映画関係の雑誌だったと思うが、一般からの投稿で黒澤明監督の『野良犬』を見て以来、トシちゃんといえば田原俊彦ではなく、三船敏郎のことになってしまった、という女性からの投稿があった。ちょうど陣内孝則が『疵』の主演をしたころで、その女性(たぶん若くて美しい女性だと思う)は、
「どうして陣内君は『野良犬』を選ばなかったんだろう」
 と、嘆いていた。最近、陣内君というと紀香さんのご主人だですが(笑)。
 陣内君が選ばなかった理由はわからないが、周囲が選ばなかった理由はよくわかる。黒澤明の『野良犬』を見て、あえてそれに挑もうというのは、相当勇気がいる。一度リメイクされているはずだが、散々こき下ろされていた記憶がある。『疵』の主人公のイメージと陣内君はかけ離れているが、まあ仕方がないかなという気がする。『疵』の強すぎたやくざではなく、『野良犬』の弱かったチンピラのほうが、ぼくも陣内君のイメージだと思う。あの当時、もし勇気のある監督がいて、あえて黒澤明に挑もうという意気のある人なら、陣内君主演で『野良犬』をやればそれなりによかったような気もする。


 しかし、今日の《トシちゃん》は田原俊彦でもまして三船敏郎さんでもない。
 ぼくにとってのトシちゃんは、矢作俊彦、この人です。
 このブログを読んでくれている人の中に、矢作俊彦の名前を知っている人がどれくらいいるのか知らないが、この人は作家です。作品をざっと上げてみると、


『リンゴォ・キッドの休日』
『マイク・ハマーへ伝言』
『神様のピンチヒッター』

『死ぬには手頃な日』
『ヨーコに好きだと言ってくれ』
『真夜中にもう一歩』
『コルテスの収穫(未完)』
『スズキさんの休日と遍歴』
『複雑な彼女と単純な場所』
『ドアを開いて彼女の中へ』
『ららら科學の子(学はこの字なんですよ)』
『ロング・グッドバイ』
『あ・じゃ・ぱん』
『舵をとり風上に向く者』

『新ニッポン百景』


 ほかにもまだあるが、このあたりでやめる。後はネットで調べてみてください(笑)。知っている人には退屈なだけだと思うので。
 漫画の原作もある。有名なところでは、


『ハード・オン』
 日活映画『無頼』の主人公五郎さんが、海を渡り、匕首で国際陰謀と渡り合うような話です。いいです、これ。
『気分はもう戦争』
 矢作俊彦の自筆原稿が見られます。
『鉄人』


 でも、あと少し(笑)。司城四郎氏との共著もある。


『暗闇にノーサイド』
『海から来たサムライ』
 ラストのサムライ対ガンマンの一騎打ちは最高です。
『ブロードウェイの戦車』
 防弾ガラスを挟んでの銃撃戦は最高。
「撃ってみろ。俺が失うのは脚だ。お前が失うのは頭だ」
 どうですブッラクエースのジョーはかっこいいでしょう(*^^)v。


 寡作といわれながらけっこう出している。
 そうだ変わったところではこういうのもある。
Jane doe (クリックしてみてね)』
 これはけっこう面白い。しかし、これも未完で、第二話が2002年1月25日。しかし、まだネット上にあるということは、第三話があるということなのだろう。期待して待ちたい。


 ぼくはこの人がとにかく好きだ。田舎者のぼくにはいささか耳の痛い場合もあるが、好きというのは大したものだ。これが別の誰かだったら、追っかけていってぶん殴りたくなるところだが、この人の場合は、抱きしめてキスのひとつもしたくなる。
 しかし、いったい矢作俊彦の何がこんなにぼくをひきつけるのかいまひとつよくわからない。
 ぼくにとって矢作俊彦は決して読みやすい作家ではない。二村永爾が出てくる作品や他のいくつかの作品は、わりとすんなりと読めるのだが、それはわずかだ。
 とにかく読むのにやたらと時間のかかる作品が多いのだ。『マイク・ハマーへ伝言』は読み終えるのに半年かかった。『スズキさんの休息と遍歴』には一年もかけた。『ららら科學の子』はまだ読んでいる。買ってから半年が過ぎている。
 これはいったいどういうことなのか……(その2)でじっくりと考えてみよう。



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