テレビ朝日60周年記念ドラマと銘打った5夜連続ドラマである。山崎豊子の原作がドラマ化されるのは、3回目らしい。映画も含めてかもしれないが。今回のテレビ場B組は昨夜完結したが、関東地区の視聴率は2ケタ台をキープし、営業的にも話題作りの面でも成功したようだ。最終の7話は15.2㌫だったという。

 

 もともとドラマは見ない方である。フィクションに身を委ねるほど暇ではない、という感覚である。山崎の小説は「沈まぬ太陽」など何作かを読んでおり、おととし大学病院に3ヵ月入院したことも手伝って、夜9時から1時間20分という枠にもかかわらず見た。4夜、5夜は2時間の長丁場だった。

 

 上昇志向の塊のような財前五郎が主人公である。浪速大学病院第一外科の教授ポストをめぐる闘いから話は始まる。教授ポストに就いてから行った手術の患者が死亡し、裁判を起こされる。一審では勝訴するが二審では敗訴し、1億6000万円の賠償を命じられる。最後は自らの膵臓がんが判明し、死亡する。

 

 教授になった財前の思い上がり、金にモノを言わせた証人つぶしなどが結果的に彼を追い詰める。しかし山崎は勧善懲悪が狙いでこの小説を書いたのではあるまい。では大学病院の裏側を暴くのが目的だったのか。

 

 原作が書かれて50年も経つのにこの作品が関心を呼ぶのは、医学界の本質が変わっていないことの表れだろう。今でも「医者イコールお金持ち」のイメージが定着している。患者の命を救うのが医師の役目だが、最後は地位や名誉やお金が優先される。大学病院の「総回診」は別名「大名行列」とも言われこの作品ですっかりイメージが定着した。

 

 実際大学病院で見た総回診は今では大分簡素化されているが、教授の権力は一時ほどではなくなったとはいえ絶大である。どんな患者にも分け隔てなく接する医師は存在するが、医学界は部外者が容易には立ち寄れない「別世界」である、今も。