【耳ふさいでて】

(8)【ふなっしー 野心の果てに】

ふなっしーの野郎、自他ともに認める《スター状態》だ。

僕達はちと油断し過ぎたかもしれない。油断してる間にバージョンアップされてた。「2013年のふなっしー」と「2014年のふなっしー」ではモノが違う感じだ。五段階は上げてきている。

そもそも、「2013年のふなっしー」は《ゆるキャラ》群の中にあって頭二つは飛び出していただろう。それは認める。

デフォルメの効いた外見は奇抜であるよりは可愛く、その動きは可愛くあるよりは奇抜だった。しかも奇抜で過剰。身体能力で頭六つは抜けていた。(他の地方自治体が《おらが村のご当地キャラ》を「ふなっしーと比較してくれるな」と泣きを入れたのもやむなし、といった独走状態だった)
キメ言葉の鮮やかさも含めて「外見と動きと喋り」の三拍子が揃っていた。それは圧倒的な資質の差(中に入っているヒトの)だ。
ふなっしーは【内側の違い】にモノを言わせて《ゆるキャラ業界》を疾走。そして、独走した。

「2014年のふなっしー」は《ゆるキャラ領域》を離れ、《芸人・タレント領域》にシフト。
一括りで認識されていた《ゆるキャラのブーム性》をかなぐり捨てて、単独の能力で勝負に挑んだ。それは、《ゆるキャラ業界》という「(一種の)慈善事業的な善意の枠」に守ってもらえる(それこそ)ユルい状況を放棄することでもあったし、比較対象が《ゆるキャラ》から競争力の強い《芸人・タレント》に変更されるという過酷な試練を自分に課したに等しい。

そして今や、ふなっしーは特番等の目玉企画として堂々と「冠」を持ち、関連商品はグッズだけでなく書籍・食品と手広い。ふなっしーのシフトは成功した。

ふなっしーの役割も2013年とは完全に変わったようだ。

トークの比率があがったよね。
意外としゃべれるのな。語尾の「なっしー」が邪魔に聞こえるほど、そしてガッカリするほど喋りの能力はまともだと思う。実はユルくなかったというのも露呈したわけだが。
それと、アクションが数段ステージを上げた感じ。初期の「さしあたって登場時にジャンプと首振り(ヘッドバンキング)」という《自分内で完結するアクション》のプレゼン期はとうに終わり、今は「普通のアクション」までこなすのね。ダイビングとか。そそ、文字通りのアクション。(いつも坂道を猛スピードですっ飛んでいく印象がある)

身体も張れるし、トークもイケる。見た目の訴求力は(嫌でも)ピカイチ。
結果的にバランスのいいタレントだ。

第一期ふなっしーの特性だった「外見(ハードウェア)」のユニーク性は、第二期への移行に伴い「能力(ソフトウェア)」にシフトされた、と言える。
本当のホントの文字通りに「中身がモノを言い始めた」。
中身、よく喋るんだ、実際。

自分でも「有能さ」を認めているはずだし、テレビ局もメーカーもイベント制作者も「ふなっしーの訴求力」を高く期待している。(っつか、僕にはふなっしーに丸投げしているようにさえ見える)

ふなっしー、能力高いな。

やはり、僕達は油断し過ぎたのかも知れない。

「千葉県」とか「三頭身」とか「非公認」とかいった《ヌルい情報》を僕達が真に受けて甘い顔してるうちに出し抜かれた感じだ。

ただ、現在のふなっしーの高機能タレントとしての完成度に問題が無いわけではない。そのスペックを個別に見れば、どれにも過去のモデルケースがあって、初めて見たように思えないのさ。純粋なオリジナルでない感じ。

■ダイビングやアクロバット飛行に挑戦する「身体能力」と「無謀な冒険心」と「無茶な頑張り」は言うまでもなくガチャピンから継承したものだろう。体系もかぶる。
■同一口調の喋りにアドリブきかす話芸はデーモン小暮か(氏神一番の線も)。
■アチコチのロケに出て、邪魔にならない上に、それなりに気の利いたギャグを連発するのはホンジャマカの石塚英彦を思い出す。
■使い勝手のいい便利感は関根勤とか勝俣州和。
※総じて言えば、ふなっしーは勝俣と役割が近いのかもしれない。「シャー!」と「なっしー!」の気合の質とか。

こうしてみると「2014年型ふなっしー」は《いいとこどりの寄せ集め》なのな。しかも、案外と「まともなライン」を寄せ集めて切り貼りしていることがわかる。
「足し算型のマーケティング」と言うか、ヒネリのない素直な戦略だ。

つまり、ふなっしーは「オリジナリティから遠いところ」に在るわけです。
ソツなく小器用だけど凡庸で個性の薄い「便利タレント」というか。辰巳琢郎みたいな。(←そーいうこと言ったらダメですか…)
ところが何故か「一定のオリジナリティ」を担保しているよね、ふなっしー。そこが辰巳琢郎とは違う。(←ごめんなさい、もう言いません)

秘密は、あの「見てくれの独自性」ですね。
アレを隠れ蓑にに最後はオリジナルに着地させてしまう。

今度は外身にモノを言わせてんだ。

今にしてあの着ぐるみには魔術がある。特殊なフィルター効果と言うか。言うならば、要素自体はあくまでも足し算であり、1+1を2にしかしないのだが、あの「見てくれ」が最後に「×9」をしてしまう感じ。

例えて言うならば、
ふなっしーをメインキャラにした『ソースラーメン』
ってのが売られていて、あれがまさに1+1=2なわけですよ。ソース焼きそばの風味とラーメンを合体。もちろん、クソまずいわけなんだけど、「ふなっしーらしいよな」なんつって最後に「×9」しちゃうから、得点は18点。(2×9だから)
あの味で18点だぞ、おい。
(ふなしーの要素の足し算と「ソース焼きそば+ラーメン」ってのが実は噛み合っていないけど、話が面白いから残した)

この場合、「ふなっしーらしい=クソまずい」というユーザーの割り切りが事態(得点)を底上げさせてしまうわけですね。
これぞ、《ゆるキャラ》の武器。ズルい武器。素顔の野心を隠して、可愛い姿とふざけた動作・態度でユーザーを油断させて「欠陥」を「好感」にすり替えてしまう。
「可愛い顔してあの子、割とやるもんだね」ってなもんだ。

《ゆるキャラ》の恩恵を隠れ蓑にする限り無敵だな、ふなっしー。
このまま放置してたら、あっという間に《次のフェーズ》に進んでしまいそうだ。増長してっからね。

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ねぇ、ちょっと耳ふさいでて。
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今後のふなっしーの動向を占う。
ふなっしーの野心はどこへ向かうのか。

■まさかのドラマ出演(ふなっしー役ではなく、普通に刑事役とか教師役)
■千葉県知事に立候補("あの人"の後任で。公認なき後任。なんちて)
※岩手県議会議員時代のザ・グレート・サスケみたいに「着ぐるみ脱げ」って言われるな、きっと。
■格闘技転向とか(レアな武術の使い手的な)
■小説書いたり、文化人路線(これが一番ムカつく)

おいおい将来性高いじゃねーか、ふなっしー。
まぁ、いろいろと下駄を履かせてもみたんですけどね。

あれぇ…?
ふなっしーの可能性を挙げていたら、な~んか、僕にはふなっしーが「あるタレント」とダブって見えてきたぞ…。
このまま放置しておいたら辿り着いてしまいそうなゴールのイメージっつか。

要因は以下の5点

(1)外見的特殊性(異形感っつか)
(2)言葉の特殊性(訛り感っつか)
(3)嫌な一生懸命さ(暑苦しさっつか)
(4)お仕着せ感(特に子供に対して)
(5)変な使命感(使命感の空回り感・独りよがり感っつか)

ほら、こうして「ふなっしーの特性」を俯瞰で見渡してみれば、ふなっしーの五大要因と合致する「大物タレント」の存在が浮上する。
え、あのヒト、大物なのかな…? まぁいいや、歌手で俳優でタレントで作詞家だ。

その大物とふなっしーのイメージはピタリと重なる。

武田鉄矢…。

長髪を耳にかきあげながら「なんですかー!」ってのと、手や足を無駄に振りながら「なっしー!」ってヤツが気持ち悪いほど重なって見える。
なるほど、刑事と教師ね…。
武田鉄矢自体が着ぐるみ的だしな。

二代目武田鉄矢の登場かぁ…。気が滅入る。
先代がやっとおとなしくなってくれたってのに…。

我々はそろそろ《ふなっしー問題》に本気で手を打つべきなのかもしれない…。我々に残された時間は少ない。

ところで、ふなっしーが武田鉄矢から『緑のたぬき』の公認キャラを継承した場合…

まさか、またソース味にしねぇだろうな…。