2005-02-28 23:38:23
ほんの、徒歩9分の出来事。
テーマ:長ブログ
家から品川駅へ歩いている途中で、落し物を拾った。
それは半円の形をした小さな白いポーチ。
ビニール製ではないのだが、そのツルっとした手ざわりには、
スタイリストがよく口にする未来感のある素材の感触があった。
高価なポーチなのだろうか。
まわりを見廻してみたがそれらしき落とし主はいない。
この辺りはホテルが多いから、
宿泊客の誰かがうっかり落としてしまった物かもしれない。
旅の人だったら今頃あわてているだろう。
そう考えて、駅前の交番に届けることにした。
それにしても、この小さな袋に何が入っているのだろう。
駅前の横断歩道。信号待ちで好奇心に負けてしまった。
薄っぺらい袋にはチャックさえついておらず、
ちょっと広げたら中がのぞけそうだ。
もしかすると、持ち主が分かるかもしれないし‥。
僕は自分に言い訳をしながらポーチの中を開けてみた。
まず出てきたのは子供のオモチャだった。
キレイな色の竹とんぼ。
僕らの少年時代には竹を削って作ったものだが、
近ごろの子供は「肥後のかみ」さえ知らないだろう。
懐かしさに、ついクルクルと廻してしまう。
どうやら、電動で飛ぶ仕掛けの竹とんぼだったらしい。
何かの拍子でスイッチが入り、
轟音をたててお台場方面の空へ飛んで行ってしまった。
このポーチの持ち主は子供なのだろうか。
大切にしているオモチャだとしたらわるいことをした。
あっという間に空に消えた竹とんぼ。
大人の僕でも驚くほどの勢いで回転していたが、
PL法はクリアしているのだろうか。
だが、続いてポーチから出てきた物への驚きといったら、
高速回転竹とんぼの比ではなかった。
ドアだ。一枚板でつくられた木製のドア。
どんな入れ方をしたら、こんなに大きな物が入るというのか。
やはりこれは女性用ポーチ。しかもお母さんのものだろう。
最近の主婦の収納術はすごいと聞いていたが、これほどとは。
僕の身長ほどもあるドアと、小さな白いポーチを見比べながら
アイデア主婦の裏ワザに感心してしてしまった。
ドアの作りはしっかりしているようだ。
自立するし、ノブもちゃんと廻る。
ドアを開けてみる。僕は自分の目を疑った。
品川駅前の雑踏は消え、
ドアの中に6畳ほどの部屋が広がっていたのだ。
勉強机と押し入れが見える。どうやら子供部屋のようだ。
うろたえる僕の耳に、子供が言い争う声が聞こえてきた。
「だってボクが大事なのはキミじゃなくてキミのポケットなんだ!」
メガネの少年が半べそをかきながら叫んでいた。
「ゴメン ゴメンよ‥見つけてくるから もうゆるしてよ」
謝っている子の顔は見えないが、その声は痛々しく枯れている。
少年は泣きじゃくりながら相手を責めたてる。
「見つけるって ポケットのないキミなんて役立たずのオンボロ‥」
「パシッ!」
気づいた時には、僕は少年を平手打ちしていた。
彼の言葉に我慢できず、思わず部屋に飛びこんでいたらしい。
メガネ越しのつぶらな目を泣きはらして、
驚いた顔で僕を見る少年。よく見ればまだ子供だ。
黄色いシャツと短パンがよく似合っている。
僕は彼に言う。できるだけやさしい声で。
「痛いよな、少年。だけどな‥
だけど、友達をなくす痛みはそんなもんじゃないんだ」
ハッとした顔で目の前の友を見つめ直す少年。
その視線には、さっきまでのトゲはない。
出すぎた真似をしてしまったようだ。でも、もう二人は大丈夫。
安心した僕は、入ってきたドアを開けると再び品川へと戻った。
駅前の信号もちょうど赤から青に変わるところだ。
歩き出そうとして、白いポーチを持っていないことに気づく。
どうやら彼らの部屋に落として来てしまったらしい。
慌てて振り返ってみると、不思議なことにあのドアも消えていた。
ま、仕方ないか。持ち主さんもきっとわかってくれるだろう。
あなたが品川でなくした、白くて半円型のポーチ。
あの、ドラえもんのポケットに似たデザインのポーチは、
小さな友情をしっかり守ってくれましたよ。
以上 ウソ日記でした。
それは半円の形をした小さな白いポーチ。
ビニール製ではないのだが、そのツルっとした手ざわりには、
スタイリストがよく口にする未来感のある素材の感触があった。
高価なポーチなのだろうか。
まわりを見廻してみたがそれらしき落とし主はいない。
この辺りはホテルが多いから、
宿泊客の誰かがうっかり落としてしまった物かもしれない。
旅の人だったら今頃あわてているだろう。
そう考えて、駅前の交番に届けることにした。
それにしても、この小さな袋に何が入っているのだろう。
駅前の横断歩道。信号待ちで好奇心に負けてしまった。
薄っぺらい袋にはチャックさえついておらず、
ちょっと広げたら中がのぞけそうだ。
もしかすると、持ち主が分かるかもしれないし‥。
僕は自分に言い訳をしながらポーチの中を開けてみた。
まず出てきたのは子供のオモチャだった。
キレイな色の竹とんぼ。
僕らの少年時代には竹を削って作ったものだが、
近ごろの子供は「肥後のかみ」さえ知らないだろう。
懐かしさに、ついクルクルと廻してしまう。
どうやら、電動で飛ぶ仕掛けの竹とんぼだったらしい。
何かの拍子でスイッチが入り、
轟音をたててお台場方面の空へ飛んで行ってしまった。
このポーチの持ち主は子供なのだろうか。
大切にしているオモチャだとしたらわるいことをした。
あっという間に空に消えた竹とんぼ。
大人の僕でも驚くほどの勢いで回転していたが、
PL法はクリアしているのだろうか。
だが、続いてポーチから出てきた物への驚きといったら、
高速回転竹とんぼの比ではなかった。
ドアだ。一枚板でつくられた木製のドア。
どんな入れ方をしたら、こんなに大きな物が入るというのか。
やはりこれは女性用ポーチ。しかもお母さんのものだろう。
最近の主婦の収納術はすごいと聞いていたが、これほどとは。
僕の身長ほどもあるドアと、小さな白いポーチを見比べながら
アイデア主婦の裏ワザに感心してしてしまった。
ドアの作りはしっかりしているようだ。
自立するし、ノブもちゃんと廻る。
ドアを開けてみる。僕は自分の目を疑った。
品川駅前の雑踏は消え、
ドアの中に6畳ほどの部屋が広がっていたのだ。
勉強机と押し入れが見える。どうやら子供部屋のようだ。
うろたえる僕の耳に、子供が言い争う声が聞こえてきた。
「だってボクが大事なのはキミじゃなくてキミのポケットなんだ!」
メガネの少年が半べそをかきながら叫んでいた。
「ゴメン ゴメンよ‥見つけてくるから もうゆるしてよ」
謝っている子の顔は見えないが、その声は痛々しく枯れている。
少年は泣きじゃくりながら相手を責めたてる。
「見つけるって ポケットのないキミなんて役立たずのオンボロ‥」
「パシッ!」
気づいた時には、僕は少年を平手打ちしていた。
彼の言葉に我慢できず、思わず部屋に飛びこんでいたらしい。
メガネ越しのつぶらな目を泣きはらして、
驚いた顔で僕を見る少年。よく見ればまだ子供だ。
黄色いシャツと短パンがよく似合っている。
僕は彼に言う。できるだけやさしい声で。
「痛いよな、少年。だけどな‥
だけど、友達をなくす痛みはそんなもんじゃないんだ」
ハッとした顔で目の前の友を見つめ直す少年。
その視線には、さっきまでのトゲはない。
出すぎた真似をしてしまったようだ。でも、もう二人は大丈夫。
安心した僕は、入ってきたドアを開けると再び品川へと戻った。
駅前の信号もちょうど赤から青に変わるところだ。
歩き出そうとして、白いポーチを持っていないことに気づく。
どうやら彼らの部屋に落として来てしまったらしい。
慌てて振り返ってみると、不思議なことにあのドアも消えていた。
ま、仕方ないか。持ち主さんもきっとわかってくれるだろう。
あなたが品川でなくした、白くて半円型のポーチ。
あの、ドラえもんのポケットに似たデザインのポーチは、
小さな友情をしっかり守ってくれましたよ。
以上 ウソ日記でした。






