「おみおくりの作法」 ★★★☆~死者に対する“礼儀”それが魂の救済に繋がる | そんなことより恋をしろ

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※※※ 注意 ※※※

 「シネマ報告書」には、映画の内容や核心・結末に触れる、いわゆる“ネタバレ”が多分に含まれております。
 これから観ようと思っている方は、本報告書の内容についてご理解のうえ十分注意してお読みください。

「『シネマ報告書2015』の掲載にあたって」



死者に対する“礼儀”それが魂の救済に繋がる

★★★☆

おみおくりの作法

(C)Exponential (Still Life) Limited 2012




(2013年/イギリス・イタリア/91分/Still Life)

【 製作・脚本・監督 】
ウベルト・パゾリーニ

【 出演 】
エディ・マーサン
ジョアンヌ・フロガット
カレン・ドルーリー
アンドリュー・バカン
キアラン・マッキンタイア
ニール・ディスーザ
ポール・アンダーソン
ティム・ポッター




【あらすじ】

 ロンドン南部ケニントン地区の公務員である44歳のジョン・メイは、孤独死した人の葬儀を執り行うことを業務としていた。
 几帳面で手を抜かない丁寧な仕事をする彼だったが、一人の死に対し時間をかけ過ぎていたため解雇を言い渡される。
 彼の最後の仕事となったのはビリー・ストークという年配のアルコール中毒患者の身辺調査。ビリーの愛娘と思われる人間を探しすため方々に足を延ばすうちに、ジョン・メイにも変化が訪れる―


【コメント】

 さて、6年ぶりのシルバーウィーク突入ということで、特段の予定はないものの社会人にとって公式の5連休とはまさに神の御恵み。
 独り身の僕としては、通常の休日どおり映画三昧で楽しむ予定ですので、前日の金曜日にさっそくTSUTAYAで映画を物色、借りてきたのが本作であります。
 本作は劇場公開時、少数館ながらかなり評判が良く観に行こうか迷っていた作品だったので、手に取ってみた次第です。


おみおくりの作法

(C)Exponential (Still Life) Limited 2012


死者に対する“礼儀”それが魂の救済に繋がる

 切ない映画ですね。全編に渡りまるで粛々と葬儀の準備を執り行っているかのようにおごそかな静寂に包まれた映画、切ないけど確実に気持ちが救われる作品でしたね。
 几帳面な主人公ジョン・メイは、孤独死してしまった人ひとりの死に対し、近親者や友人知人を洗い出して葬儀への参列を促しますが、ほとんどの人間は参列しません。時とともに感情が薄れ、その人間に関心が無くなってしまったからです。
 だけどジョン・メイは、どんな人間であれ死を迎えたら心を込めて現世から送り出してあげることが“礼儀”だと感じています。彼自身、宗教的な感覚はなくあくまで仕事と言っていますが、決して“割り切り”ではなく、去っていく魂への礼儀・作法であると信じて疑わないんですね。
 たったひとりでも礼を尽くすことで魂は救われる、礼を尽くすことは死後も救われる、作り手のメッセージはそういう気持ちが込められているんじゃないでしょうか。


クライマックスは少々唐突、だけど印象的

 映画は全編、淡々粛々を進んでいくんですが、クライマックス、ジョン・メイと死者の愛娘ケリーとのほのかな恋愛模様とジョン・メイ突然の交通事故死については、あのおごそかな流れからしたら少々唐突だったように思います。え、いきなりそうなっちゃうの!?と。
 だけども、ジョン・メイ最後の仕事に対する成果と、これまで死者に礼を尽くした成果が現れるラストシーンはとても印象的でしたね。
 ジョン・メイの墓に集まる死者の魂たち、彼の死は唐突で理不尽極まりない展開ですが、ラストシーンですべてが救われた気がします。


主演エディ・マーサンの味のある几帳面演技

 そんなジョン・メイを演じた主演エディ・マーサン。彼こそはこの役にピッタリであったと思います。
 机上にある物の配置の少しのズレも許さない神経質で几帳面な性格ながら、決してイヤミったらしい雰囲気はなく、むしろそれ自体に味がある。そんな雰囲気を醸し出すいい役者さんです。


求められるのは「効率」か「気持ち」か?

 映画を観て、ふと今自分がこなしている仕事と照らし合わせてみました。果たして仕事とは「効率」なのか「気持ち」なのか、と。
 丁寧な仕事は大事ですが、昨今の企業は時間や費用を削減するための効率的な仕事が求められています。
 効率的な仕事ももちろん大事です。しかしながら、これは“やっつけ仕事”と紙一重の側面も持っていて、人間同士が面と向き合って仕事をしている以上、情熱や礼は決して忘れてはならないと思うんです。
 「気持ち」は「効率」だけでは表せない、だけど「気持ち」を込めすぎると「効率」は悪くなる。仕事のバランスは非常に大事だと思わせる映画でもありますね。


自分の死は何人に“おみおくり”されるだろうか

 昨今の日本では晩婚化が進み、今後は生涯独身の割合も増えていくようです。僕もそれに入りそうですが。日本だけじゃなく先進国はのきなみその傾向にあるようです。そうなると、いわゆる“孤独死”もこれからどんどん増えていくことでしょう。
 そして、ふと自分が死んでしまったときに、一体自分は誰に“おみおくり”されるのだろうと感じずにはいられません。
 果たして自分は礼儀を尽くされる生き方をしているだろうか、人間関係を大事にしているだろうか。本作を観ると、現在の自分の生き方までも考えさせられます。
 どんな生き方をしていくのかはその人の自由ですが、死んでも恨まれるような生き方はしてはいけませんな。


おみおくりの作法
(C)Exponential (Still Life) Limited 2012



【2015年度 Myランキング】(9/19時点)

 本作は、本年度のベスト10中10位(暫定)にランクイン。
 シルバーウィーク突入!


(ベスト)… ★★★☆以上が基準

  1位:マッドマックス 怒りのデス・ロード ★★★★☆
  2位:チャッピー ★★★★
  3位:フォックスキャッチャー ★★★★
  4位:映画 ビリギャル ★★★★
  5位:野火 ★★★★
  6位:アゲイン 28年目の甲子園 ★★★★
  7位:セッション ★★★★
  8位:プリデスティネーション ★★★★
  9位:キングスマン ★★★☆
 10位:おみおくりの作法 ★★★☆
  次点:ナイトクローラー ★★★☆
     ムカデ人間3 ★★★☆ 
     テッド2 ★★★☆


(ワースト)… ★★☆以下が基準

  1位:極道大戦争 ★
  2位:ストレイヤーズ・クロニクル ★☆
  3位:進撃の巨人 ATTACK ON TITAN ★★


<その他ランク外一覧>
96時間 レクイエムシン・シティ 復讐の女神神様はバリにいるバンクーバーの朝日激戦 ハート・オブ・ファイトビッグ・アイズジョーカー・ゲームREC/レック4 ワールドエンドANNIE アニーミュータント・タートルズデッドハングマッハ!無限大アメリカン・スナイパーソロモンの偽証 前篇・事件AFFLICTED アフリクテッドシェフ 三ツ星フードトラック始めました余命90分の男ハネムーンイミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密エイプリルフールズジュピターソロモンの偽証 後篇・裁判バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)ワイルド・スピード SKY MISSION寄生獣 完結編ザ・トライブ龍三と七人の子分たちシンデレラマッド・ナースラン・オールナイトZアイランドイニシエーション・ラブメイズ・ランナー新宿スワン予告犯ピッチ・パーフェクトインド・オブ・ザ・デッドトゥモローランドラブ&ピースマエストロ!アナベル 死霊館の人形アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロンターミネーター:新起動<ジェニシス>バケモノの子リアル鬼ごっこスペシャルID 特殊身分HEROゴッド・ギャンブラー レジェンドジュラシック・ワールドミッション:インポッシブル ローグ・ネイション幕が上がる死霊高校ワイルドカードやるっきゃ騎士〈ナイト〉くちびるに歌を映画 みんな!エスパーだよ!さよなら歌舞伎町ピクセル






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