こんな本よんだ。120
橋本紡『九つの、物語』(集英社文庫)
っああああああああ、もってかれた。魔力たっぷり。なぜこの人の作品を追いかけるようになったのか思い出した。
魂ストライクだから。
主人公ゆきなが本を読んでいると、思いがけず兄が帰宅。
「あのさ、ゆきな。勝手に俺の部屋に入るなよ」
確かにそこは兄の部屋だし、読んでる本も兄のものなのだけれど。でも、兄は、亡くなったはず。
かくして、幽霊かもしれない兄との奇妙な生活が始まります。
兄はもてる。料理が上手。ゆきなの彼氏とも意気投合してくれる。ほとんど理想的なまでにかっこいいお兄ちゃんと、ゆきなはけっこう心地よく過ごしますが、ある時はっと気づく……兄が、どんなふうに亡くなったか。それはどんな日だったのか。
兄はなぜ、戻ってきたのか。
クライマックスから結末まで、涙なしでは読めません。私は原則として「泣ける本!」という煽りに魅力を感じないので、こんなふうにしか紹介できないのも歯がゆいのですが、なんといったらいいのか、「生きること」の半端じゃないプレッシャー、「そんな、私にこれからどうやって生きろと」と打ちひしがれた時に一歩を踏み出させてくれるありがたさ。光のあたる温かさ。『流れ星が消えないうちに』(→感想 )が、いかにもという道具立てでありながら全くあざとくなく、「喪失と再生」を描いたように、本書も「受け入れて、かみしめ、踏み出す」という過程を丁寧に提示してくれます。
『流れ星が~』の系譜の魅力に加えておもしろかったのは、作中でゆきなが読む本。古典的名作がずらりと並びますが、中でも井伏鱒二の『山椒魚』の改変にことよせて、「読む」という行為がみごとに解明されています。なんだか考えさせられてしまいました。いま記事として少し書いてみて、わかりづらくなったので消しましたが。
ともあれ、『月光スイッチ』以降、失礼ながら追いかけるのやめようかと思っていた橋本さん。すみませんでした! この作品を書いて下さってありがとうございます!
サリンジャー(未読)の『ナイン・ストーリーズ』が気になってきた。








