愛知県豊明市からこんばんは。
自家焙煎珈琲豆散人アルジです。
「アイルランド短編選」というのを図書館で借りてきて、読んでいます。あまり馴染みのない作家が多いですが、アイルランドの風土や気質は面白そうです。
その中に、オフラハティという人の「妖精のガチョウ」という短編がありました。
ウィギンス婆さんが、ガチョウの卵を3つ貰い、雌鶏にそれを温めさせます。しかし、雌鶏は死んでしまったうえに、卵は2つが割れてしまいます。
残ったひとつが孵化するのですが、生まれ出たのはみすぼらしいヒナです。このヒナ、なかなか大きくならず、歩いたり、泳いだりするのも同時期に生まれたヒナよりもずっと遅れます。
ところが、どういうわけか、この未熟なヒナが近所の人たちによって、妖精だ、という扱いになってしまいます。そして、ウィギンス婆さんもその気になり、占いやまじないをやって、お礼にじゃが芋をたくさん貰ったりするようになっていきます。善良なお婆さんだったのが、すっかり変わってしまいます。
このガチョウの噂が近郊一帯に広まって、ついに司祭の耳に入ってしまいます。お婆さんpがやっていることは、魔女のようなものですから、この司祭がお婆さんのところへ来て、散々叱りつけます。
お婆さんも、すでにすっかり魔女の気持ちになっていますから、ひるみません。ところが、今までガチョウを崇めていた人たちは、司祭から破門されるのが怖くて、完全に寝返り、お婆さんを罵り、家に火をつけてやる、と脅します。
逆に、それまでガチョウの迷信に惑わされず、中庸の立場でいた人たちは、いきりたつ村人たちをなだめます。
なんとかおさまりがついたように見えたのですが、夜、村の若者たちは、ガチョウをおびき出して、殺してしまいます。
朝、それを知ったお婆さんは、狂人のようになって、村人や司祭を呪います。
でも、結局、ウィギンスお婆さんは、ガチョウ亡きあとも少数の信者に囲まれ、敬われます。それは、飲んだくれで、教会に行かないならず者の女房たちです。
彼女らに言わせれば、ガチョウがみんなに愛されていたときが、この村にとっていちばん良い時代だった、ということです。
以上があらすじですが、アルジはこういう話が大好きです。なかなか示唆に富む物語でもありますし、今の日本でも起こりそうなことですね。