1980年頃に夫のリンパ球を使った免疫療法が行われるようになり、多くの病院で調査、研究をし、多数の成功例が報告されてきました。
しかし、これを疑う声も少なくありませんでした。
そしてこのリンパ球免疫療法は効果がないという論文がランセット(*イギリス医学雑誌:レフリー制度)に発表され、アメリカ食品衛生局(FDA)では感染症になる危険性などから、臨床研究目的のみで行い、通常の診療としては認めないという勧告を出しました。
これによりリンパ球免疫療法は世界的にも減少傾向にあるようです。しかしながら、日本国内ではこの免疫療法を行っている病院、クリニックも少なからずあります。

また、限定的に、効果のあるタイプもあるのでは? という考え方もあるようです。
そもそも夫のリンパ球移植がなぜ行われたかは、臓器移植による拒否反応を予防、軽減することから応用されたものです。
それは臓器提供を受ける際、その臓器を提供する人の血液を事前に輸血することで、移植後の拒絶反応を軽くし、生着(移植臓器が定着して本来の機能を果たすようになること)できるようになるという療法です。
胎児は半分は母親、半分は父親の遺伝子に由来することから、臓器移植のような拒絶反応から流産が起こるのではないかという仮説があり、そこから胎児を移植臓器に見立て、事前に夫のリンパ球を妻に移植しておくことで、拒絶反応つまり流産を予防しようと考えたわけです。

しかし、先にも紹介したランセットでの発表では効果が否定されています。
二重盲検法(実施している薬や治療法などの性質を、医師にも患者にも不明にして行う方法)で、夫のリンパ球を注射したグループと滅菌生理食塩水を注射したグループにわけて調査した結果、リンパ球グループは46%(31/68人)、滅菌生理食塩水グループは65%(41/63人)となり、夫のリンパ球移植に効果は認められませんでした。
その後も、いくつもの追試が行われていますが、それらを総合したコクランライブラリー(過去の多くの臨床試験などの論文やデータからエビデンスレベルの高いものを集めて吟味する)では有効性は見い出せないとしています。
日本では、日本産科婦人科学会が夫リンパ球免疫療法に関して「原因不明習慣流産に対して夫リンパ球免疫療法が行われてきましたが、最近のメタアナリシス(複数の研究結果を統合した分析)ではその有効性を示すデータが得られていません。
加えて2002年に米国FDAが本療法は臨床研究に限定して行われるべきとの勧告を出して以来、その実施数は世界的に減少していると考えられます」と冒頭に述べ、輸血の副作用として起こる重篤な移植片対宿主病(GVHD:輸血血液中のリンパ球が患者の組織を攻撃、破壊する)の発症も考えられることから、その予防のために夫のリンパ球移植には放射線照射血液を使用するようにと注意をしています。

この治療を勧められた場合、その効果について、また輸血血液の安全性について確認を十分にされてから受けるようにしましょう。

 

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