宮崎県の口蹄疫(こうていえき)問題で、国が県に求めた種牛49頭の殺処分。県には6000人を超す「助命」署名が提出され、東国原英夫知事も「日本の畜産の大切な財産」と特例による救済を訴える。一方、とどまることを知らない感染の広がりに、宮崎の畜産関係者には「(殺処分という)まん延防止が第一だ」との声も。49頭の処分について、関係者の間でも意見が分かれている。【古田健治、石田宗久、川上珠実】

 49頭の種牛は16日、同県高鍋町の家畜改良事業団内の別の牛舎で、種牛の能力評価のため肥育されている牛に感染疑いが確認されたため、家畜伝染病予防法に基づき殺処分が決まった。県はまず、肥育牛259頭を処分。約22万頭の子牛を生んだスーパー種牛「安平」を含む49頭も処分されるはずだった。

 だが、県は22日未明、49頭の「生存」を明らかにした。東国原知事は同日夕の会見で「県の施設で殺処分を迅速に進めたところ、一般農家で処分の順番を待つ農家から『こちらも早く処分を』と苦情が出た。一般農家での作業に県職員を割いたため、手つかずだった」と弁明した。

 県が49頭の殺処分に踏み切れないのには、別の事情もある。

 県内で生産される冷凍精液の9割を占め、13日に国の特例で同事業団から約24キロ離れた同県西都市に避難させたエース級種牛6頭のうち1頭に22日未明、感染疑いが発覚。「種牛の全滅」という最悪のシナリオが現実味を帯びてきたのだ。県幹部は「本当はそっとしておきたかった。滞留した殺処分が解消した時点で、国に49頭の救済を申し入れるつもりだったのだが……」と未練をにじませる。

 23日には49頭の救済を求める畜産業者ら約6200人の署名が県に提出された。24日に県庁であった口蹄疫対策の会議後、知事は記者団に「子牛は三十数都道府県に出荷されている。大切な財産を守ってほしいというのは多くの県民、畜産業界の思い」と強調した。

 一方、同じ会議に出席したJA宮崎中央会の羽田正治会長は「(延命という)特例を要求するのは問題だ」と県の姿勢を疑問視。JA関係者は「49頭の価値は十分分かるが、今燃えさかっている口蹄疫をなめたらいかん。接種したくないワクチンを打っている農家の方もいる」と、封じ込めが優先との考えだ。

 特例で避難した種牛「美穂国」と、殺処分対象の種牛「糸茂勝」の両方の育ての親の宮崎市高岡町の穂並典行さん(73)は「何とか2頭とも生き残ってほしい」と声を詰まらせた。

 ◇エース級種牛5頭は陰性

 また、県は西都市に避難中のエース級種牛5頭の検査の結果、現時点ではすべて陰性であることを明らかにした。

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