自転車で大陸を越えるブログ

学生のとき自転車で日本縦断、オーストラリア横断。一旦は就職したものの、会社を辞めて北米縦断。次に目指すは中南米縦断。このブログを通じて自転車で海外を旅する楽しさが、なるべく多くの人々に伝わればイイなぁ…と思っています。


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銅峡谷を越えて200kmほどは何ごともなく過ぎた。だけど、国道24号へ向かう最後の長い下り坂でトラブルが起きた。


巨大なトラックが一日に何百台も通過する峠のアスファルトは、波打ちながらヒビ割れていて、堅く締まった林道のように荒れていた。荷物を満載にしたキャリアーが、突き上げるような振動に耐えきれず、『パキン』という乾いた音をあげて、あっけなく折れてしまったのだ。



イダルゴ・デル・パラルを目の前にして、5日ぶりのシャワーとベットに、気持ちがはやっていたのかもしれない。僕は時速50kmでわざとギャップをつぶすに走っていたのだ。キャリアーが折れない方がおかしい。明らかに僕の不注意だ。日本やオーストラリアも含めると2万km近い旅を共にして来た大切なキャリアーを自分の不注意で折ってしまったのだ。


愛着が芯まで染み込んだ使い慣れた道具を自分の不注意で壊してしまえば、普通は少なからず落胆してしまうものだと思う。けれど、僕は少しも落胆することはなかった。落胆どころか、コトバはおかしいけれど、実はちょっと嬉しかったぐらいだ。僕は、ようやくこの鉄の塊が自分のモノになったような気がしたのだ。「ついにこのキャリアーを折ってやったワイ…」という気持ちだった、といえば分かりやすいかもしれない。


この量産品のキャリアーが貧弱この上ないことは出発する前から十分すぎるほど理解していた。日本で新しくオーダーメイドの頑丈なキャリアーに付け替えることもできた。だけど、僕は今回の旅でもこのキャリアーを使うことに決めていた。このキャリアーは、その欠点も含めて、かけがえのない時間を共にして来た戦友のようなものなのだ。


どんな道具でも手垢にまみれ、傷つき、変形していくほど、いとおしくなるものだと思う。その道具と共に過ごした時間が傷や変形として刻み込まれるからだ。


僕は針金とスパナで折れた部分を固定して、なんとかイダルゴ・デル・パラルの街にたどり着き、鉄工所でその部分を頑丈に溶接してもらった。


この旅はいつかは終わってしまう。だけど、僕は今後何十年たっても、このキャリアーの荒々しい溶接痕を見るたびに、国道24号へ下る長い坂道の、空の色や、風の匂いを思い出すことができるだろう。道具に刻み込まれた時間は風化することはない。




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山岳ゴール(Meta Montana)』を通過したものの、僕にとってのゴールであるイダルゴ・デル・パラル(Hidalgo del Parral)はまだ遥か先だった。


峠を登り切ると、稜線からの絶景を楽しむ暇もなく、短くて急な下り坂のあとで、デジャヴのように巨大な壁が目の前に立ちはだかった。いったい幾つの峠を越えなければならないのだろう。


たたみ掛けるように現れる峠に遮られて、一向に距離が伸びない。一日の平均時速が10kmを割り込んでしまい、食料と水の心配をしなければならなくなった。こんなに前に進めないのは予定外だ。


我慢の走りを2日間続け、クリールから100kmほど走ると、広大な森の間をゆるやかにアップダウンする道に変わった。小さな雑貨屋が道端にポツポツ現れ始める。悪魔の手のひらのように広がる銅峡谷を越えたのだ。



雑貨屋で買った念願の冷たいコーラをガブ飲みして、ようやく一息ついた。こんな時に飲むコーラは死ぬほどウマイ。だから、自転車の旅はやめられない。




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クリールから東へ約340kmのイダルゴ・デル・パラル(Hidalgo del Parral)へ行くには、広大な銅峡谷の東側を越えなければならなかった。このルートは僕が想像していた以上にハードな山岳ルートだった。


峠の標高こそ2600m足らずだったけれど、10%前後の勾配が延々と続くのだ。峠の辛さは標高そのものよりも、勾配で決まることが多い。


壁のようにそびえる峡谷に、なかば強引に作られた九十九折りのスイッチバックを、一番軽い22×34Tのギヤでグリグリと登る。


脚の筋肉がミチミチと悲鳴を上げ、乳酸の鈍い痛みを感じ始めた辺りで、アスファルトにペイントされた『山岳ゴール(Meta Montana)』を通過した。先週、クリールで自転車のロードレースが行われていたのだ。



プロの選手達が全力で通過したであろう白いラインを越えただけで、アドレナリンがフツフツと湧き出し、峠の辛さなど忘れてしまった。


ゴールの白いラインには不思議な力があるのかもしれない。


そして、イダルゴ・デル・パラルまでの遠い道のりを手繰り寄せるように、ペダルに強く力を込めた。これから僕が通過する全ての峠に『山岳ゴール』のペイントがあれば、おそらく僕は2倍のスピードで進むことが出来るに違いない。


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天気が悪くて、実はまだクリールにいます。お気づきになっている人もいるかもしれませんが、昔の出来事をコッソリとアップしています。


  • 谷底の熱帯
  • 銅峡谷の深部へ
  • 銅峡谷(Barranca del Cobre)
  • ディビサデロ駅にて
  • ルータ デ メヒコ
  • チワワのお祭り
  • ボーダーを越える
  • エルパソ四苦八苦



    ではまたっ。




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    クリール周辺で観光やら、谷底へのトレッキングやら、休養やらで2週間近く停滞してしまいました。実は、メキシコに入国してからまだ850kmぐらいしか走っていません。さすがにこりゃイカンじゃろ。


    と、いうことで明日クリールを出発します。


    今後のルートは、メキシコ内陸部のイダルゴ・デルパラル(Hidalgo del Parral)を経由してドゥランゴ州の州都ドゥランゴ(Durango)まで南下し、西にそびえる「悪魔の背骨(Sierra Espinazo del Diablo)」を越えて、港町のマサトラン(Mazatlan)まで走り、そこからフェリーでバハ・カリフォルニアのラパス(La Paz)に渡り、バハ半島の先っぽを一周し、フェリーでまたマサトランに帰る予定です。その先は未定ですが、メキシコ内陸の世界遺産を辿るようにメキシコシティを目指す予定です。


    あまりに美しく、居心地のよいクリールで、のんびりしすぎました。ラパスまでは気合いを入れてゴリゴリ・ガシガシと走りたいと思っています。


    ではっ。


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    "どこなのコム"というサイトを使って、おおよその現在地がわかるようにしました。もしよければチェックしてみてください。なにげにBBSがあったりします。質問、感想などをBBSに頂けるとすごくうれしいです。


    現在はこの辺り を走っているハズです

    (New!! powerd by "どこなのコム ")


    ではっ。

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    チワワをスタートしてクリールを経由する自転車のステージレースが、僕がクリール着いた翌日に行われていた。メキシコの自転車プロレースを見るまたとないチャンスである。







    面白いことに、チームによって貧富の差がかなりある。金持ちチームは高級なパーツをふんだんに使った、いかにもプロ用の自転車に乗っていた。だけど、貧乏チームはジャージすらそろっておらず、日本のローカルチームのほうが高級なパーツを使っているんじゃないの…と思うような自転車に乗っていた。特に(自転車じゃないけど)チームカーにはその差が如実に現れていた。


    選手達の鍛え上げられた足を見ていると、そもそも僕達凡人とは遺伝子が違うんのだな、と痛感する。長く伸びた手足に、無駄のないシャープな筋肉が張り付き、まるで人間サラブレットのようなのだ。マッサージオイルで光るフクラハギがまぶしい。血統書付きじゃない駄馬の僕でも、この旅を終えるころにはこんな足になってればいいのになぁ、と思ったりする。








    自転車のステージレースのスタートはそれほど大事ではないのだろうけども、選手達が放つ殺気で会場が静まりかえる。そしていよいよスタート。惚れ惚れするほど躍動しながら、一斉に選手達が走り出す。うぅーん、たまらない瞬間だ。


    レースがスタートした後にはスポンサーによる景品投げが行われた。子供達が奇声を上げて群がる。僕もボールペンを一本ゲット。最後まであきさせない。


    自転車レースを満喫した一日でした。



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    谷の底ではバナナの木が生い茂り、オレンジがたわわに実を結んでいた。このオレンジがものスゴくジューシーで甘い。谷の恵み。 ガイドのオジサンの話では少し離れたところにはマンゴーの木もあるらしい。さらにこのキャンプ地の脇にはちょっとぬるいけど温泉が流れている。楽園のような場所。


    キャンプ地からさらに歩いて標高1000mのウリーキ川(Rio Uriqui)に行く。この峡谷を作るだした川。ガイドのオジサンの話では、嘘か本当か深い本流にはピラニヤ(!)がいるので浅瀬で水浴び。アンドリュー狂喜乱舞。 夜は盛大な焚き火&バーベキュー。銅峡谷を満喫した一日だった。


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    アレポナプチ(Areponapuchi)の山小屋のような安宿で、世界一周中のファンキーなイギリス人カップル、アンドリュとカレンに知り合う。


    彼らと、ガイドとロバをシェアして銅峡谷の底に下る一泊二日のハイクに出かけた。この辺りの詳しい地図はなく、とうぜんトレイルに標識はないので、谷へ降りるには道を熟知したガイドが必要なのだ。


    リストラ寸前のサラリーマンのような顔をしたロバの背中に3人分の荷物を「えいやっ」と縛り付け、ガイドのオジサンを先頭に早朝出発する。 グランドキャニオンでもそうだったけれど、谷を降りるにしたがって、まったく違った景色が広がる。


    道は超ガレガレの急勾配。すごく滑りやすい。底の磨り減った軽めのトレッキングシューズを履いていたので、本格的なゴツいトレッキングシューズが欲しいなあ…、と思いながらおそるおそる歩いていると、タマウマラの子供達がサンダル履きで飛ぶ様に駆け抜けていった。しばし唖然とする。


    標高2300mのアレポナプチから約5時間歩いて標高1200mのキャンプ地に着く。谷の底から見上げる銅峡谷は、また一段と雄大だった。


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    去年の旅でグランドキャニオンの絶景を見て以来、『キャニオン系』の景色にハマっていて、今回の旅でも随分色々なキャニオンを見て回って来たけれど、銅峡谷はその中でも一位二位を争うほどの絶景だった。


    大きさだけで言えば銅峡谷はグランドキャニオンの4倍(!)もあるらしいのだけれど、両方とも地上からの視界をはるかに越えてデカいので、例えばそれは、木星と土星の大きさの違いぐらいにしか認識できない。なので、その雄大さは甲乙付けがたい。


    あえて比較するなら、銅峡谷は緑が多く谷全体の風化が進んでいるので、グランドキャニオンほどの荒々しさはない。けれど、展望台以外はほとんど観光化されていないので、賑やかすぎるグランドキャニオンにガッカリしちゃった人は、人間の手で汚されていない自然そのものを楽しめる銅峡谷の方がいいかもしれない。


    とにかく、銅峡谷は間違いなく横綱級の絶景キャニオンだった。


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