2006-12-18 22:10:05

バクダンは獏談である

テーマ:ブログ

ここ最近眺めているのが内田魯庵『バクダン』(春秋社)である。魯庵翁も冒頭で語っているように、この題名の『バクダン』は爆弾ではなく獏談という意味だそうである。大正の末頃に読売新聞紙上に連載した随筆である。その収録内容はあちらこちらと多岐に及んでいるのだが、少しその目録を紹介すると、「病気よりも医者が危険」「不老不死と補腎」「葬式の蛮風奇風」「悪魔払ひ」「古物の大部分は贋作」「西洋の贋物談」「広告に利用された珍問答」「『虱』文学」「虱の趣味」「兵役拒絶の宗教」「危険思想の発生地」「革命と文人」「素人写真の大流行」「広告欄の神秘界」「東西広告の比較」「貧乏手紙」「日本人の恋の手紙」「青鞜」「火事は日本の名物」「定石を無視した家」などである。これらの内容だけでも十分面白いのであるが、購入する決めてとなったものがある。それは、「怨霊と物怪」「東西の化物屋敷の比較」「東西怪異の比較」「世界のドコにも無い日本の化物芸術」「百物語」などが収録されているからなのだ。翁は日本と西洋の化け物話などを比較して面白い考察をしておられる。


「日本人は生きている間は極めて表情に貧しいが、幽霊となると頗る表情に富んでくる」


「日本人は母の懐に抱かれている頃から文福茶釜の化狸や舌切雀の重い葛籠を聞かされて自然的に怪談教育を受けてゐる。(中略)相馬の古御所やお岩の家が若し保存されてゐたら、恐らく金閣寺や日光廟よりも一層著名になって、其模型が世界博覧会に出品されてヨリ以上に喝采を博したらう。希臘や埃及や印度には日本以上の妖怪が有るが、妖怪も二千年三千年を経たのでは地から掘出された化石動物のやうなものである。幽霊に生命があるといふのは少し妙であるが、日本の幽霊や化物は空想の産物であるのを知ってゐても凄味を感じさせる生命力を持ってをる。」


翁自体は化物などはあまり信じていないようだが、大正の世になり幽霊や化物を信ずるものはいなくなったと云っている。ただし、人が生きていく上で、神秘なことを喜ぶのは本能だから失われないともいっている。そして最後にこのような言葉で締めくくっている。


「ニュートンやガリレオや無数の大科学者が富士山ほどの実験を積んでも神秘は依然として神秘で存在している。之から先きアインシュタインが何十人何百人輩出しても百物語は此の世の有らん限り恐らく尽きないであろう。」


*一部常用漢字に変更しています。




内田魯庵『バクダン』(春秋社・大正十五年発行)

表紙がユニークでまた良いのだ。

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