関川夏央の本(再掲)

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ここ2週間ほどの間に、関川夏央の本を何冊か読みました。「中年シングル生活」(講談社)、「家はあれども帰るを得ず」(文藝春秋)、「石ころだって役に立つ」(集英社)。

関川夏央とは一回りくらい年齢が違うのですが、彼が書く70年代の記憶は中学から高校、大学と一番多感(笑)な時を過ごした私の記憶にも繋がるので、簡単に読み過ごすことができません。また、何気ない一文が「中高年」の一員になった私に小さなとげのように突き刺さります。


たとえば、自身の短い結婚生活の終焉について書いた「石ころだって役に立つ」というエッセーではフェリーニの「道」の主人公たちと自分たちを重ね合わせて、次のように書いています。


「私の場合、ジェルソミーナのメロディーにあたるのは、1974年晩春の夜の重たい空気のにおいだ。私はそれをふとしたはずみに脳裏に嗅ぎ、烈しい切なさを感じることがある。一瞬いたたまれない気分になりもするが、次の瞬間には再び日常にかえって、淡々と時間を費し、刻々と老化して行く。」


言い得て妙だなぁ

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「幸せのちから」

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録画しておいた「幸せのちから」を観た。



まさにアメリカン・ドリームであり感動ものとして制作されたのだろうけど、格差社会のきびしい現実のみが心に残った。


主人公は医療用光学機器のセールスマンで1ヵ月に最低2台売らないと夫婦と子供の生活は成り立たないが、高額なためなかなか売れない。


家賃、税金を滞納し、家庭は破綻し、主人公は子連れのホームレスになる。


6ヶ月後の正社員採用を目指し、証券会社の無給研修生の生活を送る主人公。


たまたま電話セールスで年金基金の理事長の家に行くが、豪邸にメルセデスのオープン・カー、週末にはフットボールの試合をVIPルームで観戦する生活。


かたや一晩の夕食と寝床を求めて長蛇の列を作るホームレスの人々。順番をめぐって醜い言い争いが生じるが、生きて行くためには争わなければならない現実。あぶれれば、駅のトイレで子供を寝せなければならないのだ。


主人公はもの凄い努力で6ヶ月後正社員になり、その後自分で会社を興して莫大な利益をあげたと字幕が流れる。



しかし、主人公はそういう幸福をつかんだろうが、それ以外の何千人、何万人は今日も食事と寝床を求めて並んでいるのだ。それは本人たちだけの気力、能力の問題だけではないだろう。




この映画が制作された後にリーマン・ショックがあったのだが、私たちは証券会社幹部の強欲を知っている。格差社会。いろいろ考えさせられる映画だった。






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最近、読んだ本

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最近、読んだ本。



「生きて行く私」(宇野千代著・中公文庫)

いつの時代にも肉食系女子はいたということか。ただ登場する相手がすごい・・・

文章は簡明で読みやすいが、ただそれだけ。深みも情緒も感じられなかった。☆3か。



「新宿鮫」(大沢在昌著・光文社文庫)

ブック・オフの100均本コーナーで暇つぶし用に買ってきた本。もう少し期待していたのだけれど、これが日本のハード・ボイルドの限界なのか。恋人のバンド・ボーカルとのからみなど半熟卵だね。読み終わって損した気分。☆2つ



「出版業界最底辺日記」(塩山芳明著・ちくま文庫)

エロ漫画雑誌の編集プロダクションの社長=編集長の日記。群馬県富岡市の自宅から飯田橋の事務所まで新幹線通勤なのだが、その通勤途中の読書量が半端じゃない。ジャンルも多岐にわたり、ただただ感心するばかり。東京都の有害図書指定をめぐっての業界団体や大手出版社への「意見」など、なるほどと思う。漫画家、印刷会社、行政とのやりとりを毒舌と皮肉まみれの文章で書いている。☆4つ



今、ノーマン・メイラーの「鹿の園」を読んでいるが長いので最後まで読み通すことができるのか、不安。




生きて行く私 (角川文庫)/宇野 千代
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新宿鮫 (光文社文庫)/大沢 在昌
¥620
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出版業界最底辺日記―エロ漫画編集者「嫌われ者の記」 (ちくま文庫)/塩山 芳明
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「夢の女・恐怖のベッド」(ウィルキー・コリンズ著・岩波文庫)読了。


C・ディケンズと同じ頃の作家で、E・A・ポーと並んで推理小説の元祖といわれている人だそうである。


この本も5年以上前に面白そうだと買って、読まずに抛って置いた本だ。


ヴィクトリア朝期の通俗小説がどんなものであったかという興味の対象にはなるが、現代作家の推理小説のように寝るのも惜しんで読むという類の本ではなかった。


☆2


同時並行して「生きて行く私」(宇野千代著・中公文庫)を読んでいるが、こちらは暴露的週刊誌を読むようで、面白い。いつの時代にも、過激な人間はいたということで、明治時代に生まれた人間が儒教的価値観で、生真面目一辺倒に生きていたわけでないということ。


読み終えたら、感想を書くつもりです。

「100万円と苦虫女」

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BSジャパンで放送していた「100万円と苦虫女」を録画し、今日観た。


女友だちとルーム・シェアするはずが、むこうはボーイ・フレンドと一緒ということで、3人で住むことに。


ところが、引越してみると相方は別れて、男だけ。嫌々、しかたなしで同居を始めるも、その男が子猫を勝手に捨ててしまったことから、頭にきて、男の家財を無断で廃棄。刑事告訴され前科がついたヒロインを蒼井優が演じる。


地域社会からも白眼視され、いじめのため中学受験したい弟からも前科者が家族にいたら合格できないといわれ、家をでるヒロイン。


海の家のアルバイト、農村での桃収穫のアルバイト。行く先々で100万円貯めたら、敷金分、引越し代、つなぎの生活費のめどがたつということで次の土地へ流れていく。


ヒロインのことを好きになったり、地域振興に利用しようとしたり人間関係ができそうになると、しがらみが嫌で次の土地へ流れていく。


農村の次にやってきた東京から特急で1時間ほどの都市のホーム・センターの花卉売場に職を見つけ、同い年(21歳)の少年と働き始めるヒロイン。


その少年も人付き合いが苦手で、なんとなく好感をもつヒロイン。


その後、映画は二人の恋の行方と弟のいじめ被害をからめて展開していくのだが、この映画、あまりストーリーは関係ない。


とにかく蒼井優がいい。けっして美人というのではないが、女の人のある時期の瑞々しさが伝わってきて、いいのだ。妙に世間ずれすることなく、清純というのでもなく、不器用に生きていく若い人の「若々しさ」がいいのだ。


う~ん、表現するのは難しいけど、蒼井優だけで☆4つ。


ちなみにオイラは蒼井優のファンでもないし、映画はフラガールしか観ていないことを断っておきます。(笑)



「氷海のウラヌス」

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「氷海のウラヌス」(赤城毅著・祥伝社)を読んだ。


著者には悪いがお名前もよく知らない方なのだが、帯の惹句にひかれて、読んでみることにした。


「日米開戦前夜、一隻の特殊艦が密命を帯びて北へ向かった。太平洋戦争勃発の影に隠された誇り高き男たちの物語」


ジャック・ヒギンズやアリステア・マクリーンの海洋冒険小説というくくりになるのであろうか。


読んでみての感想。少年向けの冒険小説としては、よく出来ているのではないか。抑制された筆運びも好感が持てるし、当時の日本が他国に先駆けて完成させた魚雷の性能など、はじめて知った事実もあり、書くに当たって相当の下調べをしているように思われた。


でも、大人向けではないな。どこがといわれれば困るのだが、全体に甘いような気がする。


☆3つ。



氷海のウラヌス/赤城毅
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「私の東京地図」

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「私の東京地図」(佐多稲子著・講談社文芸文庫)を読んだ。


そんな本が多いのだが、この本も5、6年前に面白そうだと思って買って、そのままずっと抛って置いた本だ。


読む本がなくて、たまたま本棚にあるのを手にとって読み始めた。


震災前、戦争前の東京の町とそこに暮らす人々を、自身の半生とともに描いて、趣き深い。


私自身、練馬という、根からの東京からしてみれば郊外、新興地に育ったので、この本に描かれる町の生活は、必ずしも馴染みのあるものではないが、それでも上野近辺、十条など、雰囲気のわかる土地もある。


佐多稲子という作家の名前は聞いたことはあったが、その作品を読んだことはなかった。


この本にも一部触れられているが、小林多喜二とも親交のあったプロレタリア文学の作家であったようだ。


月並みな表現がなく、上滑りしていないから、ある意味で読みにくいが、ゆっくりと読み進むうちに味わい深い文章である。


私なんぞに☆をうつ資格もないが、あえて評価するなら☆5つ。


私の東京地図 (講談社文芸文庫)/佐多 稲子
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「事件」

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なんとなく読む気がなく、抛って置いた「事件」(大岡昇平・新潮文庫)を読む。


途中で読むのをやめたページが124ページ。ここから489ページまでをいっきに読了。


裁判の制度をとりあげて、異質。


大岡昇平は推理小説として、この小説を書いたわけではないだろう。


後に松坂慶子、永島敏行、大竹しのぶで映画化もされているようだが、推理小説としては面白みに欠けると思う。


ただ裁判というものが、どんな手続きを経て、どんな書類、どんな文体を用いて審理されるものか、描いて秀逸。


☆4つ。



「家族ゲーム」

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随分前に録画して観ないままだった「家族ゲーム」を観る。


松田優作、伊丹十三も亡くなって久しいし、森田芳光監督も亡くなった。


家庭内暴力、いじめなどが顕在化した頃なのか。製作された1983年を調べると中曽根首相とレーガン大統領の時代、甲子園春は池田高校、夏は桑田・清原のPL学園が優勝し、東京ディズニーランドが開園した年であった。


映画音楽をLP盤でかける場面があって驚いたのだが、当時は撮影手法、演出等が相当斬新だったのではないか。


もちろん作品名は知っていたが、この年まで観たことがなかった・・・。

クリスマスのフロスト

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大岡昇平の「事件」を読んでいるが、のらずに全然ページがすすまない。


何か捜しものをしていて以前、読んだ「クリスマスのフロスト」を見つけ、なんとなく読み始めた。


530ページの長編だが1日で読了。


フロスト警部のシリーズは人気ミステリのベスト10にも選ばれているから、改めて紹介するのも野暮というものだが☆5。


「謀殺 下山事件」(矢田喜美雄 祥伝社文庫)を読み始める。


この事件のことは高校生の頃に読んだ松本清張の「日本の黒い霧」で知っていた。


最後まで読みきれるか、若干不安である。