エスター | 映画、その支配の虚しい栄光

映画、その支配の虚しい栄光

または、われわれはなぜ映画館にいるのか。

または、雨降りだからミステリーでも読もうかな、と。

または、人にはそれぞれ言い分があるのです…。

久々に命の洗濯。よくできたホラーでした。

悪い子供ネタってのは、子供の純真さを逆手にとっていたり、あるいは生まれつきのサイコパスであったり、あるいは虐待児童がどうだのって話になるところなのだが、この映画の悪い子供「エスター」は自分が生きるために悪いことをする。つまり彼女の精神は病んでいない(病んでるのだが)、彼女は生存本能のままに行動する動物としてある。
つまり彼女の中の悪は、悪としての動機付けを必要としていないわけで、これは面倒くさくない。

だから、余計な彼女の心理描写など必要ないし、映画は彼女の行動を捉えさえすればOKだと思うんだが、そう割りきれないのがこの映画の弱点で、いろいろアップで表情狙ったり姑息なこともする。でも、まぁ、ここまでやれたら充分かと、どうもありがとう。

そして後半、そんな生存本能のままに生きる動物が、突如レベルアップする。これには驚いた。それを知らせるのが電話であるとか、エスターが書いた絵の見せ方がどう考えても間違っている、カードの見せ方が早過ぎるだろう、とかいろいろ不満はあるにしても、このレベルアップには驚いた。
彼女はまるで得体の知れぬ怪物として顕われるのだ。