先週末、新刊『官能植物』の見本本を、直接手渡しで、
いただきました。
この本は、出来あがるまでに、筆にも口にも尽くしがたい
大変な紆余曲折や障壁がありました。
何度、出版は絶望的と思ったことか…。
それゆえに、発売日が決まってからも、あまり実感が伴わず、
形になったものを手にして、緩やかではありますが、ようやく実感が湧いてきました。
カバーなし、帯のみ、箔押し、黒い表紙に小口が銀という、
型破りかつ、挑戦的な装幀。
そして、持ち重りするほどの重量感です。
異彩な存在感を放っています。
これは、もう、本というよりも、
造形美術作品といっても良いのではないでしょうか。
この本を世に出すことができて、本当に幸せです。
2013年にこの本の企画を提案した際に、
担当編集の山本耕平さんに「この本を、木谷さんの代表作にしましょう」と言われて、どんなに嬉しかったか、励みになったか、です。その先に数多の苦難が待っているかは、その時は知る由もなかったのですが、私はこの本に全身全霊を捧げる覚悟ができましたし、苦難を乗り越えるたびに、この本は念と怨と力と業を蓄えていきました。
担当編集の山本さんは、2008年に上梓した、
私の最初の著書「大好き、食虫植物」に対し、
ご自身のブログで長文かつ丁寧な感想を書いてくださった方で、
2008年当時、それを見つけた「大好き、食虫植物」の担当編集者さんが、山本さんのブログの文章をプリントして見せてくださったのです。
そんな出来事が、この本が生まれるきっかけになりました。
しかも、共通の知り合いに、スピーシーズ・ナーサリーの藤川さんがいたりと、並々ならぬご縁がありました。
そして、挑戦的で革新的な装幀をしてくださったのは、
アートディレクターの岡本洋平さん(岡本デザイン室)。
岡本さんは、この本でご一緒する前から存じ上げていました。
書店で一目惚れした本の装幀が岡本さんによるもので、
その本の編集者に手紙を書き、その編集さんから、岡本さんの装幀の素晴らしさを伺っていたのです。
幾重もの交錯する出会いによって、「官能植物」は生まれたわけですが、執筆するにあたっては、多くの資料を参考にし、妹そして、父にも手伝ってもらいました。
妹には資料集めを、父には英文の資料を翻訳してもらいました。
ところが、この本が完成する直前に、完成を見ずに父が亡くなってしまいました。
せめて、見本本だけでも見せたかったのも叶わず、
「(世にでるまで)あと少しだから、頑張って」と声をかけたのが最後、今生の別れとなりました。
あまりにも存在が大きかった父がいなくなってしまったことは、今でも、全く現実のことと思えません。
えっ、あの父親が本当に亡くなっているの……、嘘でしょう?と思います。
それでも、父の魂は、この本に刻まれ、この本がこの世にある限り、父の魂も共にあると信じています。
本書「官能植物」は、35の植物をピックアップし、
植物の官能性を、「形」「生態」「匂い」「利用法」の4つの方向から浮き彫りにした本です。
艶かしい植物写真とともにお届けする、
官能植物の世界を、ぜひご堪能ください。
5月16日発売
官能植物(木谷美咲/NHK出版)
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