多生の縁

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玄侑宗久(げんゆうそうきゅう)の『多生の縁』(文春文庫)を読み終えた。昨日は第136回芥川賞受賞者が決定したばかりだが、こちらのちょっと名前を覚え難い本著の先生も第125回の芥川賞作家である。そして禅宗の一派、臨済宗の坊さまでもある。芥川賞受賞作である『中陰の花』を読む前は正直あまり期待していなかったのだが、読み終えたときは、すっかりファンになっていた始末である。


この対談集『多生の縁』は、頑張りすぎてる人や疲れている人、何だか思い悩んでる人に、ぜひとも気軽に読んでほしい本である。仏教用語の難しい言葉は多少出てくるが、そんなことは問題ではない。賢人たちの正直な人生感や死生感を垣間みられ、気張った心を柔らかく揉みほぐしてくれるのだ。わからないことがあることを受け入れられれば、大方のことが解決する。無理に自分はこういう人間だという虚像を形成する必要などないのだと改めて教わった。いくら自分はこうだと決めつけても異なる自分の積み重ねにしかすぎず、日々瞬間で今の自分はいないのである。人は間柄や関係性からつくられるものだという仏教的な見方に同意してしまう。多くの賢人でさえ、膨大な時間を費やしても分からぬものは分からぬのであるから、凡人があんまり思い悩んでも仕方がないのだと大層安堵できるのだ。そしてこの書に出会えた縁(えにし)に感謝するのである。

多生の縁―玄侑宗久対談集/玄侑 宗久
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