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ネイティブアメリカンフルート奏者、Mark Akixaの日常と非日常


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『哲学者とオオカミ 愛・死・幸福についてのレッスン』 マーク・ローランズ著 2010年

 

 

今年は戌年なので犬やオオカミに関する本をいっぱい読もうと思っているのですが、いきなりハートに突き刺さる作品と出会いましたよ。恋の矢

 

 

著者は哲学者。ブレニンという名のオオカミを飼っていましたが、本作を書く数年前にブレニンは亡くなりました。

 

ブレニンとの生活を通じて学んだこと、主に人間とオオカミの違いから、人間とは何か、人間にとって大切なものは何か、を哲学します。

 

哲学といっても難しい内容ではないのでご安心を。むしろ哲学者がどんな思考回路を持っているのかを楽しめるのです。ブレニンの死からニーチェの永劫回帰に思考が進むなんてやっぱり哲学者だなぁ。

 

 

筆者によれば人間はサルの側面を強く持っているのですが、

 

 

「サル」とは、世界を道具の尺度で理解する傾向の具現化だ。物の価値を、それが自分に役に立つかどうかで測るのだ。(p.12)

 

 

オオカミはわたしたちに、サルにとって価値あるものが愚鈍で無価値であることを教えてくれる。(p.14)

 

あなたはいろいろな存在であることができる。けれども、一番大切なあなたというのは、策略をめぐらせるあなたではなく、策略がうまくいかなかったあとに残るあなただ。もっとも大切なあなたというのは、自分の狡猾さに喜ぶのではなくて、狡猾さがあなたを見捨てた時に残るものだ。もっとも大切なあなたというのは、自分の幸運に乗っているときのあなたではなく、幸運が尽きてしまったときに残されたあなただ。(p.15)

 

 

翻訳された文章であってもなお筆者の高い知性を感じられます。

 

一冊を通じてそれが続き、理性的にも感情的にも読んでいて本当に共感できました。著者が途中からベジタリアンになるところにも、孤独な変わり者であるところにも(笑)

 

この本は、オオカミと暮らす経験を通して著者が成長する物語という側面もあり、そこもまた大きな魅力なのです。

 

表紙の裏にブレニンの写真が載っていますが、思ったよりもずっとデカかったです。

 

 

子狼だったブレニンをもらいに行くところから始まって、最期を看取るまでの話なので、ブレニンと一緒に過ごした日々がまるで自分の経験したことのように感じます。

 

映像で見た方がリアルに感じそうなものですが、私の場合はなぜか活字で読んだ方が感情移入できるのですよ。だからこんなに本が好きなのでしょうけど。

 

万人にとって名著なのかはわかりませんが、私にとってはこの上なく愛おしい一冊になってしまいました。またブレニンに会いたくなったら読み返します!

 

 

 

 

この本に欠点があるとすれば、それは犬を飼いたくなることですね。飼えない環境にいる方はご注意を(笑)

 

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2月18日、日曜日。

 

ほぼ毎年呼んでいただいている新潟県三条市に行ってきました。

 

なぜかいつも2月に呼んでいただくので、新幹線に乗っていると「トンネルを抜けると雪国であった。by川端康成」を毎回体験できるのですが、今回もトンネルを抜けるとそこは・・・

 

 

 

 

ぎゃああああああああああああああああああぁぁぁぁ!!!!

 

 

 

しかし心配ご無用。

 

新潟は山側は豪雪地帯なのですが、海側はそれ程でもないのです。

 

会場はここ。

 

 

それでも東京から来た人間がビビる程度には積もっていましたけどね。

 

地元の方に「マークさんが来るときはいつも大雪ですよね」と言われましたが、いえいえ、あなたたちがその時期を選んで呼んでいるのですよ(笑)

 

 

さて、今回はまず前福島県双葉町町長の井戸川克隆さんの講演がありました。

 

 

ご自分の体験されたことだけに、かなりリアルなお話。

 

「いざというときに政府がなにかをしてくれると期待しない方がいい」、「自分を守るためには自学・自習しかない」というお話でした。

 

 

 

そのような、かなり深刻な内容のお話の後でしたが、いつも通りの感じでコンサートをやりました。というか、いつも通りにしかできません・・・。

 

ただこの日集まった皆さんは知的好奇心の高い方ばかりだったとみえて、MCの間も多くの方がメモを取っていましたし、最後には急遽、質疑応答タイムも。

 

「正しい答えを得るには、正しく問わねばならない」と言いますが、素晴らしい質問が続出だったので私も素晴らしい答えを返すことができました。さすが三条市の皆さん。さすが俺。

 

 

お集まりの皆様、スタッフの皆様、ありがとうございました!

 

皆様のおかげでまた一つ素敵な冬の思い出が、私の「たくさんの冬」に加わりました。You know what I mean.

 

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『ヤノマミ』 国分拓著 2010年

 

 

さあ、来ましたよ。また名著が。

 

著者はNHKのディレクター。ドキュメンタリー番組制作のために約10年の交渉を重ね、ついに150日に及ぶアマゾンに住むヤノマミ族と長期同居取材が許されます。

 

そのドキュメンタリーは2009年に放送されたとのこと。「大反響」とのことなので、ご記憶の方もいらっしゃることでしょう。

 

 

先月に『ピダハン』というやはりアマゾンの部族を描いた作品を紹介しましたが、今回は取材したのが宣教師でも言語学者でもなく、日本人の普通のおじさんというのが特長です。

 

約10年も交渉期間があった割には彼らの文化や言語に関してあまりにも無知で、「おいおい、そんな調子で大丈夫なのかい」と思っていたら案の定、いきなり「お前らは敵か? ナプ(ヤノマミ以外の人間のこと)なら殺すべきか?」とシャーマンに因縁をつけられたりする始末。

 

出だしからしてまったく心許ない限りですが、しかし著者たちTVクルーの「傍観者」に徹した姿勢は素晴らしいです。狩りに同行しても足手まとい・役立たずとみなされ、長期同居しながらまったく敬意も友情も示されませんが、それがかえって我々文明人の不甲斐ないありようを自覚させられます。

 

狩りや儀式など森に住む部族の生活を描いていきますが、生まれたばかりの赤子はまだ精霊で、そのまま精霊として天に送るか、人間として育てるかは出産した母親がその場で決めるという風習が大変ショッキングでした。

 

私たちは自分が生まれ育ってきた価値観でモノを感じたり考えたりするものなので、その場面ではきっとさまざまな思いが駆け巡ると思います。ぜひそれを実際に読んで体験していただきたいです!

 

それにしてもアマゾンの部族に関する話は、毎度生と死について考えさせられますね・・・。

 

このような驚くべき風習があるかと思えば、彼らの社会で起こるイザコザの多くが男の浮気と女の嫉妬が原因で、そこは人類の普遍的な問題なのかと思うとおかしかったです(笑)

 

おかしいと言えば、彼らは「アハフー」と笑うという表記が多用されとても印象に残ったのですが、読後に映像も見てみたら普通に「アハハハ」と笑っているようにしか私には聞こえず、それだけが残念でした。

 

「アハフー」という文字を見ただけでも笑うようになってしまったので、耳で聞いてみたかったのですけどね。

 

 

『狼の群れと暮らした男』でも狼の群れから戻ってきた著者が社会とうまく適合できなくなったと書いてありましたが、本作の著者も取材を終えて東京に戻ってから「何かが壊れたようだった」と語ります。

 

 

ヤノマミの世界には、「生も死」も、「聖も俗」も、「愛も暴」も、何もかもが同居していた。剥き出しのまま、ともに同居していた。

 

だが、僕たちの社会はその姿を巧妙に隠す。虚構がまかり通り、剥き出しのものがない。僕はそんな「常識」に慣れきった人間だ。自分は「何者」でもないのに万能のように錯覚してしまうことや、さも「善人」のように振舞うことや、人間の本質が「善」であるかのように思いこむことに慣れきった人間だ。

 

ヤノマミは違う。レヴィ=ストロースが言ったように、彼らは暴力性と無垢性とが矛盾なく同居する人間だ。善悪や規範ではなく、ただ真理だけがある社会に生きる人間だ。そんな人間に直に触れた体験が僕の心をざわつかせ、何かを破壊したのだ。(p.310)

 

 

文明に対してなんらかの疑問を抱く人も実は結構多いのではないかと私は思っているのですが、人間や社会が文明を離れて無垢な状態になったとしたらどのようなあり方を示すものなのかを見せてもらえるような一冊でした。

 

後半では若い世代が文明社会と接触し始めて、ヤノマミもそう遠くないうちに「未開」の生活様式を失うであろうことが予感させられます。それが彼らにとって幸となるか不幸となるのかは誰にもわかりませんが。

 

文明の恩恵に浴している一員としては安易な文明批判をするつもりもないのですが、しかしちょっと接触しただけで一万年間ほとんど変わらなかったであろう生活様式を容易に崩壊させてしまう我々の文明の持つ危険性を、私たちはもっと自覚する必要があるような気がしてなりません。

 

 

本は映像作品では語られなかったディテールを、映像は活字では伝えきれないビジュアルイメージを互いに補完しあっているので、両方見るのがおすすめです。

 

 

 

 

ところで、街で怒ってる人を観察すると大概は「自分がいかに正しいか」を大声で主張しているものです。

 

そういう人を見かけると、「自分が絶対に正しい」と思い込める能天気さをちょっとだけ羨ましく感じつつ、自分とまったく異なる価値観に対する興味も理解もないのだろうなぁとも思います。

 

この世界の多様性を知れば知るほど、些細なことにいちいち腹を立てなきゃいけない理由が自分の中からどんどん失われていくのですよね。アハフー。

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