「親父」 23
俺はもうすぐ
五十(当時)になる。
親父の年まであと二十年だ。
長くはない。
あと二十年で何ができるのだ。
親父のしてきたことの何分の一ができる。
親父は戦争で死を見てきたが俺はその戦争さえ知らん。
死を見てきた男に勝てるはずはない。
俺は親父が目標だった。時間はまだまだあると思っていたが、もうないじゃないか。
このままずるずると七十になるのかい。
いやその前に死ぬかもしれんが。
そう考えると
焦るよ。俺のこの目はだめになるかもしれん。
見えなくなるかもしれん。
あと何年もつかわからん。確かに進行しているようだからよけい焦る。
俺はどうしたらいいのか教えてほしい。
つづく