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昨今、大学の学費を国が「出世払い」で立て替えるという案が出ています。そもそも「出世払い」とはどういうものなのでしょうか?


民法上の解釈として、「条件」なのか「期限」なのかという争いがあります。民法上の「条件」(停止条件)は「条件成就」によって効力が生じます。「大学に合格したら車を買ってあげる」というような契約が典型例です。
「条件」は成就するか否か不明確なものです。「大学に合格する」という将来の事実は発生しないこともありますよね。「不合格」になって大学を諦めれば条件成就はなくなります。
これに対し「期限」は将来確実に到来する日のことです。借金の返済期限を「2017年12月31日」とすれば、その日が終了するまでに返済しなければなりません。到来することは確実ながらその日が決まっていない「不確定期限」というものもあります。典型的な例は「誰かが亡くなったら」というようなもので、人間はいつかは死にますが日にちは確定していません。
大審院(昔の最高裁)は、「出世払い」を不確定期限とし「出世払いであっても返済の義務があり、貸した方に「これ以上出世の見込みが無い」と見限られれば、その時点で全額返済の義務が生じる」と判断しました。「条件」であれば条件成就が不能となれば返済義務は免れるのですが、大審院は「期限」として(出世しているか、出世の見込みがなくなったと見限られた時点で)返済義務の存在を認めたのです。
ちなみに、税法上は「出世払い」は贈与とみなされ、贈与税が課されます。


法的には個々のケースによって異なるでしょうが、飲食代や宿泊費などを「いいよ、いいよ。将来出世したら払ってくれよ」と言って支払いを猶予した場合などは、贈与と解釈するのが自然でしょう。恩義を重んじて払いに来る人もいるでしょうが、それは道義的な問題です。


ところで、大学の学費を「出世払い」にするという案は、国が立て替えて就職後給料を貰うようになったら返済するという案のようです。これは極めて奇妙な考えで、モラルハザードの温床となりかねません。

本来、「出世払い」とは、(飲食や宿泊、金銭融通などの)サービス提供者が、相手の将来に期待し、リスクを覚悟で支払いを猶予するのです。

つまり、「授業料の出世払い」は、各大学がリスク覚悟で見込みのある学生に対して自己の計算で授業料の支払い猶予をすべきものです。
各大学が、リスク覚悟の自己の計算で「授業料の出世払い」を行えば次のようなメリットがあります。


まず、将来働いて授業料を返済することのできる学生を大学側は入試段階で真剣に選別するようになります。アルファベットも満足に書けない学生を定員を充たすために入学さたのでは、猶予した授業料が不良債権になってしまう怖れがあります。入試問題や面接など入学基準を独自に真剣に考えれば、各大学の個性に応じた入試が実施されるでしょう。入試問題の作成を予備校等に委託しようとする怠け者は駆逐されます。


また、在学中に学生を厳しく指導しないと将来の返済が危うくなるので、社会で通用する人材に鍛え上げるべく大学側は懸命に努力するでしょう。不真面目で改心の余地のない学生は退学処分になり、大学側はやる気のある学生にエネルギーを集中できるようになります。大学の行う就職指導も真剣でより効率的なものになるでしょう。
その結果、学生を鍛え上げる能力のない教員たちはクビになり、教員人事の新陳代謝が図られ、大学教育の質は大幅に向上するでしょう。


現在の大学の定員の8割くらいを「出世払い」にすれば、大学は若者を鍛え上げる本来の使命を全うする機関に生まれ変われるはずです。なにせ、不良債権の発生を防止しなければなりませんから。
また、熱心な教育に感謝する卒業生が増えると予想されるので、学費返済以上の「寄付」も期待できます。


国による立て替えなどという無責任な制度ではなく、各大学自身の計算で行う「授業料の出世払い」。

やる気のある人たち全てにメリットある実に素晴らしい制度だと思うのですが…。やる気のない「楽をして儲けたい」人たちがきっと抵抗するでしょうねえ。