インモラル | 映画、その支配の虚しい栄光

映画、その支配の虚しい栄光

または、われわれはなぜ映画館にいるのか。

または、雨降りだからミステリーでも読もうかな、と。

または、人にはそれぞれ言い分があるのです…。

アメリカ北部の田舎町で女子高生の失踪事件が起こる。
「ツインピークス」みたいな町の描写がなかなかよいし、主人公である警部補を巡る人間関係もよくかけている。何より「失踪」というネタは死体が出てこないだけに、よりミステリアスで超現実的なのがいい。

つまり、ありきたりの失踪ネタに叙情的なハードボイルド風味をまぶし、そのまぶし方が結構な出来なのだ。しかも突然、裁判劇へと移行し、さらに捻った展開をみせてくれるのも嬉しい驚きだし、犯人の設定も考えられていて、意外性もある。

と絶賛モードなんだけど、くいくい一気読みした後で、虚しさが残る。
まずオリジナリティが皆無。いつかどこかで読んだネタをバランスよく配置し、そこそこの筆力があれば書けちゃう、というような。いかにもアメリカーンなベストセラーを狙いました、売れるミステリの書き方を踏襲しました、といったあたりが透けてみえるのだ。

作者はこれがデビュー作で、すでにシリーズ2作目が出版されているのだという。とりあえずは楽しめそうなので、それを読んでからだな。


ブライアン・フリーマン, 長野 きよみ
インモラル