Vivienne WestwoodやMARC JACOBS、PAUL&JOEなどの国内外のアタッシェ・ドゥ・プレス
業務を手掛け、また、日本でアタッシェ・ドゥ・プレスの人材育成の学長などもされている
伊藤美恵さんの著書。
少し前にNHKのプロフェッショナルの流儀でこの方を特集されており、日本にこんな方がいる
のかと軽い衝撃を受けたのだが、何に衝撃を受けたかというと、業績はもちろん、現在66歳と
いう年齢であるにも関わらず、全くそのような年齢の方には見えなかったこと。
最初は、見た目的な若さなのだろうかなどといった興味から番組を見ていたが、
番組が進む中で、手がけている領域がファッションであることや、また、アタッシェ・ドゥ・プレス
という、常に人やメディアとのコミュニケーションを扱うプロフェッショナルだからこその、
「鍛え上げられた若さ」なのだろうと感じるに至った。
番組では昨年12月に渋谷にオープンしたForever21の店舗オープンイベントにて、
商品を着せた本物のモデルを、ショーウィンドウにマネキン的にディスプレイさせるという彼女
のユニークなPR戦略などを紹介していたが、改めて彼女自身に興味を持ち、著書を読んで
みることに。
以下、印象的だったワードをメモ。
・『アタッシェ・ドゥ・プレス』とはフランス語で直訳すると『報道担当官』。プレス=メディアや
ジャーナリストを担当する人という意味であり、メディアやジャーナリストと接しながら企業や
ブランド、特定の商品やサービスの情報をメディアを通して消費者に伝え、販売促進や
ブランド・イメージ向上に結び付けてゆく仕事。
・あらゆる企業の社員が自社ブランドの「代表」であり、アタッシェ・ドゥプレスである、という
自覚が必要。
・ブランディングというのは、その企業なりブランドなり、はたまた人なりが本来持っている
(客観的に見て)優れた要素、題材をいかに組み立てていくかということ。
・真のグローバルとは全世界的に、同時に同じ情報と戦略をもってコミュニケートすること、
が重要。
・お客様のほうを向いたPRの精神をクライアントの現場に伝授するには、徹底的な
コミュニケーションが必要。そのブランドの魅力をまず見つけてあげ、そのうえで市場との
ミスマッチを指摘し、商品の見せ方をコーチする、といった作業を何度も繰り返し、現場の
方たちのハートをつかみ、その会社のPR部門にPRのスキルを『遺産』として伝える。
・アタッシェ・ドゥ・プレスの仕事に必要とされる条件
1.企業やブランドという送り手側の意識に完全に同調できるということ。
2.ユーザーである消費者の目を失わず、その視点で対象となるブランドを見据えること。
3.この送り手と受け手という相反する両極端な立場を、常に自分の中に同居させておくこと
・『プロ魂』を持って企業やブランドの”共犯者”となり、同時に、純粋な『ミーハー心』を抱いた
消費者であり続けること。
・日本のファッション業界のアタッシェ・ドゥプレスはあまりにファッションメディアが多様化し、
各ブランドとメディアの関係が強固になった為に自分自身でマーケティングしたりPR手法を編み出
したりする機会がどんどん減ってしまった。また、雑誌も内容が画一的になりつつある。
・実際に行うべき仕事の中身は、すべて「コミュニケーション」。経営者やデザイナー、開発者の経営
方針や商品にこめた思いを、彼らと徹底的に「コミュニケーション」とることで、理解する。すなわち
彼らの”共犯者”となる。また、販売現場の人間や実際の消費者とも「コミュニケーション」をとり、
彼らの”代表”として市場のニーズや傾向を伝え、経営判断や商品設計に生かしてもらう。
・経営者やデザイナーといった「プロ」はややもすると、ひとりで何でも決めてしまう””独裁者”に
なってしまうおそれがある。その判断が時代とずれていたり、市場とずれていたりしても配下の
スタッフが否定することが困難で、また否定したとしても用意に耳を傾けない。”孤独なプロ”
である経営者やデザイナーの「耳」となり、市場=消費者の声、すなわち”ミーハーの本音”を
きっちり伝え、彼えらを”ハダカの王様”にしないというのがアタッシェ・ドゥ・プレスの大事な仕事。
・”共犯者”の関係を築いて初めて、いざというときに苦言を述べることができる。
・テクニックではなく人間性でメディアや人を魅了する。
自分が携わっている業界とは全く異なる世界の方ではあるが、コミュニケーションを扱うという点で
はどのビジネスにおいても通じるポイントが多い。
情熱がなければ伝わらない!アタッシェ・ドゥ・プレスという仕事