こんにちは、M&A会計士の澤村です。


今回は、コストアプローチ、バイサイド編です。


コストアプローチというと、「解散価値を示す」みたいなイメージがあるようですが、その言葉の意味合いからすると、本来は、


その評価対象と同じ状態を作り出すのに、いくらコストがかかるか?


という意味になります。


つまり、ここでいう「時価」の概念は、セルサイドで検討したような処分価格ではなく、再調達価格


ということになります。


通常の時価純資産での評価というと、この再調達価格がベースになっていることが多く、それで評価を済ませているのが通常ですが、


理想のバリュエーションという意味では、これでは不十分だと思います。


なぜなら、通常の時価純資産法えでは、あくまで、


現在の貸借対照表の状況を作り出すことはできても、その評価対象が収益を生み出す状況は作り出せないからです。


今更ながらですが、現在の経済環境において、事業を成功させるためには、単に設備を持っていればいいだけじゃなくて、様々なノウハウやネットワーク、ブランド等が必要となってきます。

しかし、これらのノウハウ等の価値は、通常、貸借対照表には計上されていませんが、これらの価値を獲得するのにも当然コストがかかります。


つまり、評価対象と同じ状態を生み出すのに必要なコストという観点からコストアプローチを考えるのならば、これらの無形資産を獲得するのに必要なコストも含めて考える必要があると思うわけです。


具体的な従業員の教育コストだとか、広告宣伝費、営業ネットワークの構築コスト等々の事業を軌道に乗せるまでに必要なコストということになります。


したがって、このコストアプローチというのは、自前でその事業を評価対象と同じレベルまで育ててるのには、いくらかかるかを検討したうえで、


M&Aで買うのと、自社で育成するのとどっちが得か?


を考えるための判断基準を与えるものとして、コストアプローチを利用すべきではないでしょうか?