これほどおそろしい物語があろうか?否。
夜行 Amazon |
鞍馬の火祭の夜、かつて同じ英会話教室で学んでいた仲間たちが集う。
十年前の同じ祭りで、
仲間の一人長谷川さんが行方不明になり、皆が集うのはそれ以来。
長谷川さんは見つからず、皆の心と記憶に楔を残している。
今回の主催者となった大橋は、京都にある画廊で岸田道生という銅版画家の描いた連作「夜行」に出会う。
天鵞絨のような黒の背景に白の濃淡だけで描かれたそれには、一人の女性の姿があった。
目も鼻も口もないその女性は、こちらを招くように手を上げている。
大橋の声掛けで集まった中井、武田、藤村、田辺は、皆が「夜行」を知っていた。
尾道で、奥飛騨で、津軽で、天竜峡で。
はたしてそこは、このせかいなのか?
よるがえいえんにつづくせかいなのか?
恐怖を拒否出来る世界は、さほど恐ろしくはない。
恐怖を恐怖と認識できず、知らず受け入れてしまう世界の中に取り込まれることこそが、恐ろしき事也。
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
文体は、今までのもりみー節よりずっと読みやすいものになってます。
ヘンテコな言葉のチョイスもあらへん。
せやけどこれは、
もりみー初心者や、楽しくオモチロイ話を期待してる人には、
なんやわからん…ってなる物件かと思われ。
でも、夜は短しも四畳半も。
ほんわかしたオモチロイが全面に出ているから、
うつくしいファンタジーになってはるけど。
違う側面から見たら、
「夜行」の世界観と、特別代わりはないのかもしれないと、ちょっと思う。
とにかく怖い。
読んでいて鳥肌が立ちっぱなしやった。
不穏…この言葉が大層似つかわしい。
マネキンのようなのっぺらさんが、こちらを呼んではるというビジュアルがまず怖い。
しかもカラーじゃなくモノクロ。
場所も電灯の下とかトンネルの前とか二階の窓とか、絶対ビジュアルイマジネーションの強い人ほど怖いんちゃいますやろか。
文字を脳内で絵面にしちゃう人は、((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル
タンスの陰に隠れて見てしまったそれとか。
「死相がでている」と告げるミシマさんとか。
大親友だった女の子とか。
一見普通のJKとか。
こちらがわとあちらがわには、そんなに大きな隔たりはなくて。
何かの拍子に、ふと、あちらのせかいとこちらのせかいが交差するん。
こちらの日常の障子紙一枚で隔てられた場所に、あちらは存在してはるん。
障子紙やから破れてしまうこともあり、
下手したらそこからあちらの世界に移ろっていくこともある。
貴方は自分の存在するこの日常がきちんと確立したものだと断言できまして?
些細な違和感、小さな棘が突き刺さったような感覚、
それは貴方が、すでにあちらのせかいにいるからではないのかしら。
どの話も皆、語り手がどうなったのかが不明やねん。
いや、あちらのせかい(=彼岸の世界)に行ってはるんちゃうのんこれ?やねん。
よるがえいえんにつづくあちら。
朝が来るこちら。
よるのやみのなか、かおのないおんながよんでいる。
そして、あのラスト。
あれを少しでも期待の持てるハッピーエンドだと思える人は幸せだと思う。
よるはおわり、あさがきて。
あさはいつか、よるになる。
えいえんにつづくよるになる。
夜行は夜行列車であり、百鬼夜行である…そうですが、
夜光でもあるんじゃないかなと。
夜の光は暗闇の一部を切り取るけれど、
白白した世界に色はなく、
夜の闇はより一層深く深く…
とこしえにつづいていくのではなかろうかという
きょうふにからめとられる。ポチ
↓