうそう、他にロープに目を押し付け、そのまま引きずり目潰し。で、ロープで後に跳ね飛ばす、なんてムーブもあったよね。これも男子じゃやらなかった。
それと女子ならではの外見から、最も特徴の出ていた技として相手の髪の毛を掴んでの攻撃ってのがあったよね。
髪の毛を鷲掴みにし、そのまま首投げなんていうのもあったし、あ、そうそう!相手をロープに飛ばし、ミル・マスカラスの十八番フライング・クロス・アタックのように飛んで・・・そのままクロスチョップせず、かわりに髪の毛を掴んで叩きつけるという技もあった。これはジャッキー佐藤やミミ萩原が得意とし、全盛にはライオネス飛鳥もよく使っていたんだけど・・・まさに女性の最大のイメージである髪の毛を技の一部してとして取り入れたことで痛さ、憎しみを表した女子ならではの技だったよなぁ。
そんな共通技もさることながら、個人プレーでも女子プロレスは技に独断性を持っていた。
大森ゆかり姉さんは女力道山というニックネームから空手チョップで有名だったけど、実は技のレパートリーは豊富だった。特にコーナーからの雪崩式の技を使わせたら名人芸。ここ一番によく炸裂したなぁ。雪崩式ブロック・バスターや雪崩式パワースラムなんかは使った回数こそ少なかったが、そのため技のインパクトは絶大だった。一方、日本人女子プロレスラーでは昨今例のない長身だったジャンボ堀は、その身長を生かした技が際立った。エアプレーンに担ぎ上げてから、そのまま相手の片足を離さすに横にパワーボムするような形で相手を叩きつけるというオリジナル技を使っていた。
長身180センチのジャンボ堀ならではの迫力!!
今はなんとかボムとかなんとかバスターなんて技がたくさんあるけど、これは完成度が高いすばらしい技ですね。今でも十分通用しますよ!
さらに・・・日夜、技の研究熱心さが窺える技として、デビル雅美の使っていたパワーフォール、長与千種のクラッシュ・スープレックス85、そしてジャガー横田のジャガー・スープレックスはその技の開発努力を見習わなければならないほど今日のプロレス界に大きく貢献しているといえるだろう。
見た瞬間、あれ?って思ったかな?そう今じゃこの技、すっかりライガーボムだけど、元祖はデビルのオリジナルのパワーフォールという技だったんだ。
様々なスープレックスをこなした千種のオリジナル、クラッシュ・スープレックス85は両腕を抱え込んでのジャーマン・スープレックス・ホールドだった。そう、これは俗に言う“だるまジャーマン”の元祖。男子でも使っていた選手いたよね。
日本人女子プロレスラーで初のUWA世界王者となったときのフィニッシュだったジャガー・スープレックス・ホールド。画像から腕がクロスされているのがよくわかるように、これはクロスアーム・スープレックスの元祖だったのだ。
男子と女子のプロレスにまだ見えない壁があった時代、女子プロはその世界観の表現を一番伝わりやすい方法、リング上の技で見せるということで確たるものにしていたのかもしれない。そのためオリジナリティーの強い技をアイディアをひねり、考えて実践していたんだろうなぁ・・・
と、ざっと振り返っただけでもオリジナリティーにあふれ、現在にまでカッコたるポジションにいる女子プロの技だが・・・そんな数ある女子プロレスの技の中でもオリジナリティーが最も高く、最も“らしさ”が出ていた、そして男子にも絶対に引けをとらなかった名技が過去にあったんだ。
男子、女子ともプロレスにはヒール、つまり悪役というのが必ずいた。
正統派のレスラーに対し、反則やダーティなファイトで攻撃し徹底的に痛めつける。ファンに憎まれ、サインや記念撮影などもしない・・・今となっては死語かもしれないが、いわゆる悪者レスラーという存在がいたのだ。
ボクらが見ていた頃の女子プロといえば、クラッシュギャルズに対しダンプやブル様の極悪同盟だったけど、ビューティー・ペアが全盛の頃はブラック軍団という悪役がいたんだ。そのブラック軍団に池下ユミ、阿蘇しのぶなどと名を連ねていたのが反則技
“人間絞首刑”
を使うマミ熊野だった。
マミ熊野は52年にデビュー。そして56年10月引退には引退してしまったので正直、選手として戦っていた鮮明な記憶はわずかしかボクにはない。
ただ他のヒールとはちょっとちがう何かがあったのはよく覚えている。あの頃はそれが何なのかなんてもちろんわからなかったが・・・今にして思えばマミ熊野には他のヒールにはない“影”のようなものがどこかにある、独特のフインキをもったレスラーだったというのが子供のボクにも伝わってきたのは確かだ。
もちろん本当に“影”があったかどうかはわからない。でも何か悪役として他とはちがう光を放っていたのは幼かったボクでも十分感じた。そんな印象を与えるのもやはりあの技、人間絞首刑のなる業なのかもしれない。
鮮烈だった。だって子供の頃、絞首刑なんて聞いたら一体どう思う?え~!!って思わないかい?そんな絞首刑がプロレスで発動されるんだ・・・技を繰り出すマミ熊野の表情、そして相手の苦しそうな表情・・・それが鮮烈でなくてなんだっていうんだ!!
そんな人間絞首刑・・・一体どんな技なのか?残念ながらマミ熊野のやっているところの画像が見つからなかったのでダンプのでみなさんにはご覧頂きたいです。
これです!!
お客さんの方を向いてエプロンに立ち、そこで首だけを持って相手を宙吊りにする・・・そしてこのまま左右に、まるで時計の振り子のように振り回し、やがて場外へ放り投げるという技だ。自らの腕はロープ・・・その姿は足元をなくした死刑囚が絞首刑にされるそのもの!!まさに克明に絞首刑を映し出した、ヒールのアピールがこれ以上ない世紀の反則技なのだ。
さらに技としての完成度も凄い。まず観客席を向いて仕掛けるということで見せる要素、そのアピール度は十分だ。さらに自分の表情も相手の表情も見ているものに完全に伝わる。仕掛けた方の“どうだ”と言わんばかりの表情に、対照に相手の本当に苦しそうな表情が見えれば・・・これは技としてどんな文句が付けられようか?これほど反則技が生える構図はちょっとないと思う。
そしてなによりすごいのはこの技をするレスラーだ。
見て欲しい。相手をぶら下げているのは自分の腕だけだ。相手を腕だけで持ち、宙吊りにして振り回すのである。腕力、背筋力、そして足の力・・・そう、この技は誰でもできるという技ではない。相手を十分に振り回すパワーが絶対に必要なのだ。
まさに恐るべしは人間絞首刑なのである!!
マミ熊野は通常の選手より身長が低かったという。たとえ女子と言えど当時のプロレス界でそれは不利な条件であった。パワーは他のレスラーよりもあった。しかし・・・でもマミ熊野はそれを逆手に取ったのだ。身長が低い分を相手を宙吊りにするという技で見事補ったのである。身長差を逆に利用し、凶器は使わないインパクトのある反則技・・・こうして人間絞首刑は女子プロレスに堂々ステータスを築いたのである。
それと同時に・・・
正統派が目立つ為には必ず悪役が必要になる。それはプロレスの定義の中のひとつだが、どんなにベビーフェイスのレスラーがよかろうと、やはり悪役が名レスラーでなくては正義は光らない。悪役は、どうすれば正統派が光るか、かっこよく引き立たせることが出来るか・・・常に考えていた。そしてその考えを実行し、自ら憎まれ、正統派を光らせるため捨石になることが宿命だった。でも、そればかりじゃない!悪役も光を放つことはできる!!本当は実力者なんだ!!そんなヒールの意地、真骨頂を見ているものに伝える・・・反則技ながら男子の悪役にも引けを取らなかった人間絞首刑には、マミ熊野のそんな生き様、ファイティング・スピリットも見え隠れしてならないのだ。
女子プロレスは今やテレビから完全に消えてしまった感があるが、会場で展開させる技は相変わらず高度なものが多く、目を見張るものがある。そしてそのレスラー達はかわいくてスタイルもいいのでプロレス以外でも写真集やDVDを出したりしてファンを楽しませてくれる。これは素晴らしいことだと思う。でも・・・それだけでいいのかな?
大事なのは信念じゃないか?正統派でも悪役でも、プロレスという中に、これが自分なんだ!!という絶対的なものがなければダメなんだよ!!
女子プロレス、このままでいいのか?先人達が築いた偉大なるものを、いつまでも輝かせてくれよ!!
そして自分も輝くんだ!!それが女子プロレスだぜ!!
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1 ■女子プロも
面白い時代がありましたよね。
なんで今みたいにしぼんじゃったんだか…