ゼロ年代の想像力 (ハヤカワ文庫 JA ウ 3-1) | 誇りを失った豚は、喰われるしかない。

誇りを失った豚は、喰われるしかない。

イエスはこれを聞いて言われた。
「医者を必要とするのは、丈夫な人ではなく病人である。わたしが来たのは、正しい人を招くためではなく、罪人を招くためである。」
(マルコによる福音書2章17節)

気鋭の評論家、宇野常寛氏のデビュー評論です。

 

文学、アニメ、ゲームからテレビドラマまでを縦横無尽に

 

論じ、更には文庫化する際に4万1千字の原稿を語り

 

下ろしたものが収録されております。

 

膨大な情報量です。

 

 

 

 

 

 

本書は気鋭の評論家、宇野常寛氏のデビュー評論です。

 

2008年の刊行以降より、3・11後までを4万1千字の長きに

 

わたって語り下ろしている原稿を追加して文庫化された

 

ものであります。

 

実のところを言ってしまうと、本書で取り扱われている文学、

 

アニメ、ゲーム、テレビドラマのうち、話の内容についていく

 

ことができたのはせいぜい2割がいいところで、僕個人に

 

限って言うと、ゲームやテレビドラマをほぼ一切見ないし

 

やりませんので、ついていくのがとても大変でありました。

 

また、文学についても村上春樹は『ノルウェイの森』

 

『海辺のカフカ』そして『1Q84』などのメジャー作品くらいで

 

ライトノベルはほぼ読まず、金原ひとみ、綿矢りさをはじめと

 

して白岩玄などの作品はほぼいっさい見ていないことに

 

改めて気づかされました。アニメについても

 

『新世紀エヴァンゲリオン』(俗に言う『旧劇版』)以降に

 

インスパイアされて作られた「セカイ系」と言うジャンルの

 

作品群があるということをここで初めて知ったので、

 

「ゼロ年代」という時代になって、かつて自分が好きで

 

どっぷりと浸っていた世界から以下に遠く離れてしまったのか

 

ということをこれを読みながら痛感してしまいました。

 

宇野氏はよく自身がメインパーソナリティーを勤める

 

『オールナイトニッポン0』(現在は終了)にて


「サブカルチャーやポップカルチャーを批評することは

 

日本社会全体について語っていることと同じことなんだ」


と幾度と無く標榜しており、そういう視点でこれらの

 

サブカルチャーに接していたことが今までほとんど

 

無かったので、宇野氏が愛してやまない仮面ライダー、

 

とくに「クウガ」以降の「平成ライダー」に関する記述を

 

読んでいると、作品世界と我々の棲んでいるこの社会が

 

以下に地続きであるかということが本当に良くわかり、


「なるほどなぁ」


と思いながらページをめくっておりました。

 

宇野氏が本書の中で幾度と泣く指摘しているターニングポイント

 

としてみなしている年は1995年であり、僕がこの年を

 

振り返ってみても、オウム真理教の『地下鉄サリン事件』あり、

 

後に社会的な現象を巻き起こした『新世紀エヴァンゲリオン』

 

がTV放送されていたりと、今思っても本当に現在にとてつもない

 

影響を及ぼしていた1年であったなと考えてしまいました。

 

そういった世界の中で碇シンジ君に代表される「引きこもって」

 

しまうタイプと夜神月のように決断主義を用いて

 

バトルロワイヤル式に戦っていくというパラダイムの変化に

 

ついての論評も身につまされるものがあり、そういった事例

 

として沢山のアニメやゲーム作品が挙げられていくのですが、

 

残念ながら僕はそういうものに全くといっていいほど触れて

 

おらず、


「あぁ、そういうものなんですか」


というだけの感覚しかもてなかったというところが返す返すも

 

残念でなりません。

 

自分がこれを読んでいて痛感したことは、多感な時期にほぼ

 

『リアルタイム』で流通していたサブカルチャーやポップカルチャーを

 

完全にスルーしてきたなということで、全くの『一般人』から

 

すれば僕だって十分に「そちら側の」人間であるはずなのに…。

 

宇野氏及び本書との『差異』は一体何なのだろう…。

 

そんな疑問が最後までぬぐうことができずに本書との

 

『距離感』というものが的確につかめなかったなとは

 

正直感じております。

 

「語り下ろし」の部分で宇野氏が


「『ゼロ年代の想像力』の最大の欠点はAKB48を扱って

 

いないことです」


とおっしゃっており、それが現在までに至る怒涛のAKB論と、

 

自らのラジオのコーナーで『世界の真実』とまで言い切る

 

「推しメン」横山由依ちゃんへの「推し」へと繋がっていって

 

いるのでしょう。

 

サブカルチャー。ポップカルチャーを時代の流れとリンクさせて

 

縦横無尽に語っているので宇野氏の話について聞ける方は

 

純度1000%の『あちら側の人間』であることは僕が保証しますが、

 

ただ消費されるこれらの『コンテンツ』は社会を写す『鏡』であると

 

いうことを改めて教えてくれたという意味で、本書との出会いは

 

良いものであったということを結びの言葉に換えさせて

 

いただきます。

 

 

 

 

 

 

 

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