2009-03-14 12:35:43

「事実上の強制」を認めた画期的な判決 その1(自治会裁判とPTA(3)) 

テーマ:PTA

PTAの何が許せないかと言って、それは、役職の無理強い。
かねてより役職の理強いは「人権侵害」であり、違憲・違法の疑いが濃厚であると考え、2ちゃんねるでもそう主張してきた。
昨春、最高裁において、自治会費(滋賀県甲賀市希望ヶ丘自治会)への募金の上乗せ徴収をめぐって画期的な判決が下っている。この判決は、前回取り上げた、退会の自由をめぐって争われて住民側が逆転勝訴した埼玉県営住宅本多第二団地訴訟と共に、PTA問題を考える上で極めて重要な判決だと思う。


<裁判に至るまでの経緯>
(高裁判決(平成18年(ネ)第3446号)による。以下、同じ。)
その自治会では、それまでは組長等が各家を回って募金・寄付金(地元の小学校、中学校、赤い羽根共同募金会、地元社会福祉協議会、地元緑化推進委員会、日本赤十字社及び地元共同募金会等への)を徴収していたのだが、会員の高齢化があったり、支払いを拒否する人もいたり、留守の人もいたりで、会費を徴収することが大変な負担になってきた。その結果として、負担の重い組長になるのを避けるために休会する人も出てきた。そこで、募金回収の負担を解消するため、募金に回す分の各家2000円分を従来の年会費の6000円に上乗せし、徴収することにした。
決定に際しては、一定の話し合いの期間を置いた上、総会により、多数決にて決定した。

この自治会の決定に対して、一部の住民(5名)が、自治会側の決定は憲法で保障されている思想信条の自由を侵害し、民法90条の公序良俗違反であると訴えた。


<自治会側の一審勝訴>
この裁判、一審(大津地裁)では、自治会の行いには「合理性、必要性が認められる」などとして(「思想信条への影響は抽象的。上乗せ徴収には必要性、合理性がある」)、自治会側が勝訴したのであった。


<自治会側の主張>
自治会側の行いに「合理性、必要性がある」ってどういうこと? と思う方も多いかもしれないが、自治会は次のような主張をしていたのだ。

自治会の主張1
寄付する相手が特定の政党や宗教ならともかく、いずれも公共性の高い団体であり、それらへの募金は「地域の助け合い」をめざす自治会の目的に沿うものだ。(合目的性)

自治会の主張2
役員の負担の解消のためにはやむを得なかったのだ。(必要性)

自治会の主張3
十分な話し合いの末、総会において「民主主義のルール」に基づいて決定されたものだ。(合理性)

これは要するに、「自治会の決定は『みんな』のためになり、『みんな』で決めたことなのだ! だから、われわれは間違っていない。」という理屈ですね。この「『みんな』の論理」が、一審では認められたと言っていいだろう。


<原告住民の主張>
それに対する原告住民の主張は、次のようなものだ。
*****
寄付をするか否かは、本来個人の自由な意思に委ねられるべきものであり、その決定は、思想及び良心の自由として憲法19条により保障されているところ、本件決議は、本来任意に行われるべき寄付を、支払いを義務付けられる会費とすることにより、強制するものであるから、控訴人らの思想及び良心の自由を侵害し違法である。(p.3)
*****


<高裁の判断>
で、大阪高裁の判断はどうだったかと言うと…。

*****
 そうすると、本件決議に基づく増額会費名目の募金及び寄付金の徴収は、募金及び寄付金に応じるか否か、どの団体等になすべきか等について、会員の任意の態度、決定を十分尊重すべきであるにもかかわらず、会員の生活上不可欠な存在である地縁団体により、会員の意思、決定とは関係なく一律に、事実上の強制をもってなされるものであり、その強制は社会的に許容される限度を超えるものというべきである。
 したがって、このような内容を有する本件決議は、被控訴人の会員の思想、信条の自由を侵害するものであって、公序良俗に反し無効というべきである。(p.9)
*****
と、原告住民の主張の核心部分を全面的に認めたものだった。
自治会は上告したものの、棄却され、2008年4月、自治会側の敗訴が確定した。


<高裁判決の根拠>
高裁は判決の根拠として、以下の三つの論点を示している。
判決の論拠1
募金・寄付金は、各人の属性や社会的・経済的状態等を踏まえた個人の思想信条に基づき本人の自由意志によりなされるべきものである。しかるに、支払い義務のある会費に募金・寄付金を上乗せして徴収することは、個人の権利として認められている任意の意思決定の機会を奪うもの(「事実上の強制」)となる。

判決の論拠2
脱会すれば、会費を支払う必要はなくなり、自動的に募金・寄付金を支払う必要もなくなる。しかしながら、対象地域の88.6パーセント弱が加入する地縁団体であり、その活動は、公共機関からの配布物の配布、ゴミ災害時等の協力、ごみステーションの管理、提供等広範囲に及んでおり、地域住民が日常生活を送る上で欠かせない存在であること等から考えると、会員の脱退の自由は事実上制限されているものと言わざるを得ない。(自治会未加入者には「配布物を配布しない」、「災害、不幸等があっても協力は一切しない」、「ごみステーションを使わせない」等の決定を自治会がしていることも考慮されている。)

判決の論拠3
自治会は「会費の不納付者に対しても脱退を求めず、会員として扱っているのだから、強制とはいえない。」と主張するが、総会において、募金・寄付金を会費と共に納めることは会員の義務とされていることからして、脱退を余儀なくされるおそれがないとはいえない。
(つづく)

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