「夫婦の卵子と精子は、その妻の卵管膨大部で受精する」
それが妊娠本来の始まりです。

ですが、これが難しい場合に、いかに医療で助けるか、というのが不妊治療になります。そして、その治療は必要最小限であることも同時に考えていくことも重要なことです。

もちろん、これ受精以外にもさまざまな理由によって妊娠が難しくなることがあります。


不妊治療は、子どもがほしいという夫婦の希望があるのに、夫婦の努力だけでは妊娠が難しい場合に必要となります。

「妊娠はしないけど、別に子どもはほしくない」というご夫婦には、妊娠しないという状況はあっても、不妊治療を必要とすることはないのです。

また、妊娠しない期間の目安として「避妊をしない性生活を1年以上送っている」ことがあげられます。

 

さて、不妊治療のスタートは検査からです。

しかし、妊娠を妨げる原因、要因を調べる検査で、なかなかそれが見つけられないというケースも少なくありません。

いわゆる検査結果に異常がない場合、「それならやっぱり自然妊娠ができる?」 と戻って考えてみるのですが、「夫婦の努力では妊娠できていない」という紛れもない事実があるわけですから、やはり自然妊娠では難しいと考えるのが妥当でしょう。

ですから、一通りの検査に問題となる、障害となっているところ、ことが見つからなかった場合、「異常なし」ではなく「原因不明」となるのです。


では、いったいどこに原因はあるのでしょう? 
それは、検査では明らかにならないところ、検査できないところに原因があると推測できます。

検査では明らかにならないのは、「卵子の質」「卵管采の異常」「胚の質」「精子の質」などになります。

 

卵子の質については、年齢に従って低下してくることは知られていますが、それを一般的な方法で検査することはできません。

この卵子の質については、体外受精をすることによって「受精ができるか」「受精が完了するか」「胚が成長するか」からある程度知ることができ、卵子の質、胚の質を考えることができます。

 

卵管采の異常については、子宮卵管造影検査でも知ることができません。

卵管に水腫がある、詰まりがある、かなり細いところがあるということはわかりますが、卵子をピックアップする卵管采の形がどうなっているのか、また可動域に問題はないのかなどについてはわからないのです。

これは、腹腔鏡検査をすることで確定診断することができますが、腹腔鏡検査は全身麻酔が必要な大掛かりな検査です。

卵管が癒着している、卵管采が閉じているなどの異常がみつかった場合には、癒着を剥離する、卵管采を開く手術、治療をすることも可能ですが、再度、癒着したり、卵管采が閉じたりするケースも少なくありません。

 

精子の質についても、よくわからないこともあります。卵子に比べて、圧倒的に数が多いので、その1個1個の精子の質を診ることはできません。

形のいいもの。生きているもの。動くもの。を抽出できるように、遠心分離機にかけたり、精子分離剤を重層したりします。

また、高倍率の顕微鏡で確認して空胞のないものなどを顕微授精の際には選びます。

(*精子の空胞については、さまざまな意見があります。精子頭部にある空胞が通常より大きい、または複数ある場合は、妊娠率が低いともいわれています。)

 

また、妊娠のメカズニムは、大変複雑です。

卵胞が順調に成長する、排卵することから始まり、十分な運動精子が腟内に射精されること、受精すること、卵管の中で胚が成長し無事に子宮へ運ばれること、胚盤胞に成長すること、透明帯から胚が脱出すること、子宮内膜に無事に着床し、胚が潜り込むこと、着床が完了し、胎児が育ち始め、胎嚢が確認でき、胎児心拍が確認できること。

ここまで、いくつもの複雑な過程をすべて順調に経て、妊娠が成立します。

それも、たった1カ月の間に起こるのです。

 

なにかが1つでもうまくいかなかったら、次に繋がらず、妊娠は成立しません。

でも、そのどこかに、どういう問題があるか、いくつもの検査を重ねても、そのすべて知ることができる検査は、残念ながらないのです。

 

夫婦でがんばってきたけど、妊娠しない。

でも、検査をしても原因も要因も特に見つからない。

 

こうした原因がよくわからない夫婦の中には、体外受精を勧められるケースもあります。

「これできっと妊娠できる!」と思ったのに、現実は厳しい。

でも、ときに奇跡も起こります。

 

体外受精を何度も何度もやって、「もうダメ!治療はやめた!」と半ば諦めかけたら自然妊娠! とか、「仕事も忙しいし、家族のことで、ちょっと大変なことが…」と治療をお休みしてたら自然妊娠! ということもあります。

精子が少ないから自然妊娠は難しい。顕微授精だよと言われ、治療を続けてきたのに、まさかの自然妊娠! ということなどが現実的には起こっています。

 

子宮がない、卵巣がない、卵管がない。または、精子がない(精巣で精子がつくられていない)など、明らかに卵子が排卵される環境がない。受精できる環境がない。胚が育つ環境がない。などの「明らかな原因」がない限り、検査で妊娠を妨げる問題や障害が見つからず、妊娠しないという現状であっても、実際には自然妊娠する確率はゼロではないということにもなります。

そこが、妊娠のメカニズムの不思議でもあるのです。

 

また検査によって妊娠を妨げる原因や要因が見つかっても、その状態が毎月経周期に起こるわけではなく、順調な月経周期がくることもあります。

それと夫婦生活のタイミングが合えば、やはり自然妊娠するケースもあるでしょう。

 

不妊に関する検査は万全ではありません。

でも、なにが妊娠を妨げているのか、難しくさせているのかを知るためには、検査はとても重要です。

検査で異常がなかったら「異常なし」ではなく「検査で明らかにできなかったところに妊娠しない問題や障害がある」と考え、不妊治療が始まります。

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