2017-12-07 11:46:53

受信料訴訟で考える”司法権の限界”

テーマ:ブログ

 

 

 

最高裁がNHKとの受信契約を定めた放送法を合憲と判断しました。

本来、契約は双方の自由意志に基づく「申込み」と「承諾」が合致することによって成立するものです。

この大原則を前提とすると、法律によって契約締結を強制する放送法の規定は理論的に筋が通らないような気もします。

 

しかし、ここで違憲判決を出してしまうと、次は憲法違反の法律によって締結させられた契約を「解除する」「脅迫による承諾だから取り消す」「そもそも無効だ」などという主張を出して、既払い受信料の返還を求める訴訟が提起される可能性があります。

万一この請求が認められたら、サラ金業者に対する過払い金バブルどころの騒ぎではなくなります。

仮に過去には遡及しないと判断しても、将来的にも有効という判決は出せないでしょう。

そうなると、すでにNHKと受信契約している全世帯が受信料を支払わなくなるので、受信料収入はゼロになってしまいます。

 

夫婦別姓を求める訴訟では、(別姓を認めていない)現在の戸籍法を違憲とすると、国会は戸籍法改正を余儀なくされます。

これは議員定数不均衡訴訟で、選挙を違憲無効とした場合も同じです。

新たな選挙区の区割りを決めることを余儀なくされますから。

万一何もせず放置したら、世論のバッシングを受けて政権が転覆してしまいます。

 

立法過程には、法案提出、審理、決議の3つの段階があり、行政権が多くの法案提出をしているのは「国会を唯一の立法機関」とした憲法41条の規定に違反するのではないかという議論があります。

しかし、審理と決議という本質的な機能が国会に委ねられていることから、憲法違反ではないとするのが一般的な考えです。

国会で廃案にすることもできるのですから。

 

ところが、先の夫婦別姓を求める訴訟や議員定数不均衡を求める訴訟で、現行法を違憲とすると、国会は事実上何らかの法律を作らなければならなくなります。

廃案という切り札がない状況に追い詰めるのは、司法権による立法権の侵害に他なりません。

 

今回の放送法も、違憲と判断すれば、事実上何らかの立法措置が必要となってきます。

将来的にせよ受信料支払いがゼロとなれば、それを補う法的措置が不可欠になりますから。

 

司法権が立法権を侵害するの憲法41条に違反し、憲法の番人である司法権が憲法違反を犯してしまうことになってしまいます。

議員定数不均衡訴訟で、「裁判所が無効と判断しなかったのは遺憾だ」と弁護団が叫ぶのを聞きながら、「君たちも同じ法律家だろう。司法権の限界という苦しい事情も理解してくれよ」と裁判官たちはささやきあっているかもしれません。

 

司法権とは「具体的な争訟について、法を適用し、宣言することによって、これを裁定する国家の作用」であり、それ以外の何ものでもありません。

アクティブに国の制度を作ったり運用するのは立法権と行政権の役割です。

違憲判決が出されない度に裁判所に対する非難と失望の声が挙がりますが、司法権の限界という苦しい事情もきちんと考慮するのが公平だと考えます。

 

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