後日、さっそくその専門施設に夫婦そろって行き、検査を一通り受けてみたところ、互いに大きな異常は見つからなかったものの、私の精液検査の所見で、多少奇形率が高かったこと、また、妻の方も粘液が強い酸性とのことで、精子を殺してしまっている可能性があることなどがわかりました。
医師の見解では、このまま普通に夫婦生活をしていたのでは、たぶんできないだろうし、人工授精でも厳しいだろうとのこと。
私たちも納得し、この施設で初めての体外受精に臨むことにしました。
この施設に通うため、妻は仕事を辞めて治療に専念することにして、私も勤めていた会社がゴタゴタする中での、最初の体外受精だったことを覚えています。
ボーナスを工面しての治療で、その時は新鮮胚移植でした。

 

 

卵子を体外に取り出して人の手で受精させてから戻すという流れに、かなりの戸惑いもありました。
でも、この方法しかないということで、高額費用に驚きながらも期待はかなり大きかったのを覚えています。
ところが、数日後、判定日で受診したところ、結果は「化学流産」。
受精卵が着床できずに、流れてしまったとのことでした。
この結果に妻は激しく落ち込み、あまりのショックから失踪してしまったのです。
連絡もつかず、今までこんなことはなかったですし、本当に驚きました。
心配で義母に連絡すると、「大丈夫でしょう」との返事。
ひたすら待つこと数日、やっと帰ってきたのですが、ホテルや友達の家にこもって泣いていたというのです。
いや~、その時の心配は実はまだ序の口だったのです。
私は妻が心配だから一生懸命になっているのに、妻は、私が化学流産のことについて何も感じない! と大変な勢いで責めてくるのです。
妻にとっては、ひとつの命が失われたという大きな大きなショックだったのは分かるのですが、ある種の自然淘汰でもあるだろうし、どこからが命と呼べるものなのかもわからない、受け止め方の違いがあり、途方にくれました。
これはもう、最悪でしたね。
ご存知ですか?
野坂昭如が『男と女の間には細くて長い川がある』ってよく唱ってましたが、しみじみそう思いましたよ。

 

僕の体験記*体外受精で妊娠*子どもが授かった!  その1

 

東京在住  41歳 男性 (Aさん)

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